地球大気の乱流などもっと速い変動に起因する星像の揺れを実時間で直す装置(補償光学: Adaptive Optics)は2000年12月よりカセグレン焦点に設置されている。これにより近赤外線では回折限界 (Diffraction limit) に迫る星像が得られている。さらに赤外ナスミス焦点に人工星(レーザーガイド星)を使った更に高精度な補償光学系を開発し、2006年10月にファーストライト(初観測)に成功した。
これらの技術によって天体の解像度の高い画像を得るとともに、遠方にある微かな光を放つ銀河や星雲などの観測性能を大幅に向上させる。 すばる望遠鏡は日本の国立天文台の施設であるが、国際共同利用観測所であるため世界中の天文学者が観測提案を提出でき、審査に合格した観測提案だけが実行に移される。観測提案は年に2度募集される。 2004年、国立天文台・東京大学・宇宙航空研究開発機構・英国ダーラム大学・英国レスター大学の研究チームは、「すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ」 (SXDS) により取得された深撮像サーベイ画像と検出された天体カタログを全世界へ公開した[11]。
すばる望遠鏡による成果
単独観測
宇宙の大規模構造の元となる、フィラメント状星雲の発見。また、銀河系の10倍以上の質量を持つ、銀河団の元となる星雲を発見。
赤外線によって、宇宙の最遠の超新星爆発を捉える。
太陽系外にある微惑星のリングを捉える。
2005年2月 くじら座の方向に観測史上最遠の銀河団を捉える。距離128億光年
2006年5月 ガンマ線バーストの解析により、宇宙の再電離はビッグバン後9億年まで遡ることを確認。
2006年8月 かに座の方向に日本人の発見したものとしては最遠となる127億光年離れたクエーサーを発見。
2006年9月かみのけ座の方向に、天体観測史上最遠となる128億8000万光年離れた銀河を発見する。
2014年11月 すばる望遠鏡にとって最も遠い宇宙をこれまでにない感度で探査し、ビッグバンからわずか7億年後 (131億光年先) の宇宙にある銀河を7個発見[10]。
国際連携観測
NASAの探査機ディープ・インパクトと連携し、彗星への衝突時の光を捉える。
なお、この観測はマウナケア山頂の望遠鏡群全体でも行った。
ヨーロッパ南天天文台でも観測を行う。
NASA及びESAの探査機カッシーニと連携し、土星の衛星タイタンのジェット流の観測を行う。
NASAと協力し、冥王星-エッジワース・カイパーベルト天体探査機ニュー・ホライズンズの探査目標天体の捜索を行う。
欧州宇宙機関 (ESA) と共同で、すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ (SXDS) と呼ばれる深宇宙撮像サーベイを行う。
ハッブル宇宙望遠鏡、スピッツァー宇宙望遠鏡、超大型干渉電波望遠鏡群 (VLA)、VLT、XMM-Newton、GALEX、Chandra、UKIRT、NOAO、CFHT等と共同で、ハッブル宇宙望遠鏡基幹プログラムであるCOSMOSプロジェクトに参加。X線、紫外線、赤外線、電波の全波長帯で宇宙の大規模構造を観測する。
撮影画像と天体カタログの公開
出来事
望遠鏡を収めるドーム施設の建設中に火災が発生した。この事故によって4名の作業員が死亡した。
2011年7月、すばる望遠鏡の主焦点部から冷却液が漏れ出す事故が起きた。液は主鏡を含めた広範囲に飛び散り、機材も浸水したため、観測利用が行えない状態となった[12]。その後、原因究明と復旧作業が進められ、2011年9月までにナスミス焦点、カセグレン焦点、および赤外用主焦点での観測を再開した。損傷の大きかった可視光用主焦点の復旧には時間がかかったが、2012年7月15日に共同利用観測を再開することができた[13]。
脚注^ Activities of the Observatory
^ 観測機器を取り付ける焦点は4箇所ある。なお、主焦点ならびにカセグレン焦点は可視光・近赤外の焦点系であり、ナスミス焦点は片方が可視光焦点であり、もう片方は近赤外焦点である。
^ 2013年7月、より広い視野と高い解像度を得ることを目的とした、Hyper Suprime-Camに置き換えられた。これは、近赤外線領域から可視光をカバーするモザイク型CCDカメラ(計8億7000万画素)と光学補正レンズからなる。
^ “キヤノン,浜松ホトニクス,三菱電機ら,すばる望遠鏡の超広視野カメラを開発