商行為
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日本商法では、商法の適用を受けるべき主体であるところの商人会社船舶を定義する際に商行為概念が用いられている。すなわち自らを権利義務の帰属主体として商行為を営業として行う者が商人であり(4条1項)、商行為を行うことを目的として航海に用いられるものが船舶である(684条)。
商行為の特則

ある行為が商行為であるかどうかが争われる理由は様々あるが、頻繁に登場するのは商事法定利率や商事時効の規定が適用されるか否かを争う事例である。
一般の特則

商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、連帯債務になり、保証したときは、連帯保証となる(511条)。

商人がその営業の範囲内において商人でない他人のために商行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる(512条)。

民法上の法定利率が年5パーセントであるのに対して商事法定利率は年6パーセントであるため(514条)、利息を請求するものにとっては商行為である方が、つまり商法の適用がある方が有利である。また商行為によって発生した債権は民法上の原則である10年よりも短い5年で消滅時効にかかるため(522条)、当事者の利害に重要な差をもたらす。
当事者の一方が商人の場合

商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす(509条)。
当事者の双方が商人の場合

商人間の留置権(521条)
商行為の分類日本商法典における商行為規定の構造

商行為はそれを行った者について商法を適用するための概念であり、日本商法においては様々に分類されている。まず501条および502条に商行為であるとされる行為が列挙されている。

絶対的商行為商行為のうち501条に列挙され、たとえそれを行ったのが一回限りであったとしても商法が適用される行為。

相対的商行為絶対的商行為に対し、行為をした者が企業としての性質をもっている場合にだけ商行為とされ、商法の適用を受ける行為。相対的商行為は、502条に列挙された営業的商行為と、503条に規定された附属的商行為に分類される。

営業的商行為502条に列挙された行為を営業として行った場合にのみ商法の適用を受ける行為。

附属的商行為商人(会社も含まれる)が自己の企業活動のために行った場合に商法の適用を受ける行為。開業準備や運送業者がトラックを購入する行為。

また絶対的商行為と営業的商行為は、それを営業として行う者を商人として扱うのであるから、商人概念の基礎となるものである。よって両者をあわせて基本的商行為という。これに対し、商人が行うからこそ商行為とされる(商人概念から商行為概念を導いている)のが附属的商行為である。よってこれを基本的商行為と対比させる意味で補助的商行為ともいう。

また、商行為が当事者のどの範囲にまで適用されるのかに従って双方的商行為と一方的商行為に分類される。双方的商行為は当事者の双方が自らにとって商行為となるような行為をしたときにのみ商行為として商法の適用を受ける場合である。他方、一方的商行為は当事者のどちらかにとって商行為であれば当事者の双方に商法が適用される場合をいう。
絶対的商行為

絶対的商行為は、たとえ商人ではない素人が偶然に一回限りで行ったとしても商法の適用を受ける。501条に列挙されており、限定列挙である。以下にこれを列挙する。なお、番号は501条の号数に対応している。
投機購買・実行売却

投機売却・実行購買

取引所においてする取引

商業証券に関する行為

投機購買・実行売却とは、「安く買って、高く売る」ことである。その対象は動産不動産、および有価証券に限定されている。投機売却・実行購買は、まず売却する契約を結んで、その売却予定価格よりも低い値段で物品を仕入れてくることである。以上二つの行為が商行為とされるためには、行為を行う際に投機の意思がなければならない。取引所においてする取引とは金融商品取引所商品取引所などの施設で行われる取引(有価証券の売買やデリバティブ取引)のことであるが、自己の計算による有価証券の売買取引であれば(少なくとも無券面化されていない有価証券であれば)投機売買として絶対的商行為に該当するし、また、営業として他人の計算で行う取引であれば取次ぎに関する行為として営業的商行為にも該当する。商業証券に関する行為とは、商業証券上に署名することによって権利を発生、移転させる行為をいう。
営業的商行為

営業的商行為は、それを営業として行った場合にのみ商行為として扱われ、商法が適用される。502条に列挙されており、限定列挙であると考えられている。つまり、これ以外に解釈によって商行為を認めることはできないとされている。以下にこれを列挙し、必要と思われるものについては解説する。なお、番号は502条の号数に対応している。
賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為いわゆる「投機貸借」である。他者に貸し付ける意思で動産または不動産を取得ないし貸借し、これを他者に貸し付ける行為をいう。レンタカー業、レンタルCD業、不動産賃貸業などがこれに当たる。

他人のためにする製造または加工に関する行為他人から材料の提供を受け、あるいは他人の資金で材料を買い入れて、その加工や製造を行う契約をいう。クリーニング業もこれに当たる。

電気またはガスの供給に関する行為

運送に関する行為559条以下に規定がある運送業者の行為がこれに当たる。

作業または労務の請負[注釈 1]

出版、印刷または撮影に関する行為

客の来集を目的とする場屋における取引人を集める施設を設けて、これを利用させる行為をいう。ホテル、飲食店、銭湯、遊園地、病院などがこれにあたる。理髪業がこの場屋取引にはあたらないとした裁判例もあるが、それは昭和初期の理髪業が未だに髪結い的な性格を残していたことを考慮した判断であって、その後の社会情勢の変化から理髪業を場屋取引に含めることにつき異論はない。

両替その他の銀行取引銀行取引とは、銀行法にいう銀行業とは異なる概念であり、金銭などを預かる一方でそれを貸し付けるという受信行為と与信行為を一体として行っていること、すなわち転換媒介行為をいう。


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