因数分解
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任意の行列は対角成分がすべて 1 の下三角行列 L と上三角行列 U および 置換行列 P の積に分解される(LUP分解: 実はこれはガウスの消去法を行列の形にまとめたものである)。
整数の因数分解詳細は「素因数分解」を参照

算術の基本定理により、任意の正の整数は一意的な素因数分解を持つ。整数の因数分解アルゴリズムが与えられたとき、そのアルゴリズムを繰り返し適用して、任意の整数をその構成要素である素数にまで分解しきることができる。しかし、非常に巨大な整数に対して効率のよいアルゴリズムは知られていない。
多項式の因数分解詳細は「多項式の因数分解」を参照

因数分解は、方程式関数について考える上で重要な概念の一つである。たとえば次のように左辺を右辺へ変形することをさす。対して、右辺を左辺へ変形することは展開という。
x 2 − 3 x + 2 = ( x − 1 ) ( x − 2 ) {\displaystyle x^{2}-3x+2=(x-1)(x-2)}

t 3 − t 2 − 3 t + 3 = ( t − 1 ) ( t 2 − 3 ) {\displaystyle t^{3}-t^{2}-3t+3=(t-1)(t^{2}-3)}

α 3 − 1 = ( α − 1 ) ( α 2 + α + 1 ) {\displaystyle \alpha ^{3}-1=(\alpha -1)(\alpha ^{2}+\alpha +1)}

これらの場合、1. では x − 1 と x − 2 を、2. では t − 1 と t2 − 3 を、3. では α − 1 と α2 + α + 1 をそれぞれ因数と呼ぶ。

係数として用いてよいの範囲が異なると、因数分解の結果が変わってくる。上の3例はすべて有理数(もしくは整数)の範囲で因数分解を行なったものである。数の範囲を実数まで広げると、2. は更に因数分解が行える。 t 3 − t 2 − 3 t + 3 = ( t − 1 ) ( t 2 − 3 ) = ( t − 1 ) ( t − 3 ) ( t + 3 ) {\displaystyle t^{3}-t^{2}-3t+3=(t-1)(t^{2}-3)=(t-1){\boldsymbol {(t-{\sqrt {3}})(t+{\sqrt {3}})}}}

さらに数の範囲を複素数まで広げると、3. は更に因数分解が行える。 α 3 − 1 = ( α − 1 ) ( α 2 + α + 1 ) = ( α − 1 ) ( α − − 1 + 3 i 2 ) ( α − − 1 − 3 i 2 ) {\displaystyle \alpha ^{3}-1=(\alpha -1)(\alpha ^{2}+\alpha +1)=(\alpha -1)\left(\alpha -{\frac {-1+{\sqrt {3}}i}{2}}\right)\left(\alpha -{\frac {-1-{\sqrt {3}}i}{2}}\right)}


代数方程式 f(x) = 0 に対し、その根を求めることは f(x) を一次式の積に因数分解することと等価である。しかし、展開は機械的に行う方法があるのに対して、整式を因数分解する統一的な方法はないため、状況に応じて適当な方法を適用する必要がある。
共通因数でくくる

全ての項に共通している因数でくくり出す。たとえば 2x5 − 5x4 = x4(2x − 5) など。
解の公式の利用

二次方程式の解の公式により、ax2 + bx + c = 0 の解は x = − b ± b 2 − 4 a c 2 a {\displaystyle x={\frac {-b\pm {\sqrt {b^{2}-4ac}}}{2a}}}

であるので a x 2 + b x + c = a ( x − − b + b 2 − 4 a c 2 a ) ( x − − b − b 2 − 4 a c 2 a ) {\displaystyle ax^{2}+bx+c=a\left(x-{\frac {-b+{\sqrt {b^{2}-4ac}}}{2a}}\right)\left(x-{\frac {-b-{\sqrt {b^{2}-4ac}}}{2a}}\right)}

と因数分解される。

例として x2 − x − 2 を因数分解することを考える。 x2 − x − 2 = 0 の解は x = − ( − 1 ) ± ( − 1 ) 2 − 4 ⋅ 1 ⋅ ( − 2 ) 2 ⋅ 1 = 2 , − 1 {\displaystyle x={\frac {-(-1)\pm {\sqrt {(-1)^{2}-4\cdot 1\cdot (-2)}}}{2\cdot 1}}=2,-1}

である。よって x2 − x − 2 = (x − 2)(x + 1) という因数分解の結果を得る。
2数の和と積詳細は「根と係数の関係」を参照

(x − α)(x − β) = x2 − (α + β)x + αβ という展開を逆向きに使う。x の項の係数と定数項から2数を見つける方法である。

例として x2 − 5x + 6 を因数分解することを考える。x の項の係数が −5 で定数項が 6 なので、和が 5 で積が 6 となる2数を探す。2 と 3 であることが分かるので、x2 − 5x + 6 = (x − 2)(x − 3) という因数分解の結果を得る。
たすきがけ

2次式を因数分解するときに用いられる、たすきがけとよばれる方法がある。途中計算に引くバツ印の線をたすきの背中側から見た姿になぞらえた名前である。x2 の項の係数の正の約数と定数項の約数を組み合わせて x の項の係数を作る。

たとえば 6x2 + x − 2 を因数分解することを考える。x2 の項の係数 6 の正の約数と定数項 −2 の約数の組み合わせのうち、次のような組み合わせを選ぶ。 3 2 ⟶ 4 × 2 − 1 ⟶ − 3 {\displaystyle {\begin{matrix}3&&2&\longrightarrow &4\\&\times &&&\\2&&-1&\longrightarrow &-3\end{matrix}}}

この計算で得られた 4 と −3 の和が x の項の係数1と等しいので、× の上の行の数 3 と 2 を使って 3x + 2 という式と作り、同様に下の行の数 2 と −1 を使って 2x − 1 という式を作る。このとき、元の2次式 6x2 + x − 2 はこの2つの式をかけ合わせることで求められるので、6x2 + x − 2 = (3x + 2)(2x − 1) という因数分解の結果を得る。
因数定理の利用詳細は「因数定理」を参照

因数定理を利用する。すなわち f(x) の値を 0 にする x の値()を見つける。f(α) = 0 となったとすれば、x − α が f(x) の因数の1つである。

たとえば 2x4 − 5x3 − 8x2 + 17x − 6 を因数分解することを考える。この式に x = 1 を代入すると 0 となるので、x − 1 が因数の1つであることが分かる。元の式を x − 1 で除算して、2x4 − 5x3 − 8x2 + 17x − 6 = (x − 1)(2x3 − 3x2 − 11x + 6) となる。

この方法で求めた1次の因数以外の因数(この例では 2x3 − 3x2 − 11x + 6)は、何らかの方法で更に因数分解できるかもしれない。この例では x = −2 を代入すると 0 になるので x + 2 も因数だと分かる。
因子分解可能な整域

整数の全体 Z および K 上の多項式環 K[X] は一意分解可能—すなわち「零でも単元でもないすべての元が既約元の積に分解される」(例えば整数の場合には、その単元は ±1 であり、その既約元は素数である)、および「その分解が各因子の並べ替えと因子にいくつかの単元を掛ける違いを除いて一意である」—という性質を共有している。一意分解可能であるという性質を持つ整域一意分解整域 (UFD) と呼ぶ。
注意
零でも単元でもない元を「既約元」の積に分解するような因子分解を「既約元分解」と呼び、「素元」の積に分解されるとき「素元分解」と呼ぶ。


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