嘔吐
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耳鼻咽喉疾患良性発作性頭位めまい症乗り物酔いなど
心血管疾患急性冠症候群、急性大動脈解離など
神経疾患脳血管障害髄膜炎、頭蓋内圧亢進症など
代謝内分泌疾患尿毒症糖尿病性ケトアシドーシスアルコール性ケトアシドーシス
泌尿器疾患腎炎
産科疾患妊娠性悪阻
薬物ジゴキシンテオフィリンカルバマゼピン
中毒きのこ中毒
アレルギー疾患消化管アレルギーアナフィラキシー
精神疾患拒食症過食症など

早期の治療が必要な場合

前述した要因に当てはまらず、
頭痛など他の部位の症状を伴う嘔吐の場合には、臓器・神経系の損傷などといった、別の病因による副次的な症状である可能性があり、場合によっては生命の危険に関わる。このため早急な医師診察が必要である。

一般的に嘔吐した場合、吐瀉物は胃酸を中心に胃の内容物である。胃炎胃潰瘍などの病気により発生した場合には、それら以外に血液を含む場合がある。状態によって以下のような、それぞれ別の原因によるものである。

茶褐色である(胃酸と反応するため)吐瀉物中にこのような茶褐色の血液の塊がある場合は、消化器潰瘍が疑われるため、早めの消化器内科への受診が勧められる。嘔吐によって初めて自覚されるが、普段はそのまま消化してしまっているため、自覚症状に乏しい。

鮮血を吐く(赤い・量が多いなど)吐血とよばれ、重大な消化器の損傷が疑われるため、嘔吐とは違いより救急的な医療を必要とする。消化器内科・外科を含む救急指定病院へ急ぐことが勧められる。

咳き込んだ際にも血液が混じる喀血とよばれ、嘔吐や吐血とは原因が異なり、呼吸器の損傷で咳や痰と共に血液が排出される。その一部が胃に入って、吐瀉物にも血が混じることもある(茶褐色)。感染症(伝染病)も疑われるため、早期の呼吸器内科への受診が勧められる。

吐き方・吐かせ方

嘔吐物が気管に入らないように頭を下に向けて吐かせる。吐くだけ吐いてすっきりさせる。気分が悪く吐きそうだが吐けないなどの場合は、指を舌の奥に入れるなどの嘔吐反射を用いる。特に臭気が不快感を催させるため、吐瀉物の処理はし尿など汚物全般に準じ、また嘔吐に際して着衣が汚れないよう注意を必要とする。吐いた後は十分に水分および塩分補給をすべきであるが、その際に冷たいものを飲ませるとそれが胃に刺激を与え、さらに吐いてしまう場合がある。そのため、体温程度に温めたスポーツドリンクなどを与えるのが望ましい。

意識を失っている場合や、意識がはっきりしない場合などは、嘔吐の後に窒息する危険性があるため、喉の奥や鼻腔の中に吐瀉物が詰まっていないか注意する必要がある。緊急的には指でかき出したり、後ろから抱きかかえて鳩尾(みぞおち)を斜め後ろ上方に押し込んだりするなど、喉の奥にモノが詰まった時同様の処置をする。乳幼児の場合などでは、逆さにして背を強く叩いたり、大人が口で幼児の鼻と口を覆って吸い出したりすることも行われる場合がある。

吐かせた、または吐いた後は、患者に回復体位を取らせるのが望ましい。回復体位を取らせるのが難しい場合は、嘔吐物により窒息しないために、身体を横に向けて寝かせる。特に意識が朦朧としている場合や意識を失っている場合、嘔吐物が気管に入り、窒息の危険がより高まるために仰向けに寝かせてはならない。

また、飲み込んだ物を強制的に吐かせるために催吐薬を用いる場合もある。
治療

基本的には、心筋梗塞では経皮的冠動脈形成術(PCI)といった原因療法を行う。対症療法としては制吐薬、グリセオールといった脳圧降下薬、胃内容物の除去としてNGチューブの挿入などが行われる。制吐薬としては消化器疾患が疑われた場合はドパミン拮抗薬や抗コリン薬が用いられる。ドパミン拮抗薬としてはメトクロプラミド(プリンペランR)、ドンペリドン(ナウゼリンR)などがよく用いられる。これは消化管蠕動運動を亢進させることで内容物が通過することにより、嘔気が軽減する。静注筋注坐薬、経口といった各種薬剤が市販されている。点滴静注では即効性がないことが知られている。心窩部の不快感ではなく腹痛が認められる時は蠕動の亢進で症状が悪化することがあり、注意が必要である。この場合は抗コリン薬であるブチルスコポラミン(ブスコパンR)が好まれる傾向がある。抗コリン薬は腸管蠕動を抑制することで悪心、嘔吐を軽減する作用がある。胆管尿管にも同様に作用する。また内視鏡的に潰瘍、炎症所見が認められない機能性ディスペプシアの場合はセロトニン5-HT4受容体刺激薬であるモサプリド(ガスモチンR)がよく用いられる。

