哺乳類
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単孔目は現存するが、これは卵生であることや総排出腔をもつことなどほかの哺乳類とは大きく異なる構造を持ち、もっとも原始的な哺乳類の形をとどめているとされる。

酸素濃度35%のペルム紀以降は、リグニンの分解能を獲得した菌類による木材の分解により酸素濃度が徐々に低下し、ジュラ紀後期の2億年前には酸素濃度は12%まで低下した。気嚢は、横隔膜方式よりも効率的に酸素を摂取できる機能がある。低酸素下でもその機能を維持できる気嚢を有した一部の双弓類(爬虫類)は繁栄することができた。一方で哺乳類の祖先である単弓類は低酸素環境下でその種の大部分が絶滅することとなった[9]。哺乳類の肺機能は、酸素分圧0.1気圧以下で呼吸困難になり、酸素分圧0.8気圧以上で肺の組織が酸化される[10]

恐竜の全盛時代であるジュラ紀、白亜紀の哺乳類はネズミほどの大きさのものが多かった。しかし進化が停滞していたわけではない。白亜紀前期には、それまでの有袋類から分岐してすでに有胎盤類が登場している。また、中国から発見された大型の哺乳類の化石から未消化の恐竜の子供が見つかっている。これは、レペノマムスやデルタデリジウムのように哺乳類が恐竜を捕食していた例もあったことを意味している。

恐竜を含む主竜類が繁栄を極めた時代には、哺乳類は、夜の世界など主竜類の活動が及ばない時間・場所などのニッチに生活していた。魚類両生類爬虫類鳥類には4タイプの錐体細胞を持つものが多い。現在、鳥類などに比して哺乳類の視覚が全般的に劣っているのも、この長い夜行生活を経て大部分の哺乳類の視覚が2色型色覚に退化したためと考えられている[11]。約6400万年前、鳥類とワニ類を除く主竜類が絶滅し、次の新生代では、その空白を埋めるように哺乳類は爆発的に放散進化し、多種多様な種が現れて地上でもっとも繁栄した種となった。

現在では地中や水中などを含め、地球上のほとんどの環境に、哺乳類が生息している。
分類体系

有羊膜類 Amniota

竜弓類 Sauropsida

爬虫類 Reptilia

双弓類 Diapsida → 恐竜・翼竜等、及び現生の爬虫類・鳥類へ



単弓類 Synapsida

盤竜類 Pelycosauria

真盤竜亜目 Eupelycosauria

カセア亜目 Caseasauria


獣弓類 Therapsida

異歯類 Anomodontia

獣歯類 Theriodontia

キノドン類 Cynodontia

哺乳形類 Mammaliaformes

モルガヌコドン目 Morganucodonta

梁歯目 Docodonta

哺乳類 Mammalia






┌────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────┘

哺乳類 Mammalia

原獣亜綱 Prototheria / Australosphenida

単孔目 Monotremata(現生:カモノハシハリモグラ


獣形類 Theriiformes

異獣亜綱 Allotheria

多丘歯目 Multituberculata


三錐歯目(正三錐歯目 / 三丘歯目) Triconodonta (Eutriconodonta)

全獣類 Holotheria

相称歯目 Symmetrodonta

ザテリア類 Zatheria

†ペラムス科 Peramuridae

獣亜綱(真獣亜綱) Theria

†パッポーテリウム科 Pappotheriidae

後獣類 Metatheria

有袋類 Marsupialia(現生:カンガルーコアラなど)


真獣類 Eutheria

有胎盤類 Placentalia(現生:大部分の現生哺乳類)






※単弓類の系統は哺乳類以外は全て絶滅した。

※哺乳類は、従来は後述する顎関節の特徴で定義されてきた。しかし近年、中間的な化石が出現するなどこの定義が適用できない場合が増えたため、現生種を含む最も小さい単系統となるよう、系統学的に厳密に再定義することが多くなった。これにより、梁歯目モルガヌコドン目などの原始的なものが哺乳類から外れることになる。それらを含めた従来の広い意味での哺乳類を、哺乳形類という。
形態的・生態的な特徴子供に乳を与えるウシ。授乳は哺乳類の特徴の一つであり、名前の由来である。
軟組織の特徴

これらは化石では確認しにくいが、近年では少しずつ研究が進められている[12]
乳房
保育行動(授乳)に用いる器官。汗腺が分化した乳腺が集合し発達したもの。乳房乳頭内部にある乳腺と乳管で成り立つ。イノシシやネズミなど多産種では多対を、ヒトゾウのような少産種では1対のみを発達させる。単孔類は持たない。通常出産するとの分泌が開始されるが、他の個体が産んだ子を相手に母性本能が刺激されて乳を分泌する場合もある[13]単孔類では乳房・乳頭はなく乳腺からにじみ出た乳を子が舐め取る。
口唇(口輪筋)(頬筋)
上記の乳頭に吸い付くため口の周りにある柔らかい器官。単孔類は持たない。類では二次的に退化したと思われている。
体毛
体表を覆う体毛を持つ動物のうち、皮膚角質層に由来するものを持つのは哺乳類のみである[14]。さらにこれが発達して厚くなると、、またはヤマアラシセンザンコウのトゲやウロコとなる[14]。体毛は体温の発散を防ぐ他に、保護色や触覚の役割を持ったり、ディスプレイにも使われたりする[14]クジラ類では、ハクジラ類が、胎児期にのみ、頭部の一部にわずかな毛をもつ。参考までに、爬虫類は体毛をもたず、鳥類では羽毛が体表を覆う。
横隔膜
肋骨と共同して肺呼吸を可能にする横隔膜をもち、これが胸腔腹腔とを分けている(他の動物群にない特徴)。
心臓
心臓に2心房2心室をもつ。また、血液の体循環左大動脈弓のみによる。
血液
赤血球は循環系では無核で、その形は円盤状である(ラクダ類では楕円状)。
共通の特徴であるかのように誤解されていること

次の特徴は「哺乳類の特徴」と言われることがあるが、正しくは、あくまで一部の系統の特徴である。
「胎生」
獣亜綱は、胎生であるが、原獣亜綱など(現生種はカモノハシ目の3属5種のみ)は例外的に卵生である。
「胎盤」
有胎盤類は体内の胎盤で子を育てて出産するが、(哺乳類の3つの系統のひとつの後獣目は)有袋類で体外部の育児嚢で子を育てる。

哺乳類の平均体温[15]動物名平均体温
()
ブタ39.0
ヤギ39.0
ヒツジ39.0
ウサギ39.5
ウシ38.5
イヌ38.5
ネコ38.5
ウマ37.5
ヒト36.0
(参考)ニワトリ42.0


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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