回転式拳銃
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20世紀中盤以降のリボルバーは、ほぼアメリカのメーカーにより開発、改良がされている。特に、コルトとスミス&ウェッソン(S&W)の2大メーカーはライバル関係として知られている。片方がある銃を開発すればそれを意識した銃を開発し、銃の部品名がことごとく違ったり、構造も正反対であったりする。スターム・ルガーは、後発ながらもスタームルガー・ブラックホークなど、安価だが堅実な構造のリボルバーで人気を博し、こちらも一大メーカーとなっている[2]
構造とその優劣

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構造は簡便かつ頑丈である。このため、マグナム弾等の強装弾を使用できる機種も多い。
安全機構

かつてのリボルバーには安全機構が無いに等しかったが[注 4]後に様々な安全機構が開発されることになった。まず「ハンマーブロック」という方法が考案され、これは撃鉄と雷管の間が通常はブロックされ、引き金を引いた時のみこの機能が解除され撃てるようになるというものである。一方スターム・ルガー社は、「トランスファー・バー」という方法を自社のリボルバーに採用した。これは、通常は撃針が前進しても雷管を打つ撃針には接触しないようになっており、引き金を引いた時のみ中継用のバーがせり上がって間隙を塞ぎ、雷管に打撃を伝えられるようになるという、ハンマーブロックとは逆の発想である。ただし、トランスファー・バーはスターム・ルガーの特許ではないため、今日のリボルバーはほぼ全てがどちらかの安全機構が搭載されている。リボルバーの特徴として、引き金を引かなければ発射できない「内部安全装置」こそあれ、外部から操作する「手動安全装置(マニュアル・セイフティ)」は基本的に搭載されていない[3]。銃把を握り込むと解除されるグリップセーフティー(スミス&ウェッソン・ハンマーレス)、自動銃並みのセーフティーレバー(ライヒスリボルバーウェブリー=フォスベリー・オートマチック・リボルバー、スチェッキン・OTs-38)など、何らかの形の安全装置を備えた製品も存在するが、少数派にとどまっている。
利点

それ以前の銃、銃身(バレル)がひとつで1発しか装填しておけないような銃(あるいは複数バレルで、本数分しか装填出来ない銃)と比べれば、多数の弾を装填しておけるので、実際の戦闘の場面では相当に有利になった。

また、「弾づまり」で全く撃てなくなってしまうということが起きず、オートマチック拳銃と比較して信頼性が高い。オートマチックのようには排莢しないため、ジャム(装弾不良/排莢不良)が発生しない[注 5]。万一不発が発生しても、撃鉄を起こすかもう一度引き金を引くだけで次弾をすばやく発射できるという利点もある[注 6]。このようにリボルバーはオートマチックよりマルファンクション(故障)の可能性が原理的に低い為、護身用銃としての人気が根強い。他にもオートマチックあるいはショットガン等、バネの力で弾薬を押し出す弾倉を有する銃器は、リボルバーに優る装弾数の代償として、装弾したまま長期間放置すると、押し込まれた状態に置かれた弾倉バネが縮んで(ヘタって)給弾不良を生じるリスクがある。リボルバーは装弾した即応状態で保管しておける点も護身用として好まれる。

オートマチックは、発射の反作用で作動するため、ほぼ銃に推奨される弾薬以外使用できないが[注 7]、リボルバーの場合はシリンダーの穴と同じ径であれば、比較的弾薬の融通が利くという利点もある[6]
欠点
Smith & Wesson Model 686 .38 Specialを撃った様子。シリンダーギャップからガスが横方向に漏れているのがよく判る。リボルバーの欠点のひとつ。

1950年代に自動式拳銃(オートマチック)が普及するようになると、人によっては「自動式拳銃と比較すれば装弾数が少ない」「弾薬の再装填に時間が掛る」などの点を挙げる場合もある。ただし後者の「再装填時間」に関しては、1910年代になると、6発の実包をまとめた円盤形の「ムーンクリップ」と呼ばれる治具(挿弾子)で一気に装填する方法が開発された。またさらに「スピードローダー」と呼ばれる専用の装填器具を用いれば大幅に短縮することができ、それらを活用する場合、再装填時間に関しては自動式拳銃(オートマチック)と比べてさほど遜色はない。

ただしムーンクリップはかさばる上に、歪んで銃へのセットが困難になりやすい欠点があり、これらの軽減のため敢えて3発分の半月型にカットした「ハーフムーンクリップ」が考案された(以前からある6発用はフルムーンクリップと呼ぶようになった)。他にもクリップ厚みの分シリンダー後端のクリアランス差が生じるため、クリップへの薬莢の脱着に手間がかかる点からクリップ対応銃と非対応銃では現実的に弾薬互換性が無いなど問題も多く、旧来形式のバラ弾使用リボルバーを駆逐するには至らなかった。スピードローダーならバラ弾を迅速に装弾できるが、ムーンクリップ以上に大きくかさばる。