また制吐薬に分類されるドパミン拮抗薬はスルピリド(ドグマチールR)を除き中枢神経作用は殆どないとされているが稀に錐体外路症状が出現することがある。振戦(ふるえ)、無動、固縮といったパーキンソン症候群の形をとることが多く、この場合は抗コリン薬であるビペリデン(アキネトンR)などがよく用いられる。また胃潰瘍やGERDによる悪心、嘔吐に関してはH2ブロッカーPPIが用いられる。その他、種種の原因で起こる悪心、嘔吐に対する制吐薬を以下に纏める。

疾患分類用いる制吐薬
片頭痛5-HT1B/1D受容体作動薬
前庭系・心因性抗ヒスタミン薬+抗不安薬
機能性ディスペプシア5-HT4受容体作動薬
便秘瀉下薬
抗がん剤によるacute emesis5-HT3受容体拮抗薬やステロイド

治療に反応しなかった場合は経口摂取不可能であることが多く、入院の適応となる。治療薬の変更よりも原因疾患の再検索重要となる場合が多い。特に異常がなく不定愁訴として嘔気・嘔吐が起きる場合、消化器機能改善剤であるメトクロプラミドドンペリドン、ドパミン遮断効果・鎮静効能のある抗精神病薬のクロルプロマジンなどの投与を対症療法として使用される場合がある。
小児科領域の嘔吐

ヒトの新生児が生後48時間以内に1回程度嘔吐することはよく見られる現象である。たとえ正常な状態で産まれてきたとしても、生後48時間以内に1回の嘔吐をする新生児が過半数だと(6割から8割の新生児が1回は嘔吐するとも)いわれる。新生児の嘔吐の大半は一過性であり、多くとも数回程度で終わって嘔吐しなくなるので、治療も不要である。しかしながら、中には消化管が閉鎖しているなどの奇形、ミルクアレルギー、分娩時に脳に損傷が生じた場合などが原因である嘔吐も少数ながらあるために鑑別が重要で、原因精査が求められる。吐寫物の性状(水のようなのか、血液は混じっているか、乳汁のようなのか、など)を確認することが、鑑別の手がかりとなるため、どのような物を嘔吐したかを観察することが必要である。なお、成人では消化器の領域の感染症や潰瘍などによって起こる嘔吐が最も多いのだが、小児ではその他の疾患も鑑別に上がってくる。先天性腸閉鎖は腸回転異常でも起こるし、輪状膵でも起こりうる。これらの疾患ではその他の奇形の精査も重要となることがある。

発症時期疾患吐物画像所見
出生直後先天性食道閉鎖症泡沫様coil up sign
出生数時間?1週間先天性腸閉鎖症胆汁性microcolon 多数のniveau
出生数時間?1週間鎖肛 直腸体温計が入らない、倒立位撮影
出生数時間?1週間ヒルシュスプルング病 megacolon caliber change narrow segment
出生2,3週肥厚性幽門狭窄症噴水状嘔吐string sign umbrella sign showlder sign
数ヶ月?2歳腸重積胆汁性、黄色吐物かにの爪、target sign

吐瀉物の処理

床などに出された吐瀉物は半液状で、悪臭を放ち、ノロウイルスなど病原体を含む場合があるため、清掃に不快感や時に危険が伴う。酔客らが嘔吐することが多い鉄道駅では、水分を吸収して処理しやすいおがくずがストックされていることもある。東日本旅客鉄道グループのJR東日本環境アクセスは、紙製の吸水材や吐瀉物用の掃除機を開発している[1]
社会と文化

バス酔いなどする人は、あらかじめエチケット袋(液体を通さないビニール袋など)を持ったり、薬局などで売られている酔い止め薬を乗車前に飲んだりすると良い。長距離バスや観光バスなどでは、エチケット袋が用意されている場合が多い。[2]

自白する事を俗語で「吐く」「ゲロする」と言う事がある。


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