喘息発作
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2004年の試算で全世界に3億人の喘息患者がおり、年間255,000人が喘息で死亡している[22]。また喘息死の80%以上は低所得国から中低所得国で発生しており、今後10年間で喘息死はさらに20%増えるだろうと予測されている。喘息の有症率は1% - 18%程度と国によって報告にばらつきがあるが、多少強引にまとめると先進国で5% - 10%程度、発展途上国では1% - 4%程度である。

日本では1996年の統計で喘息の累積有症率(現症と既往の合計)は乳幼児5.1%、小児6.4%、成人3.0%(16歳から30歳では6.2%)である[23]。1960年代は小児、成人とも有症率は1%程度であったものが近年増加の傾向にあり、10年の経過で1.5倍から2倍程度増加している[24]。日本における喘息による死亡者数と人口10万人あたりの死亡率は1995年には7,253人 (5.8%)、2000年には4,473人 (3.6%)、2001年には4,014人 (3.2%)、2002年には3,771人 (3.0%)、2003年には3,701人 (2.9%)、2004年には3,283人 (2.6%) と、年々低下傾向にある(厚生労働省人口動態統計より)。死亡者の約半数は、重度の発作を軽発作だと思い適切な治療が遅れたあるいはされなかった事が原因であるといわれている。
検査
理学所見
特に、急性増悪時には、胸部聴診にて、呼気時優位に狭窄音が聴取される。狭窄音には、笛声音(wheeze「ウィーズ」, piping rale)、rhonchi等がある。急性増悪時には、呼気延長を認め、さらに、進行すると、陥没呼吸等、努力呼吸を呈するようになり、呼吸数増多(
: tachypnea)やチアノーゼを伴うこともある。最重症の急性増悪においては、意識障害や、呼吸音が減弱して喘鳴が聴取されなくなるsilent chestに至ることがあるが、極めて危険で緊急の処置を要する状態である。理学所見は気候や時間帯による影響も受ける。
気道可逆性試験
ピークフローメーターと交換用のアダプター気道閉塞の可逆性は喘息に特異性が高いが、気道閉塞の可逆性はないと考えられていた慢性閉塞性肺疾患(COPD)でも気道閉塞の可逆性が存在する症例があることが示されている。 ⇒米国胸部疾患学会の基準では、β2刺激薬吸入前後、1秒量が200ml以上かつ12%以上改善した場合、気道可逆性ありと診断する。あるいは2週間から3週間のステロイド内服・吸入前後で評価することも可能である。ただし検査時に喘息発作が起きていない場合、気道の可逆性を証明できないこともあるため自宅にピークフローメーターを持って帰ってもらい、ピークフロー値に20%以上の日内変動がみられた場合も気道可逆性ありと診断できる。
スパイロメトリー
スパイロメーターを用いた呼吸機能検査。喘息では気道の狭窄により呼気の排出速度が低下する。(FEV1.0<75%)
広域周波オシレーション法
音響スピーカーなどによる工学的な空気振動(オシレーション波)を,安静換気している被験者に伝搬させ,口腔内の気流と圧を測定する。
血液ガス分析
非発作時には異常を認めないことが多い。喘息発作時には酸素分圧は正常ないし低下、人体の防御反応として呼吸回数上昇による低酸素状態からの回復が図られるため、過呼吸を反映して二酸化炭素分圧が低下することがある。また、その反対に、気管支狭窄・閉塞が高度な場合、肺胞低換気を反映して二酸化炭素分圧はむしろ上昇する。この場合、低酸素状態を伴う場合が多い。
胸部X線写真
特に、喘息急性増悪時に肺過膨張を認めることはあるが、それ以外は、異常を認めないことが多い。喘鳴や気道狭窄をきたす他の疾患(腫瘍や肺炎慢性閉塞性肺疾患など)や鬱血性心不全の除外、無気肺気胸、縦隔気腫などの併発に留意することが重要である。
血液検査
