国歌は、国内向けには愛国心の涵養および表現のため、また国外向けには国旗などと同様に、国家の象徴として他国との区別を行うために用いられる。
国旗掲揚式では、国旗の掲揚と降下時に国歌が演奏されることが多い。多くの国では学校で教育の一環として国歌の演奏・歌唱が行われるほか、毎日始業時などに国歌斉唱を行う国もある(タンザニアなど)。ほとんどの国営テレビ局やラジオ局は、放送開始前の早朝と放送終了後の夜間に国歌を流している。外交の場では、歓迎式典でホスト国とゲスト国双方の国歌が演奏されることが多い。
国歌斉唱や演奏の際には、国により、またシチュエーションにより、敬礼、起立、脱帽など、特定の礼儀作法が求められることがある。
スポーツイベントの試合前にも国歌演奏・歌唱が行われることがある。サッカーやラグビーなど、スポーツの主要な国際大会では試合を行う両国の国歌が演奏され、開催国の国歌が後に演奏される。オリンピックや世界選手権の表彰式でメダルが授与される際には、金メダルを獲得した選手の国歌が演奏される。アメリカのメジャーリーグベースボールや日本のプロ野球をはじめ、国内のチーム同士の対戦の際にも国歌の歌唱が行われる場合がある。
一方で、ある国の国歌が国外で演奏されるかどうかは、その国の置かれている政治的立場、および国際的承認の有無に左右される。例えば、中華民国(台湾)は1979年以降、国際オリンピック委員会から独立した国家として認められておらず、チャイニーズタイペイ(中華台北または中国台北)として競技に参加しなければならないため、国歌の代わりに「中華民国国旗歌」が使用される。なお台湾国内では国旗掲揚と国旗降納が行われる前に国歌が歌われ、掲揚および降納中は国旗歌が歌われる。2018年の平昌オリンピック、2021年に行われた東京オリンピックにおいては、ロシアはドーピング問題のために国単位での参加を認められず、個人資格等で出場した選手についても表彰式での国歌演奏が許可されなかった。このため平昌においてはオリンピック賛歌、東京ではピョートル・チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」の一部が国歌の代わりとして利用された[3]。大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国は、1991年に千葉県・幕張メッセで開催された第41回世界卓球選手権以降、たびたび統一チームを組んで国際大会に参加しているが、この場合には民族音楽である「アリラン」が国歌の代わりに用いられるのが慣例となっている[4][5]。 政体および政権の変更、または社会思想の変化にともない、国歌が改変、改訂、変更されることがある。 フランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」は1792年、ストラスブール市で工兵大尉ルージェ・ド・リールによって「ライン軍歌」として作詞作曲され、それをマルセイユからの義勇兵がパリで広めたものである。1795年に国歌として制定されたが、ナポレオン・ボナパルトの第一帝政のときに「門出の歌」に変更され、1814年の復古王政によって演奏中止となった。
国歌の改変・改訂