哲学コンサルティングは、実践的哲学における現代的なムーブメントであり、しばしば哲学プラクティス、哲学カウンセリング、臨床哲学とも呼ばれる。歴史的には、ドイツ人哲学者のG. B. アーヘンバッハ[13]とオランダ人哲学者のアド・ホーヘンダイク[14]が1980年代に哲学コンサルタントとしての地位を確立し、世界的な展開を導いた。アーヘンバッハは、1981年、自身のクリニックで「哲学カウンセリング」を開業し[15]、1982年には、世界で最も古い哲学カウンセリングと実践の協会である「ドイツ哲学プラクティス・カウンセリング協会(German Society for Philosophical Practice and Counseling)」を設立した。
哲学コンサルティングは、個人のカウンセリングだけでなく、ビジネスコンサルティングにも応用されるようになり、欧州では、1999年にオランダで設立されたニュー・トリヴュウム(The New Trivium)が、「ソクラティック・ダイアログ」などの哲学的対話法を用いたコンサルティングやコーチングを産業界や医療・教育・政府機関・オランダ王室などの幅広い分野のクライアントに行っている[16][17]。ドイツでも、1991年設立以来、プロイェクト・フィロゾフィ(Projekt Philosophie)が企業やチーム、個人に対して、価値観にもとづくリーダーシップや異文化間マネジメントなど、哲学的なコンサルティングを提供している[18]。
米国では、1998年にニューヨーク市立大学教授のL. マリノフが設立したアメリカ哲学プラクティス協会が「哲学プラクティショナー」を認定しており、数百人の哲学カウンセラーや哲学コンサルタントが活動している[19]。
21世紀に入り、GoogleやAppleといった大手テクノロジー企業で哲学コンサルティングが導入されるようになり、哲学者が企業にフルタイムで雇用されるなど、新たな展開が生まれた[20]。
アジアでは、哲学の博士号をもつ吉田幸司が2017年に日本で最初の哲学コンサルティング会社としてクロス・フィロソフィーズを設立している[2][21]。インドでは、パンジャブ大学哲学科とケララ大学で哲学カウンセリングのアカデミックコースが提供されている。2021年には、バングラデシュでも哲学カウンセリングに関する動きが始まった。
出典^ a b iXキャリアコンパス (2020年7月11日). “ビジネスと哲学の時代到来。グーグル、アップル、フェイスブックも哲学者を雇う理由