リボルバーの弾薬は、基本的に薬莢の後端の縁(リム)の直径が大きくなっている古い形態であるリムド・カートリッジを用いる。リムの出っ張りは自動銃の弾倉にセットする際には邪魔になるためリムレス・カートリッジが開発されたが、リボルバーではリムレス弾はシリンダー前方に抜け落ちてしまうため、ムーンクリップを用いなければ装弾は困難である。上述の事情のため、リボルバーには専用のリムド拳銃弾が求められ、アメリカを中心に依然として多種多量に製造流通している。

弾倉が回転する都合上、銃身と薬室との間に隙間(シリンダーギャップ)があり、高温・高圧の発射ガスがそこから漏れてエネルギーのロスが生じ[注 8]、発射ガスが吹き付けることでフレームが損傷したり弾倉の軸周辺が汚れたりするおそれがあり、発砲音も大きくなる。このためリボルバーに消音器を使用しても減音効果はほとんど期待できない[注 9]。銃の持ち方によっては、ガスで手を焼く危険もある。また発射時に銃身内腔と薬室との間で芯ずれ(軸のズレ)が起きる可能性がある[注 10]

なお回転輪胴の構造上、排夾不良は起こらないが、遅発(ハングファイアー)に関して危険な面もあり、遅発を不発と思い込んで次弾を発射しようとした時点で当初の弾丸が遅れて発射され、銃身他の前方構造物に当たって危険なことがある。もし不発が起きても次弾を直ぐに発射せずに、射撃姿勢を保ったまま数十秒様子を見るのが肝要である。

そしてパーカッションロック式以前の銃ではシリンダーギャップによるチェーンファイア(発砲炎が隣の薬室に伝火しての暴発)現象も、事故に繋がる重大な問題であった。
リボルビングライフルコルトM1855 リボルビングライフル(カービン)

リボルビングライフル(Revolving rifle)は回転式装弾機構を持った小銃の一種。短銃身のカービンタイプ以外は厳密な意味では拳銃ではないが、リボルバーの仲間としてここで解説する。

パーカッション時代になっても小銃サイズの連発式火器は複数銃身を持つ物以外、実用的な銃がなかなか成功しなかった。これを成功した連発機構を持った回転式拳銃をスケールアップすることで解決しようとした試みが、19世紀中頃に誕生したリボルビングライフル(カービン)と呼ばれる火器である。だが、結果的には失敗したカテゴリーの銃となった。

短銃身の回転拳銃に肩当て銃床を取り付けたカービンタイプ(片手で操作可能。または用心鉄かグリップの下にもう片手を添える)はそれなりに機能したのだが、長銃身の小銃を保持するのには片手を銃身の下部に添える必要があるため、シリンダーギャップから前・側方へ噴出する発射ガスがそれを直撃し、火傷を負う問題(よって素手での操作は火傷を覚悟する必要があり、使用時には革手袋が必須となる)を最後まで解決出来なかったためである。

しかし、ウィンチェスターライフルを筆頭とするレバーアクション式ライフルが開発されるまで、これに代わる連発機構もなかったため[注 11]、一時はコルト等の大手も参入して盛んに製造され、南北戦争ではコカチネット州で北軍大佐になったサミュエル・コルトが、1861年に私費を投入して同社のリボルビングライフルを装備する「コルト第一リボルビングライフル連隊」などという部隊まで編成している[注 12]

代表的な銃には、コルト第一連隊の装備にもなったコルトM1855リボルビングライフルがある(各種口径が揃っており、散弾仕様もあった。特に70口径の銃は「エレファントガン」とも呼ばれた)[8]

メタリックカートリッジ時代になっても、オプションパーツとして回転拳銃をリボルビングカービン化する脱着式ストックが作られている。
主なリボルバーの一覧「Category:回転式拳銃」を参照
脚注[脚注の使い方]
注釈^ オックスフォード英語辞典の定義文より。理屈の上では最初から「回転するシリンダー」や「回転するシリンダー(回転輪胴)にあけられたチャンバー」でも誤りではないが、「回転式弾倉」と言うほうが一般的とされる。英語も同様に「回転するシリンダー」とは言わず、「回転するチャンバー」と言う。
^ これには懐具合から西部開拓民の多くが高価な新型実包式拳銃を買えず、安価な旧式銃改造で済まそうとする事情があったためでもあり、1870年代になっても数多くのコンバージョンガンが市場に出回っている。
^ 1980年代ごろまで、フルメタルジャケット弾を用いずにソフトポイント弾を用いた場合のオートマチックの信頼性はあまり高くなかった。
^ 安全のために、撃鉄が触れる部分の穴を空にしておくのが常識だった。しかし、当然それでは一発分損をすることになる[3]
^ ただし全く起こさないわけではなく、汚れや部品の破損で起こることはある。それ以外に、軽量な割に強力な弾薬を発射できるリボルバーで、軽い弾頭を持つ弾薬を込めて発射した場合、発射の反動で他の穴に入っていた弾薬の弾頭が少し飛び出し、結果的にシリンダーの回転を阻害することによりジャムが起こることもある[4][5]


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