以上で説明した国内総生産(名目GDP)は、経済状況のみならず、インフレによる価格変動によっても変化してしまう。そこで価格変動の影響を排除した国内総生産も定義されており、これを実質国内総生産(実質GDP)と呼ぶ。
価格変動の影響を排除するため、実質GDPではある年(例えば2001年)を基準年として定め、基準年における最終財・サービスの価格を使って現在の国内総生産を計算する。
厳密には以下の通りである。最終財・サービスiの基準年における価格がPiで、今年の価格がQiとする。またiは今年Xi個売れたとする。
このとき、今年の実質GDPは
実質GDP = Σi PiXi
により定義される。ここで和Σiは全ての最終財・サービスを渡る。
一方今年の名目GDPは
名目GDP = Σi QiXi
である。
以上で述べた実質GDPの値は、基準年の選び方に依存してしまう。従って現在では基準年の選び方の影響を排除するために、「連鎖」という方法で補正した定義を用いて実質GDPを計算している。
GDPの変化(経済成長率)に関しては経済成長を参照。 国内総生産をその国の人口で割った値を一人当たりGDPと呼ぶ。国ごとに人口が違うので、国ごとの経済状況を比較するには、通常の国内総生産ではなく一人当たり国内総生産を使う必要がある。国内総生産には名目と実質があるため、一人当たりGDPも一人当たり名目国内総生産と一人当たり実質GDPがある。 現在の国別一人当たりGDPについては国の国内総生産順リスト (一人当り為替レート)を参照。 名目GDPを実質GDPで割ったものをGDPデフレーターと呼ぶ。名目GDPと実質GDPはそれぞれインフレの調整を行っていないGDPと行ったGDPであるから、その比にあたるGDPデフレーターは、インフレの程度を表す物価指数であるのだと解釈できる。従ってGDPデフレーターの増加率がプラスであればインフレーション、マイナスであればデフレーションとみなせる。1995年からの日本のGDPデフレーター前年同四半期増加率(%)。内閣府の四半期別GDP速報より作成。 GDPデフレーターが消費者物価指数や企業物価指数
一人当たり国内総生産
国内総生産デフレーター「GDPデフレーター」も参照
このため1990年代末から2000年代初頭にかけて、日本経済で物価の下落が続くデフレーションが続いているのかどうかを判断する際に、GDPデフレーターを使うことが適切であるかどうかについては見解が分かれた。下落が続いていた消費者物価指数は、2005年初めから下落幅が縮小し、その年の10月には前年同月比がゼロとなって、11月以降は上昇が続いた。このことには原油価格の上昇によるコスト・プッシュの影響がかなりあったため、GDPデフレーターは前年比で1%以上の下落が続いていた。量的金融緩和政策の解除時期を巡って、緩和策の継続を望む日本政府と早期解除を望む日本銀行の間で議論が起こり、政府はGDPデフレーターがデフレであるとして量的金融緩和政策の解除に対しては慎重な姿勢をみせた。しかし、現実に上昇している消費者物価と企業物価を無視し、GDPデフレーターのみによって、「物価は上昇しているがインフレでない」と主張することはきわめて詭弁的である。GDPデフレーターはあくまで名目GDPを実質GDPで割った数値にすぎず、現実の物価が上がっていることを否定できるものでない。
なお現在、日本のGDPデフレーターはパーシェ型の連鎖指数で、実質GDPはラスパイレス型の連鎖指数であり、米国の実質GDPはフィッシャー型の連鎖指数が採用されている(パーシェ、ラスパイレス、フィッシャーおよび連鎖指数の説明については、指数 (経済)を参照)。
国内純生産詳細は「国内純生産」を参照
国内純生産(NDP: Net Domestic Product)は、国内総生産から固定資本の減耗分を差し引いたものである。しかし経済全体での固定資本の減耗分は測定しづらく、このため経済学者達は減耗の推定をあまり信用していない[30]。 グリーンGDPとは、従来のGDPから環境破壊による生活の質低下を引いたもの[31]。基本的な概念は「自然界の様々な要素を、何らかの基準で数値化し、価値ある資源として計上する」というものである。多くの場合、人類の経済活動は環境に悪影響を及ぼしているので、GDPに相応の減少分が発生する。これは生産活動によって減価償却が行われるのと似ている。 一定期間内に一国内で発生した付加価値の総量のことをGDPといい、この数値が増加すれば経済は発展していると見なされるが、これはつまり、「より多くの付加価値が生産されれば、それだけ経済は成長している」と考えているということである。 しかし、この考え方には欠点もある。例えば、森林開発が行われると木材・パルプ生産や住宅建設などがGDPを押し上げるが、土壌流出など環境破壊が起こっても、GDPには何の影響もない。このような矛盾に対して、1980年代後半から環境問題に対する取り組みが強化されたことで、現行のGDPの算出方式を変えようという声が出始めた。そこで代わりにグリーンGDPが考え出される。 1993年には国連統計部が独自の基準を策定したが、世界的にはばらばらの基準を用いているのが現状である。つまり、定評のある金銭換算の計測方法は未だにない。 国民純福祉(NNW)とは、GDPから公害や軍事費などの社会的に望ましくない価値を差し引き、家事労働やボランティア活動など値段で示されない価値を金銭換算して加えたもの[6]。ただし、定評のある金銭換算の計測方法は未だにない。 国内総生産が一国内において生産された付加価値額を表すのに対し、域内総生産 (Gross Regional Product) は都市圏や経済圏、州や県など、一定の地域内で生産された付加価値額を表す。域内総生産には中央政府が行う生産が含まれない場合もあり、全国の域内総生産を合計しても、必ず国内総生産と一致するとは限らない(日本の経済産業省が公表している地域間産業連関表のように、不整合を項目として設ける等の調整を行わない限り、全国計と一致することの方が珍しい。 都市圏同士の比較や地域経済間比較といった各種分析で使用される他、国土の広大なロシアの統計でよく用いられる。 アメリカ合衆国ドル(US$)建ての名目国内総生産における上位10か国[32]。 順位2023年2017年2007年1997年1987年
グリーンGDP
国民純福祉
域内総生産
各国の国内総生産
各国の名目国内総生産順リスト
単位は10億US$
1 アメリカ合衆国26,185.210 アメリカ合衆国19,519.40 アメリカ合衆国14,477.63 アメリカ合衆国8,608.53 アメリカ合衆国4,870.23
2 中華人民共和国19,243.974 中華人民共和国12,062.29 日本4,515.26 日本4,415.72 日本2,495.96
3 ドイツ4.456.100 日本4,859.79 中華人民共和国3,571.45 ドイツ2,221.74 西ドイツ1,170.62
4 日本4.210.600 ドイツ3,664.51 ドイツ3,444.72 イギリス1,537.56 フランス939.45
5 インド3,820.573 インド2,652.25 イギリス3,064.35 フランス1,462.61 イタリア815.84
6 イギリス3,479.468 イギリス2,640.07 フランス2,666.81 イタリア1,240.58 イギリス807.38
Size:64 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef