普通名称化した名称は、商標登録が受けられない[8]。普通名称化した名称が、登録審査の誤りによって商標登録されたとしても、他人の請求によって登録が取り消され、無効にされることがある[9]。
商標登録された後に、登録商標が普通名称化した場合も、商標登録が取り消される制度を持つ国が多数である。たとえば、日本[3]、米国、EU、イギリス、ドイツ、フランスでは、商標権者の作為または不作為によって登録商標が普通名称化した場合、その登録は他人の請求によって取り消される可能性がある[10]。 普通名称には商標権の効力が及ばない[11]。したがって、登録商標が普通名称化すると、商標権の行使が不能となり、第三者による登録商標の無断使用を排除できない。 一方、登録されていない商標は商標法による保護を受けられないが、未登録商標が周知または著名である場合は、不正競争防止法による保護を受けることができ、第三者による無断使用を排除できる(不正競争防止法2条1項1号、2号、3条)。しかし、普通名称化した商標はもはや同法2条1項1号や2号の「商品等表示」の要件を満たさないので[12]、不正競争防止法による保護も受けられない。 普通名称化の防止のため、自社の商品やサービスを表示する際に商標マークや登録商標マークを付することが行われる。特に日本においては、これらの記号は法律上特定の効果を生じさせるものではないが、普通名称化を防ぐ事実上の効果を期待して使用されている[3]。 その他、世界の法令においては、辞書や百科事典などで、登録商標が普通名称であるかのような印象を与える表現がされている場合には、登録商標である旨の表示を出版社に対して請求することを認める規定が見られる。EUの欧州共同体商標規則10条、ドイツの商標法16条、スペインの商標法35条、デンマークの商標法11条などが該当する。一方、アメリカ、イギリス、フランス、日本ではこのような規定は設けられていない[13]。日本国特許庁の審議会でも検討課題として指摘されたことがある[14]。
商標権行使等の制限
普通名称化の防止
脚注^ 特許庁編『工業所有権法逐条解説』(第16版,2001年),1050頁
^ a b c d e f 商標審査基準第10版,第1三「第3条第1項第1号(商品又は役務の普通名称)」 ⇒PDF
^ a b c d 小坂準記 2020, p. 96.
^ “Ampex Corporation - ETHW
^ “Definition of heroin 。Dictionary.com
^ ⇒日本語由来のパラオ語:トリビア(パラオ豆知識)
^ 網野誠. 商標(第五版). p. P203-P204
^ 日本3条、米国2条、EU7条、イギリス3条、ドイツ8条等
^ 日本46条、米国14条、EU50条・51条、イギリス46条・47条、ドイツ49条、50条等
^ 日本第26条第1項第1号、米国第14条、EU第50条、英国第46条、ドイツ第49条、フランス第714条の6
^ 日本26条、米国33条・45条、EU12条、イギリス11条、ドイツ23条等