上では、企業が財・サービスの市場で自身の最終財・サービスを売り、その対価として得た金額として国内総生産を定義した。これを支出による定義と呼ぶ。
GDPにはこの他に生産による定義、分配による定義があり、これら3つの定義は全て同値となる(三面等価の原理)。 国内で一定期間(たとえば一年間)に生産された全ての最終財・サービスの総額として国内総生産を定義する。 企業によって生産された最終財・サービスは、誰かが自身のお金を支出して買い取るか、あるいは生産した企業が在庫として抱え込む。在庫は「将来売るための商品」であるから、企業の将来への投資支出の一種とみなせる。従って生産された最終財・サービスは最終的に誰かの支出となる。よって生産額による定義は支出による定義と一致する。 財・サービスXに対し、Xの売上額からXを作るのに使った中間財・サービスの値段を引いたものをXの付加価値という。国内総生産の定義より明らかに、国内総生産は(中間または最終)財・サービスの付加価値の合計に等しい。 企業は財・サービスを売ることで、その付加価値分だけの儲けを得る。企業の得た儲けの一部は、賃金、利子、賃料、および租税として家計や政府の利潤となり、残りは企業の利潤となる(そして利潤の一部は株主への配当や内部留保となる)。従って国内総生産は家計、政府、および企業へと分配された利潤の総和としても定義出来る。 先進諸国の傾向としては、国内総生産の3分の2が労働者の取り分となり、3分の1が地主・株主などの資本家の取り分となる[10]。経済学者の飯田泰之は「付加価値に占める賃金の割合は、3分の2くらいが妥当である」と指摘している[11]。 国内総生産(GDP)にしても国民総生産(GNP)にしても、「国籍」は関係がない。[4]。「国民総生産」でいう「国民」とは当該国の居住者主体を対象とする経済的な概念であり国籍とは関係がない[4]。個人の場合、主として当該領土内に6か月以上の期間居住しているすべての人を含む一方、一般に国外に2年以上居住する人は非居住者として扱われる[4]。 GDPとGNPの違いは端的に次の式であらわされる。GNP=GDP+第一次所得収支すなわちGDPに、海外から得た利子配当の類を加えたものである。例示すれば、トヨタが海外で付加価値を計上したとして、海外の雇用者に支払われた給与は日本のGDPにもGNPにも加算されることはないが、付加価値の内日本に利子配当などの形で日本に送金されたものは、日本のGDPには加算されないが、GNPには加算される。むろん逆のケースでは日本のGDPから差し引かれる場合もある。 「国の実体経済」を表す指標としては、国民総生産(GNP)よりも国内総生産(GDP)が重視されるようになった[12][13]。1980年代頃までは国の経済の規模・成長を測るものさしとして国民総生産(GNP)がよく用いられたが、時代が下るにつれて進展していった経済のグローバル化に伴い、国家を単位とする経済指標としては実態に即さなくなったと考えられるためである。 国連の1993SNA等ではGNPの概念そのものがなくなっており、それに代わる概念として国民総所得(Gross National Income = GNI)が導入されている[12]。国内総生産を推計する体系を国民経済計算(体系)と呼ぶように、国民概念がもともと利用されてきたが、国内の経済活動状況を判断する基準としては国内総生産を使用することが一般的となった。日本でも1993年から国民総生産に替わって国内総生産を使用するようになっている。 国内総生産は各国の経済力を示す重要な指標であるが、計算方法を公開していない推計値であると山内竜介[14]はしている。日本の国内総生産を公表する内閣府は非公開の理由を、「国家機密に当たる」としていると山内竜介は主張する。また、山内竜介によれば計算数式は毎年改良されるので、どれほど客観性、継続性があるか明らかではない[15]。しかし、どのように基礎統計を用いて国民経済計算を作成するかなどは内閣府によってある程度公開されている[16]。 また、ロシアや中国をはじめとする権威主義的・独裁的国家は政治的目的のため自国のGDP成長率を過大に発表していることが指摘されており、それらの国ではGDPの数値と実際の経済との間に大きな乖離がある可能性がある[17][18]。 