唐辛子
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九州の一部や長野県北部地域などでは唐辛子を「胡椒」と呼ぶことがある(「柚子胡椒」の「胡椒」も唐辛子のことである)。「外来の」という意味で南蛮胡椒、高麗胡椒とも呼ばれ、沖縄県では「コーレーグス」という方言で呼ばれる。一説には大陸(唐土)との交易で潤っていた地域では「唐枯らし」に音が通ずる「トウガラシ」の呼び名を避けたためともいわれる。また他地域で言うところの「胡椒」を、区別のため「洋胡椒」と呼ぶことがある。

英語では、産品としては「レッド・ペッパー (red pepper)」あるいは「チリ・ペッパー (chili pepper)」、植物名としては「カプシカム・ペッパー (Capsicum peppers)」と呼ばれる[17]。胡椒(コショウ科コショウ属)とは関係が無いにもかかわらずpepperと呼ばれている理由は、胡椒と同様に辛い香辛料だからである[18]

英語での一名「チリ」(chili, chile, chilli, chille)はメキシコのナワトル語での唐辛子の呼称chilliに由来する。南米西側の地名・国名「チリ (Chile)」とは語源が異なる[19]
利用緑から赤へと熟していく唐辛子の果実

胡椒と同様、料理に辛みをつけるために使われる。また、健胃薬、凍瘡・凍傷の治療、育毛など薬としても利用される。果実は緑のままでも食べることが出来る。一般に、緑色のものは青唐辛子、熟した赤いものは赤唐辛子と呼ばれる。果実を鑑賞するためのトウガラシの品種もある。
食用

生のまま食べる場合と、乾燥した後に使う場合とがある。チポトレのように燻煙してから使う場合もある。

醤油食用油泡盛などに漬け込むと、それらに辛味を与えるので通常とは違った風味の調味料とすることができる。漬かった状態の唐辛子は、取り出して刻みサラダなどに利用することもできる。

日本では1960年代には年間7000トン程度が生産され、輸出もされていた。2018年には逆に輸入品が主で、輸入量1万4000トンに対して国産はその1%程度である。市町村別では「栃木三鷹(さんたか)」を生産する栃木県大田原市がほとんどの年で首位を占めている[20]。料理に唐辛子が多く使われるようになったのは比較的最近のことである。1980年代以降、エスニック料理が浸透し、「激辛ブーム」が起こる以前には、薬味や香り付けに一味唐辛子や日本特有の七味唐辛子が少量使われる程度であり、市販のカレーも辛口の商品に関しては少数に留まっていた。今も年配の層には唐辛子の辛味を苦手とする人は多い[要出典]。

インド料理タイ料理朝鮮料理などの唐辛子が日常的に使われる地域では、小さい子供の頃から徐々に辛い味に慣らしていき、舌や胃腸を刺激に対して強くしている。一方で日常的に使う習慣のない場合は、味覚としての辛味というよりも「痛み」として認識され、敬遠される。このことからも、痛みを味覚として好むということ自体、多分に社会文化的条件付けによるものと言える。これらの国が唐辛子を積極的に摂取するのは、メキシコ西アフリカ、中国の四川省湖南省など夏に暑い地域が多く、食欲を増進し発汗を促し暑さ負けを防ぐためであると言われる。ただし、台湾沖縄など暑い季節が長いにもかかわらずさほど唐辛子を好まない地域がある一方、韓国、ブータンなどそれほど暑くない地域(韓国も大陸性の気候の影響が強く夏は暑くなるが、高温になる季節は長くはない)で唐辛子を特に好む食文化もあり、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}唐辛子の嗜好は単なる気候的要因ではなく文化的要因によるものが強いことがうかがえる[要出典]。
葉唐辛子の佃煮

フィリピンや中国などアジア圏では葉(葉唐辛子)を青菜と同様に炒めて食べたり、汁物の実としたりすることもある。日本でも葉唐辛子を炒めて食べたり、佃煮にしたりすることもある。
栄養価

ごく少量含まれる辛み成分のカプサイシンには、唾液分泌量を増やして食欲を増進する効果がある[21]ほか、末梢の血管を拡張させて血流量を増やして体を温める効果、副腎ホルモンの一つエピネフリン(別名:アドレナリン)の分泌量を増やして脂肪の燃焼効率を高める効果などがあり、さまざまな機能性が注目されている[22]。またカプサイシンが食事の食塩の使用量を減らしても物足りなさ感じることがなくなり満足感を得やすいので、食塩摂取量を減少する効果が得られる[22]

カロテン(体内でビタミンAに変化)とビタミンCが豊富なことから、夏バテの防止に効果が高く[要出典]、特に暑い地域で多く使われている。除虫の効果もあり、食物の保存に利用されたりすることもあるが、サルモネラ菌大腸菌などの食中毒の原因菌を殺菌する作用は無く[23]食中毒を防ぐことはできない。

旨味成分であるグルタミン酸も多く含まれている。[要出典]
長寿命化

ハーバード大学公衆衛生学部の研究によると、唐辛子をほぼ毎日食べた人は、死亡のリスクが14%低いことがわかった。研究著者のLu Qiによると、他の研究からのいくつかの証拠は、カプサイシンなどの唐辛子の生物活性成分が「悪玉」コレステロールトリグリセリドを低下させ、炎症を改善する可能性があることを示唆している[24]
悪影響

唐辛子を多く摂る国は胃癌食道癌の発癌率が高いといわれている。唐辛子の過剰摂取と発癌の関連性が指摘されている[25][26][27][28][29]が、国際がん研究機関 (IARC) による発がん性の可能性がある物質とは認められていないため、カプサイシン単体が発癌性をもつわけではない。詳細は「IARC発がん性リスク一覧」を参照

高い発癌率は、トウガラシの貯蔵中に発生するカビが生産するカビ毒が原因と考えられている[30]
食品以外の利用唐辛子の厄除け

蕃椒 - 唐辛子の生薬名を蕃椒(ばんしょう)という。健胃、発汗作用などがある。また外用薬として温湿布などに使われるが、カプサイシンの外用に末梢血管を拡張する効果は無い[要検証ノート]。温かみを感じるのは、カプサイシンが、痛覚、高温などのセンサーであるTRPV1を刺激することで起こる、擬似的なものである。寒冷地では靴の中に入れてしもやけや凍傷の予防として使う民間療法がある。

トウガラシチンキ(医薬品)

猛獣や暴徒などに対する自衛手段として用いられるトウガラシスプレー

農作物を獣害から守るために農地の外周に植えられることがある。イノシシサルの採食試験では、トウガラシを食べないわけではないが嗜好性が低い。特にタカノツメは嫌がる[31]

園芸では他の作物と共に植えて虫害を減らす目的で栽培される。[要出典]

米櫃内の虫避けとして乾燥唐辛子が使用される。

入浴剤

乾燥させた唐辛子は、室内外の装飾にも使われる。

羽黒山修験道では、唐辛子を燻し、その煙に耐える修行があった。また、特高警察などで拷問にも使われたという。昭和初期の連続殺人事件一方井事件(岩手県)では、容疑者を逆さ吊りにし、その下でなんばん(唐辛子)を燻して自白を迫ったという目撃談があったとされる[32]


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