国際単位系
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これはメートル法がフランスの発案であったという歴史的経緯があること、及びメートル条約国際度量衡委員会 (CIPM)・国際度量衡局 (BIPM) の公用語がフランス語であるという事情による[3]。「SI」 は言語の違い(英語、日本語、中国語、タイ語など)に関係なく共通して用いられる略称である。

SI は国際単位系の略称であるため「SI単位系」というのは重複表現であるが、単に「SI」では分かりづらい場合に用いられる[4]。「SI単位」(: unité(s) du SI、: SI unit(s))は「国際単位系の単位」という意味で正しい用語である。
国際単位系の特徴

国際単位系の単位システムとしての特徴は次の通りである[5]

1量1単位

現示の一本化

基本単位組立単位の系統的分類

名称を定義する組立単位の一貫性

10進法と接頭語

これらは簡便性と合理性を保つ工夫である。例えば、1881年の第1回国際電気会議[注 1]の時点で、少なくとも12の起電力の単位、10の電流の単位、15の抵抗の単位が存在していた。多様な単位が併存すると相互の換算に煩わされるが、「一貫性」のある単位だけなら換算係数の煩雑さは避けられる[5]
第9版 (2019) の意義詳細は「SI基本単位の再定義 (2019年)」を参照

国際単位系 (SI) は2019年の第9版に至って初めて、全ての定義が人工物を使った標準、物質の特性、測定方法のいずれにも関連づけられない形で確立された。こうした改定によって、あらゆる単位の実現の精度が、定義自体によって制約されることなく、自然界の量子構造と人類の技術力のみによって制約されるようになった。定義定数をある単位に結びつける有効な物理式であればいかなるものでも、その単位の実現に使うことができ、これによって、今後の技術の進展に伴って更に精度を高めた革新と実現の機会があらゆるところで拓かれていく。このように、2019年の定義改定は、大きな意義を持つ歴史的一歩を前に踏み出す節目となるものである[6]
経緯

以下に、SIの構造上の重要な決定を列挙する[7]

1948年 第9回CGPM:国際単位系の設立の決定。この時点では「国際実用計量単位系(practical system of units of measurement for international use)」と称していた。固有の名称を持つ一貫性のある組立単位の一覧を示した。

1954年 第10回CGPM:最初の6つの基本単位の決定。名称「'Systeme international d'unites」の決定。

1960年 第11回CGPM:略称「SI」の決定。SI接頭語組立単位補助単位などの包括的な規定が確立[8]

1971年 第14回CGPM:基本単位モルの追加。

1995年 第20回CGPM:補助単位ラジアンステラジアン)の階級の廃止。

2018年 第26回CGPM:SI基本単位の基礎物理定数による定義が完成。これに伴いSIの定義の最も単純かつ根本的な改定[9]

公式国際文書詳細は「国際単位系国際文書」を参照

2019年5月20日[注 2]以降の国際単位系についての最新の公式文書は、BIPMによるフランス語と英語による「国際単位系第9版 (2019)Ver.2.01」2022年12月 [10]である。この文書の日本語訳は以下である。

『国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版』(pdf)産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2020年4月。https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/si-brochure/pdf/SI_9th_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E7%89%88_r.pdf。  【正誤表】 2022年7月15日 更新『国際単位系(SI)第9版(2019)正誤表』(pdf)産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2022年7月15日。https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/si-brochure/pdf/20220714_seigohyo.pdf。 

この文書は、BIPMの英語版(ただし、以前のVer1.08版、2019年5月)を日本語に翻訳したものである。したがって、2022年11月に追加された新しいSI接頭語クエタ(Q)、ロナ(R)、ロント(r)、クエクト(q)およびこれらに関するCGPMの決議文などは含まれていない。

国際単位系の公式文書はフランス語によるものであり、正式な本文の確認が必要な場合、あるいは、文章の解釈に疑義がある場合は、フランス語版を参照する必要がある[11]
広報用パンフレット

国際単位系国際文書を日本語に翻訳した産業技術総合研究所、計量標準総合センターは、国際単位系 (SI) 第9版 (2019) の概要(新しいSI接頭語を含んでいる。)を下記のパンフレットにまとめている。このパンフレットは、非営利目的の複製が自由にできる。すなわち営利目的の使用でなければ、許諾の必要なく、複写・複製することができる[12]

国際単位系 (SI) は世界共通のルールです SIパンフレット、産業技術総合研究所 計量標準総合センター 計量標準普及センター 計量標準調査室、2020年4月、2023年3月改訂

公式文書の経緯

1970年の第1版以降の経緯は次の通りであり、BIPMのHPで閲覧できる[13]。詳細は「国際単位系国際文書#各版の経緯」を参照

1970年(第1版)仏語版

1973年(第2版)仏語版

1977年(第3版)仏語版

1981年(第4版)仏語版

1985年(第5版)仏語版、英語版

1991年(第6版)仏語版、英語版

1998年(第7版)仏語版、英語版

2006年(第8版)仏語版、英語版

2019年(第9版)(2022年12月改訂のVer.2.01のみ)仏語版、英語版

国際単位系の定義

2019年に、国際単位系の定義は根本的に改められた。すなわち2006年公式文書までは、7つの基本単位をベースにして組立単位接頭語からなる単位の組み合わせ(単位系)を国際単位系と定義していた。しかし2019年の第9版の公式文書は以下の定義のように、「7つの定義定数の数値を固定する」ことによって逆にSIを定義することとしたのである[14]。国際単位系(SI)は

基底状態にある摂動を受けないセシウム133原子の超微細遷移振動数 ΔνCsが 9192631770 Hz

真空における光速度 c が 299792458 m/s

プランク定数 h が 6.62607015×10?34 J s

電気素量 e が 1.602176634×10?19 C

ボルツマン定数 k が 1.380649×10?23 J/K

アボガドロ定数 NA が 6.02214076×1023 mol−1

周波数 540×1012 Hz の単色光視感効果度 Kcd が 683 lm/W
である単位系である[15]

ここで、ヘルツ記号: Hz)、ジュール(記号: J)、クーロン(記号: C)、ルーメン(記号: lm)、ワット(記号: W)は、それぞれ(記号: s)、メートル(記号: m)、キログラム(記号: kg)、アンペア(記号: A)、ケルビン(記号: K)、モル(記号: mol)、カンデラ(記号: cd)と、 Hz = s−1、J = kg m2 s−2、C = A s、lm = cd m2 m−2 = cd sr、W = kg m2 s−3 で関係付けられている。7つの定義定数の数値には不確かさはない。

この定義ではそれぞれの定数の値を対応するSI単位で表現したときの厳密な数値を定めている。定数の値は数値と単位の積であるため、厳密な数値を固定することによって単位を定めることができる。7つの定数はすべてのSI単位がこれらの積と比によって表すことができるように選ばれている。


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