ダイアン・コイル アンガス・ディートン[21]は、今までの経済成長は物質量ではかられてきたため電子メールなどによる生活水準の向上が過小評価されてきたとする[22] 今井賢一・一橋大名誉教授・米スタンフォード大学教授は「21世紀経済はGDPでは測れない」という。無料のサービスが普及したからだという。例えばスカイプ、ライン、メールなどの普及で郵便や電話によるGDPは減少する。今井は河川、森林、野生生物などの価値が「自然資本」として重要性を持つと述べる[23][24][25][26]。 オスカー・モルゲンシュテルン[27]は、GDPの統計誤差は5%以上あったとしている。 2009年、国連は計算基準を見直し、企業の研究開発費、防衛装備費、不動産仲介手数料、特許使用料も加えることとした。そのため日本のGDPは3%程度(約15兆円)増加する見込みである。世界各国は早めに導入済みで、日本では2016年7-9月から導入され、2016年7-9月より前のGDPに対しても、再計算されることになる[28]。 タックス・ヘイヴン(オフショア金融センター)にある資金は世界GDPの1/3である推定21兆?32兆ドルといわれ、GDPの計算がどこまで意味があるか不明となっている。 世界銀行が公表するGDPは、国際比較プログラムの計算法による購買力平価(PPP)で比較したもので、一般的な為替レートを使う計算法とは異なる。購買力平価によるGDPは、先進国のGDPが低めに算出されるため、2017年の国際間の順位は中華人民共和国が1位であり、アメリカ合衆国が2位、インドが3位となる[29]。 以上で説明した国内総生産(名目GDP)は、経済状況のみならず、インフレによる価格変動によっても変化してしまう。そこで価格変動の影響を排除した国内総生産も定義されており、これを実質国内総生産(実質GDP)と呼ぶ。 価格変動の影響を排除するため、実質GDPではある年(例えば2001年)を基準年として定め、基準年における最終財・サービスの価格を使って現在の国内総生産を計算する。 厳密には以下の通りである。最終財・サービスiの基準年における価格がPiで、今年の価格がQiとする。またiは今年Xi個売れたとする。 このとき、今年の実質GDPは 実質GDP = Σi PiXi により定義される。ここで和Σiは全ての最終財・サービスを渡る。 一方今年の名目GDPは 名目GDP = Σi QiXi である。 以上で述べた実質GDPの値は、基準年の選び方に依存してしまう。従って現在では基準年の選び方の影響を排除するために、「連鎖」という方法で補正した定義を用いて実質GDPを計算している。 GDPの変化(経済成長率)に関しては経済成長を参照。 国内総生産をその国の人口で割った値を一人当たりGDPと呼ぶ。国ごとに人口が違うので、国ごとの経済状況を比較するには、通常の国内総生産ではなく一人当たり国内総生産を使う必要がある。国内総生産には名目と実質があるため、一人当たりGDPも一人当たり名目国内総生産と一人当たり実質GDPがある。 現在の国別一人当たりGDPについては国の国内総生産順リスト (一人当り為替レート)を参照。 名目GDPを実質GDPで割ったものをGDPデフレーターと呼ぶ。名目GDPと実質GDPはそれぞれインフレの調整を行っていないGDPと行ったGDPであるから、その比にあたるGDPデフレーターは、インフレの程度を表す物価指数であるのだと解釈できる。従ってGDPデフレーターの増加率がプラスであればインフレーション、マイナスであればデフレーションとみなせる。1995年からの日本のGDPデフレーター前年同四半期増加率(%)。
生産による定義
分配による定義
分配面から見た国内総生産
国内総生産=雇用者報酬+(営業余剰+混合所得)+固定資本減耗+(生産・輸入品に課される税ー補助金)
計数の特徴
国民総生産と国内総生産の違い
問題点
世界銀行による計算手法
関連指標
実質国内総生産
一人当たり国内総生産
国内総生産デフレーター「GDPデフレーター」も参照
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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