国語国字問題
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そのため、新聞やテレビなどのニュース報道では「けん銃」「だ捕」「ら致」「破たん」「補てん」などと交ぜ書きの表記が多用されていた[19]

しかし、「交ぜ書き」は日本語として成立しにくい事や不評がある事により、日本新聞協会加盟社の用語担当者からなる集まりで、新聞紙上における用字用語について懇談する「新聞用語懇談会」では2000年(平成12年)12月の『表外漢字字体表』の答申と前後して、交ぜ書きの減少を検討した。

その後刊行された『記者ハンドブック 新聞用字用語集』では使用する漢字が増やされる傾向にある。それまでは交ぜ書きにされていた「危惧(きぐ)」、「蜂起」、「冥福」などが漢字で表記されるようになった。また、ルビを復活させた新聞もある。この傾向は新聞以外のマスメディアでも同様であり、公共放送NHKでも『NHK新用字用語辞典』において、交ぜ書きを減らしている。

2020年代に入って新型コロナウイルスの「まん延(蔓延)」や、電力需給ひっ迫警報の「ひっ迫(逼迫)」といった用語が頻出するようになったため、交ぜ書きを減少すべきか再び議論になっている[20]

児童文学・小学校教科書の世界では強い漢字制限がかけられており、習っていない漢字は見せない、書かないという教育が続いているが、むしろルビを使うべきでありマンガやゲームのほうがよほど漢字の勉強になるという批判もある[21]。「新聞常用漢字表」も参照
JIS X 0213:2004

表外漢字字体表は、一部においてJIS漢字の例示字形とはなはだしい異同があったが、2004年(平成16年)にJIS X 0213が改正され、例示字形を表外漢字字体表に整合させた。これによりコンピュータについても、印刷標準字体に沿った字形を標準とする環境に移行しつつある。

2007年(平成19年)には各種オペレーティングシステムで使われるフォントが相次いでJIS X 0213:2004例示字形に対応した。マイクロソフトが発売したWindows Vistaでは、標準搭載日本語フォント(メイリオMS ゴシックMS 明朝)の字形をJIS X 0213:2004の例示字形とした。Vistaと後継のWindows 7には、旧来の字形を採用した「JIS90 互換 MS ゴシック・明朝フォントパッケージ」が用意されている。Appleは、Mac OS X v10.5発売に際して、JIS X 0213:2004の例示字形を標準とした日本語フォントヒラギノ ProN/StdNを新たに追加した。引き続き従来のヒラギノ Pro/Stdも附属する。情報処理推進機構は、無償公開しているIPAフォントの字形をVer.2からJIS X 0213:2004準拠とした。IPAフォントはLinuxなどオープンソースソフトウェアを含めプラットフォームを問わず誰でも無償で利用できる公共フォントと位置付けられている。
2004年の人名漢字追加

上記、JIS X 0213:2004の改正と前後して、法務省が2004年(平成16年)に行った人名用漢字の変更(追加等)も、おおむね印刷標準字体によって行われた(「芦」「阪」「堺」など例外もある)。
2010年の常用漢字改定

2010年(平成22年)に常用漢字が改定された。特徴としては、漢字の廃止や節減という動きと決別するように多くの漢字が追加されたことが挙げられる。一般名詞や代名詞などで幅広く使われていた漢字のみならず、前述の交ぜ書きを防ぐための漢字も追加された。また実生活上では初等教育から読み書きする必要があるにもかかわらず、これまで含まれていなかった都道府県名などに使われる漢字が追加された。

なお、新潟県の「潟」は1981年にすでに常用漢字に追加されている[22]

字形については、前述の表外漢字字体表の字形を参照し、JIS X 0213:2004の例示字形に合わせた文字を追加した。
日本語学との関係

在来の国語学においては、明治以来の国語国字問題の種々の論議を学問的領域から尽く除外するものもあれば、領域の一種として音声論や文法論と同列に位置づけて取り扱ったり、「知識の応用部面」として国語学の延長のごとく取り扱ったりなど、利用の仕方は様々であった[1]。そのような中で「国語国字問題を対象とすべき」と明確に位置づけたのが時枝誠記である[注 4]。時枝の立論は「言語は個人の実践的表現行為ないし理解行為そのものである」とする言語過程説の立場からなされているが、従来の国語学における研究方法に対して反省を促しているともいえるので[24]、どのような立場から論じるにせよ、日本語学者は国語国字問題について無関心でいるわけにはいかない[23]
関連団体

公益財団法人日本のローマ字社

公益財団法人日本ローマ字会(ウェイバックマシン、2022年1月16日) - ⇒http://www.roomazi.org/[リンク切れ]

財団法人カナモジカイ( ⇒公式サイト

脚注[脚注の使い方]
注釈^ この建白書の存在をめぐっては、否定的にみる見解や指摘が示され、その再検討を試みたものに阿久澤佳之 (2009)がある。
^ ただし正確には「ローマ字推進と簡易英語を通じた日本語への近代的語彙の導入を指したもの」であったことが、後の研究により明らかになった[5]
^ 例えば字音仮名遣では「かうちやう」となる「校長」は、これに従うと「こーちょー」と表記する。
^ 例えば時枝誠記 (1949)などにおいて、「言語の実践に関する議論であるならば、それは他の言語現象と共に、それ自体が国語学の対象とならなければならない」「国語における音声や文字や文法が国語学の対象となるのと同じように、国語の主体的意識の問題として考察の対象となる」と述べている[23]

出典^ a b c 加藤彰彦 (1961), p. 561.
^ 山東功 (2017), p. 61.
^国語国字問題講座 カナモジカイ
^ 加藤彰彦 (1961), pp. 586.
^ 臼井裕之 (2007), p. 60.
^ 臼井裕之 (2007), pp. 61?69.
^ 加藤彰彦 (1961), pp. 563?567.
^ 山東功 (2017), pp. 62?64.
^ a b 加藤彰彦 (1961), p. 569.
^ 加藤彰彦 (1961), p. 570.
^ “ ⇒人名用漢字の新字旧字:「鉄」と「鐵」”. 三省堂国語辞典. 2019年5月8日閲覧。


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