診断には、以下のような臨床的評価が必要である。胸骨擦過(sternal rub)。胸骨を握りこぶしでグリグリして痛み刺激を与え、意識の有無を確認している 現場が安全であると判断した後、患者に近づき、会話を試みる。患者が言葉で応答すれば、少なくとも気道は不完全ながらも確保されており、患者は呼吸している(したがって、現在呼吸停止状態ではない)ことが確認される。患者が無反応の場合は、呼吸が機能していることを示す胸郭の上下動を確認する。胸骨擦過(写真参照)は、反応性をさらに評価するために行われることもある。初期評価では、頚動脈(英語版
初期評価
上気道を清掃し、開存させる(気道確保)マギル鉗子
呼吸停止の原因を特定するための最初のステップは、正しい頭頸部の位置で上気道を確保し、開放することである。救助者は、外耳道が胸骨と同じ平面にくるまで患者の頸部を伸ばし、高くする必要がある。顔は天井方向に向けている方が良い。下顎を持ち上げ、下顎骨を上方に押し上げることで、下顎を上方で保持する必要がある。これらのステップは、それぞれ頭部後屈、顎先挙上ないしは下顎挙上と呼ばれる[15]。頸部や脊椎の損傷が疑われる場合は、神経系にさらなる損傷が生じる可能性があるため、この操作を行ってはならない[15]。頸椎は、可能であれば、医療従事者によって頭部と頸部を用手的に、または頚椎カラーの装着によって安定化させる必要がある[16]。頚椎カラーを使用すると、気道確保が難しくなり、頭蓋内圧が上昇する可能性があるため、用手的な頚椎安定化のほうが望ましい[17]。異物が検出された場合、施術者は口腔咽頭を指で掃引し、吸引することで異物を取り除くことができる。異物は、患者の体のさらに奥に留まらせないことが重要である。患者の体内により深く留まった異物は、マギル鉗子または吸引で取り除くことができる。また、ハイムリック法も異物を取り除くのに有効な場合がある。ハイムリック法は、気道が開通するまで上腹部を手で突き上げるものである。意識のある成人の場合、施術者は患者の背後に立ち、腕を患者の腹部に回す。片方の拳を握り、もう片方の手でその拳をつかむ。両手を合わせ、両腕で引き上げるようにして、内側から上に突き上げる[18]。 治療は、呼吸停止の原因によって異なる。多くの場合、代替気道の確保と人工呼吸が必要であり、人工呼吸器のモードも治療の内容に含まれる。気道の確保と呼吸補助には多くの方法がある。以下の一覧には、いくつかの選択肢が含まれている。 オピオイドの過剰摂取は、2016年から2017年にかけて米国で死亡率が12%増加し、依然として主要な死因となっている[19]。呼吸停止に至る過剰摂取の場合、2015年の米国心臓協会(AHA)のガイドラインによると、推奨される治療は、0.04?0.4 mgの初期用量で筋肉内または鼻腔内にナロキソンを投与することである。初回投与が効果的でない場合は、2 mgまで投与を繰り返すことができる。オピオイド依存症患者では、ナロキソンの投与が重度のオピオイド離脱を引き起こす可能性があるため、特別な配慮が必要であり、そのため、上記の開始用量が推奨されている[20]。ナロキソン治療の目標は、患者の自発呼吸を回復させることであるが、初期蘇生時には機械換気が必要な場合がある。バッグバルブマスク (AmbuTM) バッグバルブマスク換気中の抵抗(換気圧上昇)は、気道を閉塞している異物の存在を示唆している可能性があり、呼吸停止の診断ツールや治療法として一般的に認識されている。バッグバルブマスクは、自己膨張式のバッグと、顔面に装着するソフトマスクを備えた装置である。バッグを酸素供給装置に接続すると、患者には60?100%の吸入酸素を投与できる。バッグバルブマスクの目的は、一時的に十分な換気を行い、自力の気道制御能力回復を待つことである。しかし、バッグバルブマスクを5分以上装着したままにしておくと、胃の中に空気が入ってしまうことがある。その時は、経鼻胃管を挿入して溜まった空気を抜く必要がある。その際、バッグバルブマスクの位置や操作に注意し、気道を確保することが必要である。バッグバルブマスクを使用して換気する際に十分な密閉性を確保するために、通常、「ECクランプ法」が用いられる。医療従事者は、親指と人差し指をマスクの上に「C」の形に置き、残りの3本の指でマスクの下の顎を掴んで「E」の形にする(本稿冒頭の写真参照)。親指と人差し指でマスクを下方向に押さえ、残りの指は頭を後傾させ、下顎を上方に引き上げる力を維持する。Cの指は下方向、Eの指は上方向に力をかけることになる。空いている方の手で、バッグを使った換気を行うことができる[21]。小児の場合、小児用バッグを使用する。小児用バッグには、最大気道内圧を35?40 cmH2O程度に制限するバルブがある。低換気や過換気を避けるため、医師は患者一人ひとりを正確に判断してバルブの設定や換気の圧力を微調整する必要がある[22]。
治療
オピオイド過剰摂取
バッグバルブマスク換気
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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