君たちはどう生きるか_(映画)
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一方、現実世界では、眞人と夏子、それに加え女中のキリコも一斉に失踪してしまい、工場従業員も動員した大捜索が行われるも発見には至らずにいた。勝一がうなだれていると、ばあやの一人が塔の正体を勝一に告げる。塔は大伯父がはじめから造ったわけではなく、明治維新の少し前に、池に謎の飛翔物が落ちて出現した石の塔であり、その20年後に大伯父が森の中で発見し、石の周りを建物で隠したという[13]。また、生前のヒサコが屋敷で神隠しにあったことがあったが、その1年後には同じ姿で、失踪時の記憶を失ったまま、元気な様子で帰ってきたエピソードも勝一に話す。それを聞いた勝一は、すぐに刀を身につけ、捜索道具を衣服に押し込み、屋敷を出て塔の方へと向かっていた。
少年と青サギ、夏子を探す旅

「下の世界」で夏子を探す旅に出た眞人と青サギであったが、その道中で眞人は青サギの飛行能力を取り戻すために、枝を削って嘴の穴にあてがって塞いでやる。青サギは、夏子がいる塔に行くためには鍛冶屋の小屋を通らなければならないと眞人に言うが、すでに小屋は人を食うといわれる獰猛な人間大のインコの集団に占拠されていた。青サギがとなってインコたちを引き付けている間に小屋の扉を開けて入ろうとする眞人だったが、中はほかのインコたちで溢れていた。待ち構えていたピンクのインコに「お待ちしておりました」と告げられ、奥へと案内される。そこで眞人はインコたちに囲まれ、あと一歩で殺されそうになるが、突如上がった炎の中から現れたヒミが周りのインコたちを焼き払う。ヒミのワープする力を使って二人はヒミの家へ移動、一緒に食事を済ませると、そこから夏子がいる石の塔へ向かう。自分の世界で見た塔と同じだと気づいた眞人に対し、ヒミはどの世界にも石の塔はつながっていると教える。夏子がいる産屋への道すがら、回廊で眞人がいた現実世界へ通じる「132」と書かれたドアを見つける。その直後、二人は回廊の前後から迫るインコ軍団に挟まれてしまい、やむを得ずドアノブを握りしめたままドアの外の現実世界へと逃げ込む。その時、目の前から捜索にきた勝一と遭遇すると、戻ろうとして再び開けたドアの隙からインコ軍団が現実世界へなだれ込む。インコは現実世界に入ると人型の巨大な姿から、普通のインコの姿になってしまい、勝一は眞人がセキセイインコになってしまったと落胆する。

混乱の隙をついて再び「下の世界」に戻った二人は夏子のいる石で囲まれた産屋までたどり着き、一人で産屋の中へ入った眞人は、夏子に一緒に元の世界へ帰ろうと訴える。しかし、石の特別な力によって眞人は産屋の外へ押し返され、気絶した眞人とヒミはインコたちに捕らえられてしまう。
大伯父との邂逅

眞人は夢の中で大伯父と邂逅し、「下の世界」の均衡は、塔の主たる大伯父が悪意を持つという石でできた積み木を積んで日々バランスをとり続けていること、そして眞人に年老いてしまった自分の後を継いでほしいことを語る。目覚めた後、インコたちの調理場で囚われの身となっていた眞人は、インコに変装した青サギに助けられる。インコたちの王であるインコ大王とその手下たちに捕まったヒミは、塔がインコであふれたためこの世界のすべてをインコのものへと帰すための取引のダシに使われ、大伯父のいる塔の上へ連れて行かれるところを、眞人と青サギは塔の外壁をよじ登って後を追っていく。外壁の窓から塔内へ侵入した眞人たちだったが、インコ大王に足場の階段をサーベルで切り落とされ[14]、二人は階段もろとも墜落してしまう。塔の上の不思議な光の通路を抜けて天界の大伯父の元に到着したインコ大王は、大伯父に眞人たちが産屋に入るという禁忌を犯したと告げると、大伯父は少し時間をもらえないかと答え、眞人に後を継がせたいのだと言う。

階段の瓦礫の中から抜け出した眞人たちも光の通路を抜けて大伯父の元へ向かうが、それを見たインコ大王があとを尾行する。天界の宮殿でヒミと再会した眞人は二人で大伯父の元へ向かう。草が生い茂る石の積木でできた丘にいる大伯父の元へたどりつくと、大伯父は「ここに13個の悪意で穢(けが)されていない石がある。3日に一つずつ積み上げて争いのない平和で美しい自分の世界を作り、世界のバランスを取ってきた自分の役目を引き継いで欲しい」と眞人に懇願する。大伯父曰く、自分の積み木はもう持たない、そして自らの血を引継ぎ、悪意のない人間しかこの仕事は出来ないとのことだった。しかし眞人は石で殴ってできた頭の傷を指して、「この傷は自分でつけました。僕の悪意の印です[15]」と言って拒否し、元の世界へ夏子と一緒に帰ることを大伯父に話す。このやり取りの様子を背後から覗いていたインコ大王が、積み木に自分たちの命運が委ねられていることに激高すると、とんでもない裏切りだと言って横から手を出し、悪意で穢されていない石をでたらめに積んでこれを叩き切る。すると、この世界の均衡を保つ積み木が崩れ、「下の世界」は崩壊を始める[11]
「下の世界」からの脱出

