国際人権法
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国際人権法(こくさいじんけんほう、英語: international human rights law、フランス語: Droit international des droits de l'Homme)とは、国際法の中の人権に関する分野[1]。この法によって、いかなるでも保護されるべき人権の種類・内容および、国際機関による人権保障実施が定められている[2]。国際人権法に含まれているのは、国際人権章典(世界人権宣言国際人権規約)と、人権条約(主に子どもの権利条約女性差別撤廃条約人種差別撤廃条約拷問等禁止条約)と、それらを実施するための制度である[1]
概要

国際法によって個人の人権を保障する、国際法の一分野をいい、第二次世界大戦後に急速に発展してきた分野である。第二次世界大戦前は、人権は国内問題として、国内問題不干渉義務(国際連盟規約15条8項)の下、各国の専属的事項とされていた。しかし、第二次世界大戦の反省から、国際連合憲章において人権保護が規定され、戦後急速に国際平面における人権保護が発展しだした。その端緒は、1948年の国連総会において採択された世界人権宣言である。諸国の憲法で同宣言が言及されていることを根拠に、今日ではこれが慣習国際法の一部となっているとする見解もある[3]。諸国の国内裁判所の判決では、日本においては1989年5月2日最高裁判決をはじめ同宣言の法的拘束力が否認されている[4]。1980年6月30日米控訴裁第二巡回区判決(「フィラルティーガ事件」)では、世界人権宣言その他国際合意を基に証拠づけられ定義されている拷問から逃れる権利が慣習国際法になっていると判示された(630 F.2d 876, 882.(2d Cir.1980))[5]

国際人権法は、二つに分類することができる。普遍的保障と地域的保障である[6]
普遍的保障

第一に、普遍的保障であるが、これは、国連システムと条約制度に分けられ[7]、多くの場合が一般的に強制力をもった履行手続きを備えていない[8]

国連システムでは、国際連合経済社会理事会が創設した国連人権委員会の制度があった。2006年に、同委員会は国連人権理事会に発展した(国連総会決議60/251)。しかし、基本的な性格や目的は、維持されているといえる。すなわち、国連人権理事会は、テーマ別人権問題について対話の場を提供したり(同決議、5項(a))、各国による人権に関する義務の履行の普遍的定期審査(英語版)を行ったり(同項(e))、法的拘束力のない「勧告」(recommendations)を行ったり(同項(i))するにとどまる。国連人権委員会の最大の問題点がその政治性であったが、人権理事会となった現状でも、独立した判断機関とはいえず、政治的組織の内部に属するものにとどまっているという他はない[9]。1993年のウィーン宣言及び行動計画に起源をもち、国連総会決議48/141(1994年1月7日)によって設立された、国際人権条約の採択、普及の促進を目的とする国際連合人権高等弁務官事務所も同様に、諸国家に忠告や技術的、財政的援助を与え、国連の人権分野での調整を行う役割を有するにとどまる[10]

発効に伴い批准した国に法的拘束力を有する条約制度として、世界人権宣言を条約化したといわれる経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)と市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)があるが、特に発達している自由権規約の制度においても、自由権規約第1選択議定書の下の個人通報制度では、規約人権委員会は、法的強制力のない「見解」(views)を述べる権限を有するにとどまる(5条)。他にも、国連の下で作成された条約として、1965年の人種差別撤廃条約、1979年の女性差別撤廃条約、1989年の児童の権利に関する条約(こどもの権利条約)、1990年の全ての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約、2006年の障碍のある人の権利に関する条約などがある。これらの条約も個人通報制度について定めた選択議定書や規定を持ち、それを批准ないしは受諾する締約国に勧告を行う委員会を有するが、自由権規約と同様、強制力のある決定を下す権限は付与されていない[11]

これらのほか、1948年の集団殺害罪の防止および処罰に関する条約、1951年の難民の地位に関する条約と1984年の拷問等禁止条約、そして2006年の強制失踪防止条約もそれぞれ国際連合総会決議の形で採択された。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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