国際捕鯨取締条約
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2018年9月10日から14日の国際捕鯨委員会(IWC)第67回総会において、日本が鯨類の保護・持続的利用の両立と立場の異なる加盟国の共存を図るとして提案したIWC改革案について、持続的利用支持国が「これがIWC機能回復のための適切な対応である」などと支持したが、反捕鯨国は「商業捕鯨につながるいかなる提案も認めない」「IWCは保護のみを目的に「進化」しており、モラトリアムの解除は一切認められない」などとして、強硬に反対し、賛成27・反対41・棄権2で否決された[30]。これを受けて「政府・自民党内ではIWC脱退論まで浮上」という報道もされたが[31]、その後の状況について、日本国政府の公式発表はなかった。

2018年(平成30年)12月20日になって報道機関は、政府関係者が明らかにしたという形で一斉に脱退方針の決定を報道した[32][33][34]

日本国政府は、正式に12月25日の閣議で、国際捕鯨取締条約からの脱退を決定し、26日に正式に脱退通知を行い[6][35]菅義偉内閣官房長官談話として公式に発表した[36]。これにより、2019年令和元年)6月30日に国際捕鯨委員会を脱退し、7月1日から商業捕鯨を再開させた[37]

脱退後も日本は国際的な海洋生物資源の管理に協力していくという考えに変わりはない、としてIWCにオブザーバーとして参加し[38]、IWCと共同で「北太平洋鯨類目視調査」を引き続き実施している[39][40][41]

IWCの財政は多額の資金を拠出していた日本の脱退により急速に悪化した[42]2022年(令和4年)にスロベニアで開催された総会で財政問題について、以後2年間の収支を均衡させる予算案が採択された[43]
日本政府代表の構成・政策決定等
主管省庁

主管は水産庁であり、資源管理部国際課捕鯨班を中心として水産庁内での事実上の政策決定が行われている。

IWCは外交問題に関係することから、外務省漁業室も政策決定に参与しているが、その役割は副次的なものである。国としての一貫した方針を表明しなければならない必要があることから表面化することはないものの、外務省という立場上対外的な関係を重視することもあり、政策方針については水産庁側とは相当の温度差があり、こうしたことはまれにオフレコで表明されることがある[44]。なお2008年11月、外務省参与で元副報道官の谷口智彦は、豪州紙に「捕鯨業を守ることは日本の国益にはならない」と公言し、内外の波紋を呼んだ[45]
日本政府首席代表および代理

1987年より島一雄が10年以上にわたり首席代表 (Commissioner) を務めた後、2000年からは森本稔が同代表となっていたが、2008年9月12日付で前水産庁次長の中前明水産総合研究センター(現・国立研究開発法人水産研究・教育機構)理事長に交代した ⇒[18]。森本代表の時期は、むしろ1995年から2004年まで代表代理 (Alternate Commissioner) を務めた小松正之が会議時の発言やマス・メディアへの対応の前面に立ち、日本側代表団を総括していた。2005年からは森下丈二漁業交渉官 ⇒[19][20]がその任にあたっている。なお小松は2005年に水産総合研究センターへ出向した後、2007年12月に水産庁を退職した。小松は日本の調査捕鯨に対して最も批判的な論者の一人として知られており、国際司法裁判所判決を受けて日本が再提出した南極海新調査計画案について科学性が欠如しているとして提案の出し直しを主張するなどしている[46]
捕鯨管理枠組
商業捕鯨捕獲枠の算定
シロナガスクジラ単位 (BWU)
IWC設立当時における最大の捕鯨漁場は
南極海であり、IWCはこの海域での総捕獲枠について、1971/72年漁期まで「シロナガスクジラ単位(Blue Whale Unit: BWU)」という基準で規制を行っていた。これは、シロナガスクジラ1頭を1BWUとし、1頭あたりの鯨油生産量を基準にナガスクジラは2頭、ザトウクジラは2.5頭、イワシクジラは6頭を、それぞれ1BWUと換算するというもので、もともとはIWC以前の1932年に鯨油の生産調整の目的で用いられ始めた。しかし当初設定された捕獲枠16,000BWUは高きに失し、また鯨種別の規制もなされない極めて大雑把な方式であったことから、シロナガスクジラやザトウクジラの激減を防ぐに無力であった。
新管理方式 (NMP)
BWU規制の失敗を受け、1974年に採択されたのが「新管理方式 (New Management Procedure: NMP)」という捕獲規制方式である。これは、水産資源学における最大持続生産量 (Maximum Sustainable Yield: MSY) 理論を取り入れた方式で、資源量増加が最大となる資源水準 (MSY Level: MSYL) を資源管理の指標とするものである。MSYLについて、NMPの場合では初期資源量の60%と設定された ⇒[21]。NMPでは資源を (1) 資源がまだ初期の状態にあってMSYの90%まで捕獲が可能とされる初期管理資源(MSYLを60%と設定したNMPの場合、初期資源量の72%以上)、 (2) 資源がMSYレベル付近(同じくMSYLを60%とした場合、初期資源量の54-72%)にあり、0からMSYの90%まで資源量に応じて捕獲枠が設定される維持管理資源、 (3) このレベルを割り込んでいる保護資源(同じくMSYLを60%とした場合、初期資源量の54%以下)に3分類し、保護資源については一切の捕獲を認めないとされる ⇒[22]。この分類に基き、鯨種毎・海域毎に捕獲枠が設定され、ナガスクジラやイワシクジラなどが相次いで捕獲禁止措置が取られるなど一定の成果を収めた。しかし、南極海での本格的な商業的捕獲が70年代まで行われなかったミンククジラなどについては、資源量算定の基礎とする科学的データの不足が指摘され、捕獲枠の算定が不可能な事態に立ち至った。反捕鯨諸国はこうした科学的不確実性等を理由とし、商業捕鯨モラトリアムを提案[47]、多数決により可決した。


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