回復領
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「回復」という表現が用いられるのは、体制側のプロパガンダとして[5]、西部および北部領土は中世のピャスト朝以来ポーランドの分ちがたい一部であったという構図を示し、ポーランド人民共和国がその正当な継承者であることを主張するためであった[2][6][7][8][9]。過去の領有として強調されたのは、西部領土については中世盛期のピャスト朝960年頃 - 1370年)の、建国時にローマ教会と皇帝から正式な承認を受けた国境線を含むいくつかの時期における領有であり、北部領土については近世のいくつかの時期におけるポーランドの宗主権(レーエン)であった。東ヨーロッパへのドイツ人の歴史的定住(東方植民)によって、何世紀にもわたりこれらの地域にドイツ人が住んでいたことについては、ドイツの継続的な東方への「侵略」行為の結果に過ぎないとされた(東方への衝動[8][10][11]。戦後における住民の強制移住は、公式には「本国送還」と呼ばれ[8]、かつてこの地域に存在していたドイツ的文化伝統は、1989年のポーランド民主化によって公的な歴史認識の転換が行われるまでは顧みられることなく否定されることになった[12]第二次世界大戦によるポーランドの領土の変化:
桃色の部分が回復領、灰色がソ連に併合された旧ポーランド領東部。西側を縁取る明るい緑色の線がオーデル・ナイセ線

第二次世界大戦後、回復領からは多数のドイツ人が脱出して西方へ去ったが(Flight and expulsion of Germans from Poland during and after World War II)、一部のドイツ系住民はそのまま留まっていた。しかし、彼らもやがてほとんどが追放されることになり、代わってポーランド人が他地域からどんどんと入って来たが[13][14][14]、それでもごく少数のドイツ系住民はポーランド国籍を得てドイツ系ポーランド人として一部の地域に残留した。この地域に入ってきたポーランド人の多くは、ポーランド中部や戦時中逃れていた国外から自由意志でやって来ていたが、ポーランド当局は、ウクライナ人など国内の少数民族集団を強制的に分散移住させ(ヴィスワ作戦、Operation Vistula)、また、ソ連に併合された旧ポーランド領東部(Territories of Poland annexed by the Soviet Union)の住民を回復領に「本国送還」して、こうした地域のポーランド化を確かなものにした[13][14][15][16]

1950年ドイツ民主共和国 (東ドイツ)がズゴジェレツ条約でオーデル・ナイセ線を正式に国境として承認し、ドイツ連邦共和国 (西ドイツ)も、1970年ワルシャワ条約でこれに同意した。さらに統一後のドイツ連邦共和国1990年ドイツ・ポーランド国境条約(German-Polish Border Treatyを締結して、オーデル・ナイセ線を国境とすることを再確認している。
地域ポーランドの県区分図 (1999年以降)
北西の隅、緑色が西ポモージェ県
東へ、ポモージェ県(桃色)、ヴァルミア・マズールィ県(緑色)
南へ、ルブシュ県(茶色)、ドルヌィ・シロンスク県(黄色)、オポーレ県(緑色)、シロンスク県(桃色)回復領(深緑色)と現在の県区分を重ねた地図「旧ドイツ東部領土」を参照

「西部領土」を構成するのは、以下の各地方である。

西ポモージェ県[17]は、全域が、かつてのポメラニアの東部、東(下)ポメラニア(de:Hinterpommern、en:Farther Pomerania)と、シュチェチン(Szczecin: ドイツ語名、シュテッティン Stettin)周辺の領域にあたる。プロイセン領?ドイツ領時代のポメラニアは、ポメルン州(1815年 - 1946年)を構成し、第二次世界大戦後のポーランドへの移管直後は当時のシュチェチン県(pl:Wojewodztwo szczeci?skie、en:Szczecin Voivodeship)がこれを引き継いだ。その後のポーランドの行政区画の変更により、ドイツ領時代のポメルン州の最も東の部分は、ポモージェ県に編入された。

ルブシュ県は、ほぼ全域がプロイセン領?ドイツ領時代のブランデンブルク州(de:Provinz Brandenburg、en:Province of Brandenburg)の東部ノイマルク地方(de:Neumark (Landschaft)、en:Neumark)に相当する。県名の「ルブシュ Lubusz」(ドイツ語: Lebuser Land)は、中世の地名の付け方に従って、当時近傍で重要な町であったレブス (Lebus) (ポーランド語: Lubusz) の名を冠したものであるが、レブス自体はオーデル川左岸のドイツ側の町である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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