国立大学の法人化に際して国からの支援が縮小されることや、運営に国の管理が行き届かなくなることが懸念された。
平成27年に国立大学協会がまとめた国立大学法人の直面する問題点としては、運営費交付金、附属病院、施設整備費補助金、寄付金税制、競争的資金、制度・規制の6項目が取り上げられている。
運営費交付金が法人化後11年間で12%減少した一方、消費税、電気料金、電子ジャーナル料などで諸経費が高騰し、常勤教職員の減少、教員の多忙化による論文数の停滞、学長裁量経費の確保も困難となる悪影響が顕著に出たこと、私立大学とは異なる税制上の扱いのため、寄付金額が伸び悩んでいること、競争的資金の使い勝手の向上が必要といったことが示された[39]。
佐和隆光は滋賀大学学長時に、科学・学術研究の国際競争力が低下したこと、運営費交付金が毎年1%減額されるために、教員人件費の徹底的な節約を実施したことにより、教育の質の低下が起きたこと、外部資金の獲得競争では東京大学の一人勝ちが続くなど、大学間格差が拡大したことを指摘している[40]。
学研の2013年の「国立大学法人化」特集記事は、入試ではこれまで国立大学協会の決定が尊重されていたが、法人化により各大学の裁量が増えた後は、京都大学の入試で後期日程が廃止されたことや、国立大学協会の通知にもかかわらずセンター試験の「地歴・公民」での4単位科目の選択指定が一部大学に留まったことなどを挙げ、受験生にとっては法人化が入試の複雑化・混乱を生じたというマイナス面を指摘している[41]。同記事は、少子化を背景に国立大学の統廃合が避けられないことと相俟って、将来的には法人化を通じて大学は数種の類型に機能分化(種別化)していくと予想する。
研究費調達は各大学の自助努力が求められるようになったため、寄付を募るなど運営が私立大学に近いものになってきている。
国立大学法人運営費交付金の推移(2004年度 - )
毎年政府から交付される運営費交付金は、毎年、前年度比1%削減という効率化係数が適用されて、漸減することとなっている(右のグラフも参照)。