命令_(法規)
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これは、官制による一般的な委任と異なり、特別の事項を指定してこれを定める権能を委任する場合である[6]。これを、行政官庁の「委任命令」という[6]
行政官庁の職権命令

行政官庁の職権命令について、官制は、ある行政官庁がその主任事務について職権によって命令を発することができる旨を定めるにとどまっており、命令をもっていかなる事項を規定しうるかを明言していない[8]。しかし、行政官庁の職権命令が規定できる事項は、憲法9条による命令の範囲にとどまると解さなければならない[9]。なぜなら、憲法は、9条による命令についてのみ、「命令ヲ發シ又ハ發セシム」と規定しており、その他のいわゆる大権事項に関する命令については、憲法は、一般的な委任を予想した規定を設けていないからである[9]。したがって、いわゆる大権事項については、特別の委任がある場合にのみ、行政官庁の命令をもって定めることができるというべきであり、一般的な委任には包含されていると解すべきではない[9]。それゆえ、行政官庁の職権命令で定めることができる範囲は、執行命令、警察命令及び行政命令の3種類にとどまる[9]。ただし、行政官庁の命令は、法律、勅令及び上級官庁の命令のもとにその効力を有するものであるため、これらに抵触することはできない[9]。また、これらの占領区域を侵すこともできず、それ以外において、この3種類の事項について命令を発することが認められているだけである[9]

執行命令は、法律を執行するための命令のほか、勅令又は上級官庁の命令を執行するための命令をも包含する[9]。法律を執行するための命令は、通常は、勅令をもって定められるが、勅令のもとにおいて、さらにその細則を定めることは、主務官庁の職権をもってすることができる[9]。例えば、衆議院選挙法の執行命令として、勅令による選挙法施行令の定めがあるほか、そのもとにおいて、さらに、内務省令による選挙法施行規則が定められている[9]

警察命令は、警察権を与えられた各行政官庁が、その主任事務に関して発することができる[10]。警察命令に付することができる罰則は、閣令及び省令については100円以内の罰金若しくは科料又は3月以下の懲役、禁錮若しくは拘留であり、庁令及び府県令については50円以内の罰金若しくは拘留又は科料を限度としている[11][12]

行政命令は、行政官庁が管理する事業又は公物についてこれを定める権能を有する[12]。法規の性質を有しないものであるため、必ずしも特に命令を発することができる旨の明文があることを要せず、営造物又は公物の管理権を有する官庁は、当然に行政命令を定める権限を有する[12]
行政官庁の委任命令

行政官庁の委任命令とは、特別の事項についての委任に基づき発する命令をいう[12]

法律に基づく場合は、法律が特定の官庁を指定してこれを委任するときにはその指定された官庁が委任命令を定め、法律が機関を指定せずに単に命令をもって定めるとしたときにはその事務を担当する主任大臣又は地方官庁が委任命令を定めることができる[12]

勅令に基づく場合もまた、自ら規定すべき特定の事項について、これを行政官庁に委任することができる[12]

上級官庁は、必ずしも自己の権限を下級官庁に委任できるものではないが、その委任が許される限度においては、下級官庁に対し、特定の事項についての定めを委任することができ、その委任に基づいて、下級官庁がこれを定める権能を取得する[12]
日本国憲法下における命令

大日本帝国憲法下では天皇に幅広い命令制定権があったが、日本国憲法下においては、前述の分類のうち独立命令と緊急命令は認められず、執行命令と委任命令しか認められないと解されている。

すなわち、内閣の政令制定権を規定した日本国憲法第73条6号本文は「この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること」という表現を採っているところ、「実施するため」の文言は上記の執行命令や委任命令を定めることを含む趣旨であるほか、「憲法及び法律」は一体として理解すべきであり、立法権が国会に帰属していること(憲法41条)からも憲法を直接実施するのは国会の権限であると解されることに基づく。ただし、栄典の授与に関し、日本の内閣は法律ではなく政令に基づき行えるものとして扱っており、栄典について定めた太政官布告や勅令を政令により改正している。この点については、栄典の授与は法律事項であるとして、法律の委任に基づかない以上違憲ではないかとの疑義が、憲法学者から出されている。

なお、憲法上は委任命令が許されているとはいっても、立法権は国会に帰属することから、立法権を放棄するような白紙的な委任は認められず、基本的な事項は法律で定められなければならないと一般に考えられている。

日本における制定主体による分類については、法令を参照すること。
行政手続法上の命令等

行政手続法において、「命令等」とは、内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう(同法2条)。命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見・情報の提出先及び意見提出期間を定めて広く一般の意見を求る意見公募手続を行わなければ成らない(同法39条)。

法律に基づく命令又は規則

審査基準

申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。


処分基準

不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。


行政指導指針

同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう。


脚注[脚注の使い方]
注釈
出典^ a b c 美濃部 1932, p. 507.
^ 美濃部 1932, pp. 507?508.
^ a b 美濃部 1932, p. 508.
^ 美濃部 1932, p. 509.
^ a b c d e f 美濃部 1932, p. 510.
^ a b c d e f g h i j 美濃部 1932, p. 542.
^ 美濃部 1932, p. 511.
^ 美濃部 1932, pp. 542?543.
^ a b c d e f g h i 美濃部 1932, p. 543.


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