営団3000系電車
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座席はエンジ色のモケットで、上部には郊外からの長距離乗客を考慮して営団車両では初めて座席上部全長に荷棚を設置した。つり革は営団標準のばねで戻るリコ式であったが、途中からは通常のつり輪式(三角形)に変更され、リコ式の車両も1973年(昭和47年)5月から つり輪式に改修された。荷棚は8次車まではパイプ構成、9次車は金網による構成である。

側窓は二段式で、上下の窓は同一レール上にあり上段上昇(全開)、下段上昇(75mmだけ上昇)式である。1次車では側窓高さは800mmとされたが、このため車内から駅名表示板の上半分が見えないという問題が生じた(それまでの銀座線・丸ノ内線は1000mm)。このことから仲御徒町駅以東の建設時には駅名表示板の高さを変更する対策がとられた。後述するが、種々の改良で最終的には4種類の側窓があり、後に全車両が最後の車両の形態(上下非対称二段式)に改修されている。地上線での走行のため、側窓には遮光装置を設置したが、一般的な巻き上げ式カーテンではなく、板状の「カーテン戸」が降りてくるという珍しいものである。

車内の通風には外気循環形の有圧式軸流送風機(ファンデリア)が採用されている。ただし、8次車以降は将来の冷房化も視野に入れた扇風機に変更されている。
乗務員室3000系保存車(3001)の運転台(2010年11月28日 綾瀬検車区)

運転台主幹制御器デッドマン装置付の回転式ツーハンドルマスコンである。当初の速度計は針が横にスライドするタイプであったが、1976年(昭和51年)8月からは乗務員室艤装の改修工事が実施され、通常の回転式になるなど運転台は大きく改造された。

前面の運行番号表示器は札を取り付ける方式から1984年(昭和59年)から手動幕式表示器に変更した。運客室仕切りは窓が3枚並んでおり、中央が貫通扉窓である。当初は窓が大きかったが、更新時に貫通扉以外の窓が縮小された。遮光幕は客室から見て左側2枚に設置されていた。
主要機器

車両性能は地下鉄線内の高加減速性能と地上線内における高速性能を確保するため、歯車比弱め界磁率を適切に設定することで両者の十分な性能を発揮できるものとされている。編成両数にかかわらず、全電動車方式である。

主制御器は三菱電機製の電動カム軸式抵抗制御(ABFM-108-15MDH形)を採用しており、バーニアノッチを用いた超多段制御方式である[12]。制御段数は力行78段(直列31段、並列37段、弱界磁10段)、制動67段(全界磁)のパターン制御を採用し、抵抗制御中のノッチオフやブレーキ緩めには、戻しステップによる多段減流を行うことで乗り心地の改善を図れるものとしている[12]。このために複雑な構造をしており、保守には多くの手間を要する結果となった。

主電動機は三菱電機製のMB-3054-A形、MB-3054-AE形列(出力75kW・端子電圧375V、電流224A、回転数1,600rpm)で、地下鉄線内の高加減速性能と地上線内における高速性能を確保するため、同出力の丸ノ内線用よりも性能向上させたもので、弱め界磁は30%まで使用できるものである[13]

ブレーキ装置は発電ブレーキ併用の電磁直通ブレーキである。本形式では丸ノ内線用300形のブレーキシステムに自動空気ブレーキの機能を追加したもので、非常時に他社車両との併結をした場合に貫通ブレーキとして使用できることを考慮したものとして、「HSC-D形」と称する。改正により義務付けられた保安ブレーキ1977年(昭和52年)12月から全車に設置された。

集電装置には営団地下鉄が新たに開発した剛体架線対応形PT44A形パンタグラフが採用された。1959年(昭和34年)4月に丸ノ内線新大塚 - 茗荷谷間に剛体架線を仮設し、国鉄用のPS-16形パンタグラフを改造して各種試験を実施し、改良したものが採用された[14]

補助電源装置としての電動発電機(MG)は低圧電源、蛍光灯用として5kVA出力(MG1)を、軸流送風機用として2kVA(MG2)を搭載した[15]。そのほかにATC電源用として0.3kVA(MG3)の計3機種を搭載した[15]。ただし、8次車からは9kVAを1台として蛍光灯、送風機、低圧電源用として集約し、ATC電源用には新たにインバータを採用した。

空気圧縮機(CP)は当初レシプロ式のC-2000形だが、4次車からはロータリー式のAR-2形が採用された。9次車はレシプロ式で千代田線6000系初期車と同形のレシプロ式C-2000M形に変更された。後述するが、電動発電機や空気圧縮機は後年に交換が実施された車両もある。

台車銀座線用の2000形で採用したベローズ形空気ばねを使用したもので、乗り心地の向上を図った[注 3]

1・2次車ではアルストムリンク式(リンク支持とウィングばね支持を組み合わせた方式)軸箱支持構造のFS336形台車で、まくらばねにベローズ形空気ばねを使用し、車体直結式として空気ばねの横剛性を揺れ枕機構として利用したものである[13]。3次車からは外吊り揺れ枕方式としたミンデンドイツ式(両板ばね式)のFS348台車を採用した[13]。特にこの方式はFS336形よりもゴム等の部品の使用がなく、保守性の向上が図られている[13]

なお、これらの台車は経年による亀裂や制作上の欠陥が明らかとなったので、FS336形台車は1976年(昭和51年)から台車枠の交換を実施した[4] 。FS348形台車は1981年(昭和56年)12月からSUミンデン式台車FS510形台車へ更新されている。これは台車枠、軸ばね、軸箱周り、板ばねを新製し、空気ばねなど一部部品を再利用してU形ゴムパッド付き片板ばね式軸箱方式(SU形ミンデン式)に更新したものである。

基礎ブレーキは保守性の向上や部品点数の削減を目的にシングル方式のセミユニットブレーキ方式を採用した[13]


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