国内総生産
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中間生産物は、別の(中間ないし最終)財・サービスを作るための要素として使われるので、「二重カウント」を避けるため、国内総生産には企業が中間生産物を売ることで得た金は含まれない。

企業によって生産された最終財・サービスは、誰かが自身のお金を支出して買い取るか、あるいは生産した企業が在庫として抱え込む。在庫は「将来、販売する為の商品」であるから、企業の将来への投資支出の一種とみなせる。従って生産された最終財・サービスは最終的に誰かの支出となる。企業による支出は投資支出と呼ばれ、Iで表される。家計による支出は消費支出と呼ばれ、Cで表される。また政府による支出はGで表される。

輸出入がない場合、GDPを国内で一定期間の間に最終財・サービスに対して行われた支出の総額ともみなせ、次が成立する事がわかる: GDP = C + I + G

輸出入がある場合、国内総生産額であるGDPのうち、輸出額X分だけ海外へと漏れ出る。 また国内の総支出C+I+Gの一部は輸入に使われたものである。 従って輸入額をIMとすると、以上の議論より、次が成立する事がわかる: GDP = C + I + G + X - IM

要素市場および金融市場は国内総生産(GDP)を定義する際、直接的には使用しないが、モデルの全体像を捉えやすくするため、説明する。生産要素市場は企業が労働、資本といった生産要素を家計から購入するための市場で、生産要素に対する対価として賃金、利潤、利子、賃料などの形で企業から家計に金が流れ込む。

金融市場は、銀行間取引市場証券市場および外国為替市場などの総称で、金融市場には家計から民間貯蓄が流れ込み、外国からは外国貸付や株式購入により金が流れ込む。

企業は銀行借入や株式発行により、金融市場から資金を調達し、政府は政府借入により金融市場から資金を調達する。そして外国は外国借入や株式売却により金融市場から資金を調達する。
三面等価の原理詳細は「三面等価の原則」を参照

上では、企業が財・サービスの市場で自身の最終財・サービスを売り、その対価として得た金額として国内総生産を定義した。これを支出による定義と呼ぶ。

GDPにはこの他に生産による定義、分配による定義があり、これら3つの定義は全て同値となる(三面等価の原理)。
生産による定義

国内で一定期間(たとえば一年間)に生産された全ての最終財・サービスの総額として国内総生産を定義する。

企業によって生産された最終財・サービスは、誰かが自身のお金を支出して買い取るか、あるいは生産した企業が在庫として抱え込む。在庫は「将来売るための商品」であるから、企業の将来への投資支出の一種とみなせる。従って生産された最終財・サービスは最終的に誰かの支出となる。よって生産額による定義は支出による定義と一致する。

財・サービスXに対し、Xの売上額からXを作るのに使った中間財・サービスの値段を引いたものをXの付加価値という。国内総生産の定義より明らかに、国内総生産は(中間または最終)財・サービスの付加価値の合計に等しい。
分配による定義

企業は財・サービスを売ることで、その付加価値分だけの儲けを得る。企業の得た儲けの一部は、賃金、利子、賃料、および租税として家計や政府の利潤となり、残りは企業の利潤となる(そして利潤の一部は株主への配当や内部留保となる)。従って国内総生産は家計、政府、および企業へと分配された利潤の総和としても定義出来る。

先進諸国の傾向としては、国内総生産の3分の2が労働者の取り分となり、3分の1が地主・株主などの資本家の取り分となる[10]経済学者飯田泰之は「付加価値に占める賃金の割合は、3分の2くらいが妥当である」と指摘している[11]
分配面から見た国内総生産


国内総生産=雇用者報酬+(営業余剰+混合所得)+固定資本減耗+(生産・輸入品に課される税ー補助金)

計数の特徴
国民総生産と国内総生産の違い

国内総生産(GDP)にしても国民総生産(GNP)にしても、「国籍」は関係がない。[4]。「国民総生産」でいう「国民」とは当該国の居住者主体を対象とする経済的な概念であり国籍とは関係がない[4]。個人の場合、主として当該領土内に6か月以上の期間居住しているすべての人を含む一方、一般に国外に2年以上居住する人は非居住者として扱われる[4]

GDPとGNPの違いは端的に次の式であらわされる。GNP=GDP+第一次所得収支すなわちGDPに、海外から得た利子配当の類を加えたものである。例示すれば、トヨタが海外で付加価値を計上したとして、海外の雇用者に支払われた給与は日本のGDPにもGNPにも加算されることはないが、付加価値の内日本に利子配当などの形で日本に送金されたものは、日本のGDPには加算されないが、GNPには加算される。むろん逆のケースでは日本のGDPから差し引かれる場合もある。

「国の実体経済」を表す指標としては、国民総生産(GNP)よりも国内総生産(GDP)が重視されるようになった[12][13]。1980年代頃までは国の経済の規模・成長を測るものさしとして国民総生産(GNP)がよく用いられたが、時代が下るにつれて進展していった経済のグローバル化に伴い、国家を単位とする経済指標としては実態に即さなくなったと考えられるためである。

国連の1993SNA等ではGNPの概念そのものがなくなっており、それに代わる概念として国民総所得(Gross National Income = GNI)が導入されている[12]。国内総生産を推計する体系を国民経済計算(体系)と呼ぶように、国民概念がもともと利用されてきたが、国内の経済活動状況を判断する基準としては国内総生産を使用することが一般的となった。日本でも1993年から国民総生産に替わって国内総生産を使用するようになっている。
問題点

国内総生産は各国の経済力を示す重要な指標であるが、計算方法を公開していない推計値であると山内竜介[14]はしている。


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