崩壊の始まった塔へたどり着いたキリコによって夏子は救出され、天界から脱出してきた眞人たちとも「時の回廊」で合流する。眞人は、元に戻れば火事で死んでしまう運命にあるヒミに、自分たちの時代へ一緒に来るよう訴えるが、実母ヒサコ本人であるヒミは「これからあなたのお母さんになるんだから」と明るく答えて眞人をなだめる[11]。夏子もヒミと会い、ここで別れを告げた後、眞人と夏子、青サギは現実世界へ通じる「132」のドアから、ヒミとキリコはヒミの少女時代につながるドアから、それぞれの元の世界に戻る。
現実世界への帰還

「下の世界」の崩壊により避難してきたインコたちやペリカンたちも眞人たちの現実世界に出現し、塔はすべて崩壊する。青サギに「まだ向こうのことを覚えてんですかい」と問われた眞人は、ポケットの中のキリコの人形や、大伯父のもとへ向かう際に積み木の丘で拾った石に気付く。青サギはその記憶もじきに忘れると言い[12]、眞人の前から姿を消していく。そしてキリコの人形がばあやのキリコへと変わる。

ようやく日本は終戦を迎え、眞人にも弟が出来た。終戦から2年が経って一家は疎開先から東京へ戻ることになり、玄関先で待つ一家の呼び声で、身支度を済ませた眞人は自室から出ていく。「おわり」の表記はない[14]
登場キャラクター
眞人(まひと)
声:
山時聡真[16][17]、英語版吹替:ルカ・パドヴァン[18]本作の主人公。小学6年生、11歳の少年[注釈 4]。名字は「牧」。太平洋戦争が始まった3年目に、火災で母を失い、父と共に母方の実家である屋敷へと疎開する。母を失った影響もあってか性格は寡黙で、継母となる夏子に対しても心を開かず、彼女を母ではなく「父の好きな人」と認識していた。しかし、塔の中へ姿を消した夏子を探すために「下の世界」へと赴き、旅の中で成長していく。青サギ(サギ男)に対しては得体の知れない存在として敵意を向けていたが、「下の世界」で夏子を探す内に友情が芽生え、やがて友達と認める。転校先のクラスメイトと喧嘩した後、頭の右側を自ら石で叩いたことで深い傷が残っており、眞人はこれを「悪意の印」と称している。
青サギ / サギ男
声:菅田将暉[16][19]、英語版吹替:ロバート・パティンソン[18]眞人が疎開した屋敷にいる謎のアオサギ。屋敷の人々からは「覗き屋の青サギ」と呼ばれている。人間の言葉を話し、カエルや魚の群れを操るなど、明らかに普通の鳥ではない行動を見せる。また、羽には不思議な力が宿っている。普段は青サギの姿で眞人を監視しているが、その正体は嘴の如く大きな鼻をした禿げ頭の小男[注釈 5]。嘴に穴が空くと本来の飛行能力を失う。穴に栓をすれば姿と能力は戻るが、穴を塞げるのは穴を空けた相手に限られる。「下の世界」の主である大伯父の使いとして眞人の前に現れ、彼に「母(ヒサコ)が生きている」と吹込むことで「下の世界」へ連れて行こうとする。だが自身の羽を使って作成した矢で嘴に穴を空けられてしまい、小男の姿に変化。大伯父の指示やキリコ(若い姿)の助言もあって、夏子を探す眞人に協力することとなり、その旅の中で次第に眞人との友情が芽生える。「下の世界」崩壊時は眞人や夏子と同じ扉から脱出。眞人に「下の世界」の存在やそこで体験した出来事はいずれ忘れ去られることを告げ、彼に「あばよ友達」と言い残し記憶の何処かへ飛び去った。
ヒサコ
眞人の実母。病院で火災に遭い死亡[注釈 6]。少女時代に塔で行方不明になったことがあり、1年後に失踪前と何一つ変わらない姿で戻ってきた。生前、成長した眞人のために『君たちはどう生きるか』の書籍を遺していた。
ヒミ
声:あいみょん[16][20]、英語版吹替:福原かれん[18]本作のヒロイン。火炎を操る力を持った、赤い服の少女。力が万全の時は、炎を伝って別の場所へ瞬時に移動したり、花火を放ってペリカンを追い払うことができる。眞人にバターとジャムを塗ったパンを御馳走する。その正体は、少女時代に「下の世界」へ迷い込んだ眞人の母ヒサコその人である。「下の世界」が崩壊した際は、妹の夏子に元気な赤ちゃんを産むように伝え、本来いるべき世界(失踪から1年経過した後の時代)へと帰って行った。
キリコ[注釈 7]
声:柴咲コウ[16][22][23]、英語版吹替:フローレンス・ピュー[18]屋敷に仕える「ばあや」の一人。


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