末梢血中好酸球の増加や血清中の非特異的IgE値の上昇がみられれば、本疾患の補助診断となりうる。また、アレルゲンを調べるために、血清中のアレルゲン特異的IgE抗体の測定や、皮膚テスト(プリックテスト等)が行われる。
病理学的所見
気管支壁に好酸球浸潤と平滑筋肥大が認められる。アスピリン喘息では鼻茸など、特異的鼻粘膜所見を確認することが、有力な診断の補助となる。
専門的検査(専門的医療機関以外では施行されていない)
呼気中の一酸化窒素 (NO) 濃度は、気道炎症と相関し、非侵襲的かつ簡便に測定することが可能である。2013年より、一部の測定機器による呼気中NO濃度測定の保険適応が認められるようになったが、測定器具と試薬が高価であり保険点数では採算が取れない検査であるために、実施できる医療機関は限定される。呼気中NO濃度は、鼻炎、気道感染、喫煙などの要因によっても影響を受けることに留意すべきである。そのほか、気道炎症を評価する手法として、極めて限られたごく一部の専門施設において、呼気凝縮液中の種々のバイオマーカーの測定が施行されている。呼気凝縮液は、非侵襲的に、かつ比較的簡便に採取することが可能である。気道過敏性の亢進は、喘息の病態の根幹を成し、その評価は極めて重要である。いくつかの評価方法があるが、いずれも、被験者に気道を刺激する物質を低濃度より吸入負荷し徐々に負荷量を漸増して喘息の病態を生じさせ、1秒量や呼吸抵抗などの指標が有意に変化するまでに要した負荷総量により、気道過敏性を評価する。負荷物質として、メサコリンが選択されることが多い。日本では、主に標準法とアストグラフ法が施行されており、評価のために用いる指標等が異なる。
治療
薬物療法
抗炎症薬
経口ステロイド薬
1950年代にコルチコステロイドが精製されるとすぐに喘息の治療に用いられた経歴がある。気管支拡張薬で反応しなかった重度の喘息でも極めて有効であったが、長期にわたって全身投与を行うと多くの有害な副作用が出現するため、緊急時の短期間投与のみが行われる。例外としてはステロイド依存性喘息であり、やむをえず、長期ステロイド全身投与を行う。民間療法でステロイドの有害性を過度に強調する情報があるが、これらは吸入ステロイドをはじめとする治療ができる以前の報告である。
吸入ステロイド薬 (ICS)
喘息長期管理薬の第一選択として用いられるが、ICS/LABA合剤の一つであるBudesonide/Formoterolは発作治療薬としても使われることがある(SMART療法)。
バイオアベイラビリティ(吸収されて血流中に残り、全身に分布する量)が低い薬剤が用いられるため、全身性の副作用(高血圧、肥満、骨粗しょう症、身長の伸びの抑制など)はほとんどないと考えられている。薬物量においても、全身投与ではmg単位必要であるのに対して、吸入ではμg単位で治療が可能である。嗄声、口腔内カンジダなどの副作用は起こりえるが、吸入直後に入念なうがいをして喉と口腔内から薬剤を洗い流すことで防ぐことができる。ICSを低用量から高用量へ増量するよりも低用量ICSにLABAやLTRAあるいはLAMAを併用した方がコントロールが良くなる傾向がある。このような報告や吸入薬は全身影響が少ないこともあり、合剤が販売されるようになっている。ICS/LABA合剤として、アドエアシムビコート、ブデホル、レルベア、フルティフォーム、アテキュラがあり、ICS/LABA/LAMA合剤において、エナジア、テリルジーに気管支喘息の適応がある。気管支喘息において、これらの合剤は、リスクを上げることなく発作を減らすことが報告されている[25]吸入器には定量噴露吸入器 (pMDI) と自己吸気によるドライパウダー吸入器 (DPI) が存在する。フルタイドディスカス・ロタディスク、パルミコート・タービュヘイラー、アズマネックスツイストヘラー、アニュイティエリプタといったドライパウダー製剤、キュバール(ベクロメタゾン)、オルベスコ(シクレソニド)、フルタイド・エアーといったガス噴霧製剤(エアロゾル)がある。


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