著作権は制作局ではなく映画会社に帰属するため、権利を取得すれば他局での放送やソフト化などの二次利用は可能である[13]。当初は契約期間終了後に他局で放送された際に二次使用料が支払われることはなかったため、声優運動に発展し、日本俳優連合外画・動画部会が生まれるきっかけとなった[5]。かつては局ごとに制作方針や競争意識があったことから、既に他局で吹替制作がされていても新録することや、同じ局でも音源紛失やクオリティを上げるためなどの理由で録り直すことがあった。また、テレビ放送という都合上「面白い番組にする」ことも必要なため、台詞の変更や声優に原音とは異なる演技を要求するなど、独自の演出を加えることがある[14]。2010年代以降は映画番組枠の減少や映画番組における洋画放送が少なくなったことに加え、映画配給元から指示される場合もあり、劇場公開版など既存の吹替を流用する機会が増加している。『金曜ロードショー』のプロデューサーは2020年に、費用の関係から新規制作することが困難になっているが「その灯も絶やさないようにしていきたい」と述べている[15]。 近年、外国語映画をテレビ版で見ていた年代が、その時の吹き替えを見たいという要望が多くなったため、こういったテレビ放送版吹き替えを専門的に扱うパッケージレーベルが登場している[23]。また、レーベル化はされていないものの、一度パッケージ化されている作品にテレビ版吹き替えを収録した新パッケージを発売した物も存在する(007シリーズや『トゥルーライズ』、『ターミネーター2』など)。 アメリカ合衆国では字幕が嫌われるため、吹き替えが主流となっている[24]。吹き替え、特に日本製アニメ作品の仕事の大半は俳優の労働組合を通さないノン・ユニオン仕事であり[25]、ユニオン仕事であってもギャラが時給60ドル程度と安く[26]、再放送やビデオグラム化された際に再使用料を支払われることもないとされる[26][27][注釈 5]。労働環境の悪さや技術的な問題から[注釈 6]、吹き替えの仕事を嫌っている声優も多いとされる[26][29]。ジョニー・ヨング・ボッシュによれば2018年の時点では日本アニメのギャラがアメリカのアニメーション作品よりも高額であることもあるとされる[30]。 映画俳優組合が2003年に定めた規定では、吹き替えの仕事は3つのカテゴリーに分けられており、最低労働時間は2時間で一日の労働時間は8時間までと規定されている[31]。報酬は劇場公開用作品は時給84.75ドル。テレビ放送用作品は時給64,25ドルで、複数回出演する場合は1話ごとに21.50ドルの追加報酬が支払われる[31]。それ以外の作品は時給64.25ドルとなっている[31]。 2019年、吹き替え業界の改善を目指し吹き替え俳優連合(Coalition of Dubbing Actors、CODA)が設立された[32]。同年7月[32]、Netflix配信用作品の吹き替えが時給83ドルと規定され、2021年に87ドルに値上げされた[33]。 2022年にSAG-AFTRAの規定が改訂され、吹き替えの報酬は作品に関係なく時給87ドルと決められ、カテゴリーも劇場公開用作品とプライムタイムで放送されるテレビ番組と1500万人以上の会員数の定額制動画配信サービスがカテゴリー1とされ、ギャラの50%にあたる額を再使用料として支払う必要がある[34][35]。それ以外の作品はカテゴリー2となり、再使用料の支払いは行われない[35][34]。ノン・ユニオン作品の報酬は最低労働時間は2時間で時給125ドルが基本とされた[36][35]。 外国製コンピュータゲームの英語吹き替えの報酬は4時間で1,353ドルとなっている[35]。
機内上映版
飛行機の機内上映のためだけに制作されるもの。どの航空会社でも使用できる「マルチ版」と、航空会社自体が制作に関与し1社でしか使用されない「シングル版」に区分され[16]、近年はマルチ版が主流となっている。かつては配給ルートが通常と異なり、電通などの大手広告代理店が独自に上映権を買い付け吹替版を制作、それを航空会社に売るという形だった[17][注釈 4]。声優の若山弦蔵は機内版について1982年に「テレビ版より予算が潤沢」と語っており[19]、豪華声優陣となることも多かった[20]。1970年に行われた日本放送芸能家協会放芸協、芸能マネージャー協議会、新劇団協議会、電通の4者協議の結果、機内用音源は機内上映のみの使用に限ると規定されており[18]、上映期間が終わった音源は、契約の問題から破棄されるといわれる[21]一方で、二次利用のアテもなく航空会社の倉庫に保管されているとの情報もあり[20]、マルチ版は後にソフト収録されることがある[16]。その他、海外の会社が制作して航空会社に納品するというケースもあり、その場合は「日本語が変」なものになるという[22]。
VOD版
動画配信サービスなどビデオ・オン・デマンドなどのために制作されるもの。カットされたテレビ版しか存在しない旧作に制作されることもある。
吹き替え専門レーベル
思い出の復刻版(ユニバーサル・ピクチャーズ)
吹替の帝王(20世紀フォックス)
吹替の力(ワーナー・ブラザース)
吹替洋画劇場(ソニー・ピクチャーズ)
諸外国の場合が望まれています。 (2014年6月)