四輪駆動
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浚渫船を製造した工場から陸路を輸送するために、船に車輪が取り付けられ、蒸気機関の動力をベルトで前後輪に伝えることで走行した。それ以降も蒸気機関を使用した四輪駆動車は製造された。1824年イギリスロンドンでウィリアム・ヘンリー・ジェームズによって作られた蒸気自動車は、四輪それぞれにシリンダーを持ち、デフを用いずに各輪の回転差を吸収するようになっていた。

電気モーターを使用した四輪駆動車も1900年ごろ作られている。フェルディナント・ポルシェが開発した「ローナーポルシェ」は、インホイールモーターと呼ばれる、各輪のハブに駆動用モーターを内蔵する方式で四輪駆動としていた[注釈 3][3]ガソリンエンジンを用いた初の四輪駆動車SPYKER

ガソリンエンジンを使用した四輪駆動車は、1902年オランダのスパイカー兄弟によって作られた「SPYKER」が最初である。この車は、前進3速・後進1速のトランスミッションと、2速のトランスファーおよびセンターデフを介し、四輪を駆動する設計で、現代のフルタイム式四輪駆動車と基本が同じという画期的なものであった。

1903年には、ダイムラーの子会社であるオーストリア・ダイムラー社で、四輪駆動装甲車が開発された。この車は装甲と37 mm機関砲を装備した砲塔を持ち、前進4速・後進1速のトランスミッションとトランスファーを介して四輪を駆動した。またダイムラー本体でも、ドイツの植民地だったナミビアの駐在員のベルンハルト・デルンブルクの生活の足のために、1907年に四輪操舵の四輪駆動車「デルンブルク・ワーゲン」を開発。ダイムラー・ベンツとなった後、1926年からトラックや軍用に4×4や6×4、6×6、8×8などの駆動システムを開発して技術を洗練させていった。これが現在のGクラスウニモグにも繋がっている[4]ダイムラーのデルンブルグ・ワーゲン

アメリカでは1905年にトライフォード・モーターカンパニーが製造したのが最初だが、大量生産に成功したのはフォー・ホイール・ドライブ(FWD)社であった。同社の3トンの「モデルB」は、第一次世界大戦中はジェフリー・モーター・カンパニー(ランブラー自動車の当時の社名)は四輪駆動トラックの設計・製造するクワッド・トラック(Quad Truckまたはジェフリー・クワッド、ナッシュ・クワッド)と共に、欧州で戦う連合軍に提供され、ジョン・パーシング指揮の下、重量級軍用用途に用いられた。四輪駆動に四輪ブレーキ・四輪操舵まで兼ね備えたナッシュ・クワッドは15年に渡って4万台以上が製造された。

なおフォード・モデルTにおいても1910年代以降に四輪駆動キットが販売され、四輪駆動化された車輌があったが、これは、走破性向上のためというよりも、もっぱら駆動輪である後輪にしか働かないエンジンブレーキを前輪にも作用させるためであった。九五式小型乗用車

日本においては1935年頃、前年に帝国陸軍が依頼し日本内燃機が開発した九五式小型乗用車(くろがね四起)が登場した。九五式小型乗用車はアメリカ軍ジープに先駆けて開発・量産された日本初の実用四輪駆動車であり、1936年から1944年まで計4,775台が生産され、日中戦争ノモンハン事件太平洋戦争などで偵察・伝令・輸送用に幅広く使用された。

1941年、アメリカにジープが登場した。ドイツ軍キューベルワーゲン(二輪駆動車。1940年頃登場)に相当する軍用車両として、アメリカ陸軍の仕様に対し各社の試作の中からバンタム(英語版)社の案が採用されたものだった。バンタム社は当然自社での生産を望んだが、実際には生産設備の規模や品質からほとんどがウィリス(英語版)社とフォード社に発注され製造された。ジープは戦場の悪路を走破するための自動車として有益であることが第二次世界大戦で実証され、大量生産を経て連合軍に供給され世界各地を走破した。ジープの活躍はそのため世界各地で注目を呼んだ。日本でも陸軍が南方戦線で鹵獲したバンタム・ジープを日本に持ち帰り、「ボディは似せないこと」という注文付きで製作するようトヨタ自動車に依頼したが、まもなく敗戦となった。この戦争自体は不幸なものだったが、結果的には四輪駆動に必要なデファレンシャルギアや等速ジョイントの技術を大きく進歩させることとなった。フォード・F-150

戦後は軍用で磨かれた四輪駆動システムを民間のトラックや市販車市場に流用する動きが活発になった。特に米国ではジープが躍進し、GMとフォードもピックアップトラックやSUVなどでこれに追随。現在まで続くシボレー・ブレイザーフォード・ブロンコ、Fシリーズなどが生まれた。

カイザー・ジープ社は、ジープの四輪駆動技術をステーションワゴンに搭載したジープ・ワゴニアや、そのV8エンジン版となるスーパーワゴニアを発売した。その後もジープは親会社を転々と変え続けながら、米国のアウトドアブームに乗ってAMC・イーグルジープ・チェロキーといった四輪駆動車のヒット作品たちを世に送り出すことになる。


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