国家神道
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大日本帝国憲法第28条の条文では「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス」となっていたが[8]、この「臣民タルノ義務」の範囲は立法段階で議論の対象となっており、起草者である伊藤博文井上毅は神社への崇敬は臣民の義務に含まれないという見解を持っていた[注 1]。昭和に入ってから美濃部達吉[注 2]神社局 [注 3]には神社崇敬を憲法上の臣民の義務ととらえる姿勢があったが、内務省の公式見解として示されることはなかった。

なお、神社非宗教論が採られた結果、神社神道の神職らは布教や神葬祭その他の一切の宗教的活動が禁じられた[13]。神社局も、神職らの思想表明や神葬祭などの宗教活動に関しては厳しく規制し、他の宗教との宗論も抑制した[14]従軍聖職者制度も、もっぱら僧侶やキリスト教者のみに認められ、昭和14年まで神職には同制度が認められなかった[15]。また、仏教やキリスト教の教団からは、神社において宗教活動や祈祷が行われているとの非難が上がることもしばしばあり、1930年(昭和5年)には、浄土真宗10派が神社に対する宗教的拝礼、吉凶禍福の祈念などの禁止を要求して神社非宗教論の徹底を政府に要望した[16]

1899年の文部省訓令第12号「 一般ノ教育ヲシテ宗教外ニ特立セシムルノ件」によって官立・私立の全ての学校での宗教教育が禁止され、「宗教ではない」とされた国家神道は宗教を超越した教育の基礎とされた。1890年(10月30日。帝国憲法施行より前)には教育勅語が発布され、国民道徳の基本が示され、国家神道の事実上の教典となった[1]

第二次世界大戦後、GHQにより「神道指令」(後述)が出され、国家神道は解体へ向かったが[17]、国家と神道を巡る政教関係については論争が続いている。詳細は「日本国憲法第20条」、「信教の自由」、「政教分離原則」、「津地鎮祭訴訟」、および「靖国神社問題」を参照
主な政策及び制度
神社の法的性格

神社について、その法人格を具体的に規定した法令は存在しなかったが、行政上の運用や判例によれば、神社は「財産権の主体」であり、

公法人

財団法人

営造物法人

の性格を有するものとされた。各神社は国家が管理する台帳の一種である神社明細帳に登録された。
神道行政の管轄機関

近代における神道行政の管轄機関としては、まず1867年(慶応3年)に発せられた王政復古の大号令や、翌年の「祭政一致の布告」の理念に基づいて復興された神祇官が設置された[18]。しかし、神祇官の実務は思うようには行かず、1871年8月に神祇官は太政官下の一組織である「神祇省」へと格下げされ、さらに翌年には神仏合同の組織である教部省へと改組されるに至った[19]。この教部省も神仏双方の反発によりわずか3年で解散した[19]。その後は内務省の一部局で、しかも宗教行政一般を管轄するに過ぎない社寺局において神道行政は管轄されることとなった[20]。その後、1900年(明治33年)に社寺局から神社局が分離して、神道行政が他の宗教行政と区分されるようになった[20]。神社局は後に神祇院へ改組されるが、有効な政策がないまま敗戦により廃止された[21]
神社制度・神社政策

1871年(明治4年)に政府は神社を「国家の宗祀」と宣言し、古代の延喜式神名帳などをもとに近代社格制度を設けて、官幣社、国幣社、郷村社、府県社、無格社などに全国の神社を分類し[22]、「社寺領上知令」により、社領の多くが国有地に吸収された[23]。神社への公費支出制度に関しては、官国幣社は国庫よりその経費が支出されることとなっていたが、1877年に「官国幣社保存金制度」が導入され、向こう15年間一定額を支給し、それ以降は神社への財政支出を打ち切ることとされ、実質的に公的援助がなくなることとなった(これに関しては1906年(明治39年)に撤回され、再び公費が支出された)[20]。府県社以下の神社に対しては地方府より幣帛料の供進が可能とされたが、義務とはされなかった[24]。また、政府は1906年(明治39年)から1910年(明治43年)にかけて、地方負担の軽減や、神社を町村の精神的支柱に位置付けることを目的に、一村に一社を目安とした神社合祀を行い、全国の神社が4割ほど減少した[25]
神職政策・神職制度

「国家の宗祀」に相応しくないとされた世襲神職は全て廃止され、以後は国が選任する官吏(公務員)とされた[26]


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