哺乳類
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なお、この3つの系統はパンゲア大陸の分裂と密接に関係している事が強く示唆されており[48][49]、実際パンゲア大陸の分裂により誕生したアフリカ大陸南アメリカ大陸ローラシア大陸に対応する地域にアフリカ獣類、異節類、北方獣類がそれぞれ分布する[48]

しかしこれらの大陸の分裂の順番と年代は、分子系統解析が明らかにするアフリカ獣類、異節類、北方獣類の分岐の順番と年代とは異なっている[48]。まず順番に関して言えば分子系統解析はこれら3つの系統がほぼ同時期に分岐した事を示唆する[48]

また時期に関しても、アフリカ大陸と南アメリカ大陸の分岐の時期がおよそ1億500万年前だとされているのに対し[48]、これら3系統の分岐はおよそ8800?9000万年前と推定されており[31]、両者の年代は大きく異なっている。もちろん分子系統解析は(分岐が何世代前に起こったかはある程度推測できるものの)分岐が起こった年代を直接推定できるわけではなく、年代の推定には仮定をいくつも重ねなければならないという事情はあるが、2010年以降の研究は大陸の分裂よりも3系統の分岐のほうがはっきりと後に起こったとする傾向がある[48]

こうした差がある原因は、大陸は分裂後も距離的に近くにあった為、しばらくは動物相の交流が可能であった為と考えられる[48]。実際、陸地が分裂状態にあっても海を渡った漂流が居住地域を拡大したと考えられる例は(パンゲア大陸の分裂以外で)いくつか存在し[48]、このような推定を傍証する[48]

なお上記3系統はほぼ同時期に分岐したので[31]、これらのうちどれが最初に分岐したのかに関する合意は2017年現在存在しない[50][47]。すなわち、下記の3つのいずれの分類が正しいのか決着がついていない[50][47]
北方真獣類 + アトラントゲナータ(「大西洋で生じた分化」[51]あるいは「大西洋類」の意[52]:異節類+アフリカ獣類)

アフリカ獣類 + エクサフロプラセンタリア(英語版)(「アフリカ獣類以外の有胎盤類」の意[53]:異節類+北方真獣類)

異節類 + エピテリア(「上獣類」の意[54]:アフリカ獣類+北方真獣類)

形態学的な研究はかなりの部分3.を支持するものの[47]、ほとんどの分子系統解析は1.か2.を支持する[47]

決着がつかない原因は、(おそらくはパンゲア大陸ゴンドワナ大陸の分裂に伴う連続的で急速な発散によって)上記3系統の遺伝子があまりに大きくかけ離れているため分子系統解析で3系統の関係を探るのが容易ではないからである[50]
アフリカ獣類

アフリカ獣類に属する系統群は、海へ進出した海獣類を除き、2000万年前まで遡るとアフリカ大陸、マダガスカル、アラビア半島といったアフリカ周辺に限られるため[31]、その名がつけられた[31]。アフリカ獣類は大きく2つの系統に分かれており[31]、それぞれアフリカ食虫類、近蹄類と呼ばれる。
北方真獣類

北方真獣類は

北方真獣類

真主齧類

ローラシア獣類



のように分岐するが[55][47]、真主齧類内部の分岐、およびローラシア獣類内部の分岐は2017年現在未確定な部分が多い[55][47]
真主齧類

真主齧類はグリレス類(Glires、ネズミ目、ウサギ目)と真主獣類(Euarchonta、霊長目、齧歯目、ヒヨケザル目、ツパイ目)に系統分類できるとされるものの、真主齧類内の目の系統関係は2013年現在曖昧なままである[56]。特にツパイ目の位置づけの決定は2017年現在でも難しい[47]。ツパイ目が霊長目やヒヨケザル目の姉妹群となる研究成果がある一方[57][58]、グリレス類の姉妹群とする成果[59][60]や、真主齧類で最も祖先的だとする成果[58][59]もあり、後者2つのいずれかが正しいとすれば、真主獣類という系統は否定されることになる。

なお歴史的には真主齧類に翼手目を加えたものを「主齧類」と呼んでいたが[31]、分子系統解析により翼手目は別系統であることが分かったので、主齧類から翼手目を除いたものを「真主齧類」と名付けた[31]
ローラシア獣類

ローラシア獣類内の目の系統関係の確立は難しく[55]、2017年現在確立されているのは、真無盲腸目が最も早期に分岐したことと、食肉目と鱗甲目が姉妹群であることだけである[55][47]。ローラシア獣類内における奇蹄目の位置づけの決定は特に難しい[47]

なお、翼手目、奇蹄目、鱗甲目、食肉目の4つを総称してペガサス野獣類と呼ぶ事がレトロトランスポゾンの解析から提案されたが、その後の分子系統解析の研究[61][62][63][64][65]で否定されている。
有袋類

有袋類は系統樹に挙げた7つの目からなっており[66]、20世紀にはこれら7つを

オーストラリア有袋類(Australidelphia。ミクロビオテリウム目フクロネコ目バンディクート目双前歯目フクロモグラ目の5つ)

アメリカ有袋類 (Ameridelphia。オポッサム目ケノレステス目の2つ)

の2つに分類していたが[66]、21世紀における分子系統解析の研究はこの2つの分類を否定している[66]

なお上では南米に住むはずのミクロビオテリウム目を形態学的特徴の類似性によりオーストラリア有袋類に分類しているが[66][67]、この事自身は分子系統解析においても支持されており[67]ミクロビオテリウム目はオーストラリア有袋類の他の4つの目の姉妹群である[67]

一方、ミクロビオテリウム目以外の4つのオーストラリア有袋類の関係性は2015年現在未確定である[67]

化石の形態学的な解析によるとオポッサム目は他の有袋類全ての姉妹群であるが[68]、一方で分子系統解析によればケノレステス目が他の有袋類全ての姉妹群であるという研究成果が複数ある[68]


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