国家の承認
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交戦団体承認「交戦団体」も参照

南北戦争等のように、大規模な反乱内乱が持続した場合や、別の都合により政府としての承認を行わない場合には、政府と承認しない勢力に対して、本来の正統な政府と同等の交戦当事者として資格が与えられる場合がある。戦闘中における戦争法規ハーグ陸戦条約ジュネーヴ条約など)の遵守や和平交渉を行うためである。交戦団体承認を行った国家もその内戦に関して国家間の戦争と同等の義務を負うことになる。

ただし、現在の戦争法規(慣習法ハーグ陸戦条約ジュネーヴ諸条約 (1949年)など)は適用領域を内戦にも拡大していることもあり、正統政府が、反乱団体に対して敢えて、広範な権利付与を伴う交戦団体承認を行うことはない。
特殊な形の承認

何らかの政治的事情や、法的な問題により、政府や国家としての承認は行わないが、その政府の資格を一定の形で承認することがある。第二次世界大戦では、イギリス政府はヴィシー政権を否認したものの、自由フランスの主席であるシャルル・ド・ゴールを「連合諸国の理念の防衛のために彼に合流する全ての自由なフランス人(フランス語版)の主席」として承認し[2]、フランス政府としての承認は行わなかった。その後、自由フランスは正式な政府としての承認をうけることはなく、連合国は自由フランスを母体の一つとして生まれたフランス共和国臨時政府を1944年10月23日に正式なフランス政府として承認している[3]。また日本政府はスバス・チャンドラ・ボースによる自由インド仮政府樹立を支援したが、正式な政府としての承認は戦後になるまで行わないという方針をとっており、「政府を名乗る団体」としての承認しか行わなかった[4]

一方承認を行わない場合でも、デ・ファクト(事実上の)政府として、交渉などを行うことがある。
国家要件と承認の関連「国家の資格要件」も参照

国家として承認するには、まず「国家の要件(必要な条件)」が満たされている必要がある。まず「永続的住民」「明確な領域」「政府」という国家の3要件が満たされていないと、そもそも承認を検討する段階に達していないと判断されることになる。国際法的な判断としてはこれが最も大切である。

加えて、各国政府がある政府を承認するかどうか判断するにあたっては、様々な他の条件も加味して検討し、決定されることになる。「新国家が国家としての要件を満たしているかどうか」だけで国家の承認を判断するわけではなく、承認する側の国家の内政的事情によって承認が行われるかどうかが決められることが多い。
主権の発生と承認の関係

どの段階で国家が国際法上、主権を持つ主体になっているのか、ということに関しては2つの説がある。「確認(宣言)的効果説」と「創設的効果説」である。互いに対立する内容の説である。
宣言的効果説(確認的効果説)(Declarative theory of statehood)宣言的効果説(確認的効果説)は、「国家は、事実上、国家としての要件を満たした段階で、国際法上の主体として存在する」ことを前提とした上で、他国家による当該国家の承認は、そのことを確認する行為であると位置づける[5]。「新たに誕生した国家が国際法上の国家として認められるかどうかは承認する側が決めることではなく、新国家が国家としての要件を満たしているかどうかで客観的に決められるべきものである」というものであり、他国家が承認をしない(あるいは承認しない国家がある)ということをもって国際法上の主体であることを否定することにはならない、とするものである。つまり、ある国が3要件を満たしていたら、それで既に主権は発生しており、承認の有無に関係なく、承認する以前から主権は発生している、とするものである。

創設的効果説(Constitutive theory of statehood)創設的効果説は、「国家は、他国家から承認を受けることにより、初めて国際法上の主体として存在することになる」という考え方である[6]。この場合は、他のどこの国からも承認を受けていない新国家は国家ではないとされるが、現実には「一つでも承認している国があれば国際的に国家とみなされる」というほど単純ではなく、明確な区別ができるような基準でもない。

従来は、どちらかというと創設的効果説のほうが有力ではあったが、第二次世界大戦後に相次いで独立を達成した新興諸国は、宣言的効果説のほうを支持する傾向が強く[7]、既に国際社会に新規参入した国の数のほうが既存の国の数をはるかに上回っており、現在では既に宣言的効果説のほうが有力になっている[8][注釈 1]
国家承認・政府承認の方法

国家承認・政府承認には、二種類の方法がある。いずれも先行して国際法上の主体として認められている国家からのアクションを要する。
明示的承認:新国家からの国家成立の通告に対して書簡、祝電、条約などにより承認の意思を明示的に表明することをいう。


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