名古屋城
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2016年時点では再建にかかる総工費は500億円と試算されている[22][23]

当時、河村たかし市長は東京オリンピックが開催される2020年7月の木造復元の完成を強く主張していたが、名古屋市会の最大会派である自由民主党を中心とした市会側の反対で木造復元の関連予算案が可決出来ずにいた。しかし、市が2016年5月に行った市民2万人を対象にした木造復元に関する市民アンケートでは約6割が木造復元に賛成多数であった事から、市会の自由民主党や民進党も木造復元に賛成寄りの立場を取っていた。市と対立する市会側は河村たかし市長が目標にしていた、2020年7月の木造復元を完成させると言う計画には市民アンケートで賛成したのは約2割程度であった事も含め、市の完成時期の計画に反対し、リニア開業の2027年の木造復元完成にするべきだと主張していた。2016年6月の市会で、市は復元に向けた約10億円の補正予算案を提出したが、同委員会で「時間をかけて議論すべき話で、拙速」と主要会派が反発していた。その為、河村たかし市長は6月27日に木造復元の完成時期の2020年7月を断念し、早くても2022年の完成目標、又は愛知県・名古屋市で開催される「アジア競技大会の2026年やリニア開業の2027年に見直すことも、名古屋にとって大きな起爆剤になり得る」と語った[41]

現行天守は、耐震性の観点から入場者制限が有識者から提言されたと2016年9月に報じられ[42]、10月12日に市長は「早急に入場禁止をすることになる」と述べた[25]。市の関係部局は「さらなる調査が必要」として制限を実施するか否か不透明な状況となった[43][44]。最終的に同年12月、名古屋市は木造復元着手前に入場規制は実施しないと発表した[45]。2017年3月に木造復元に反対する日本共産党を除く自由民主党民進党公明党らの賛成多数により名古屋市会で10億円の木造復元関連予算案が可決された[46][47][40]2017年名古屋市長選挙は、木造復元に反対する弁護士の岩城正光元名古屋市副市長が立候補したが河村に大差で敗れた。

2017年5月9日に、名古屋市は優先交渉権者の竹中工務店と基本協定を締結し、2022年12月完成を目指し最大505億円の事業が開始された。工事は国の特別史跡である天守台の石垣も修理するために文化庁の許可を要するが、市は文化庁の復元検討委員会で11月から3回の審議を経て2018年10月に許可が下りると想定した。この時点の報道では、文化庁の協議が順調に進めば2018年11月から天守閣の入場を禁止し、2019年3月に外部エレベーター、9月から天守閣本体を取り壊し、2020年6月から木造復元工事に入る予定とされた[48]

障害者団体の要望により竹中工務店は当初、エレベーターが設置された木造天守案も考えていた。その案は4人乗りの小型のものを天守内部に設置する案か、11人乗りの大型のものを天守内部に設置する案、外部に設置する3つの案であった。内部に大型エレベーターを設置する案は、何十本もの柱や梁を取る必要があり忠実な復元が出来なくなる問題や、柱や梁の強度が低下し補強用に鉄骨の設置が必要な問題、木造天守の構造上3階までしか行けない問題があった。外部に大型エレベーターを取り付ける案も、景観上の好ましくない影響や、遺構を毀損しない基礎構造とするため到達階が1階に限定され、外壁に口部を設置し壁側の柱や梁を取り強度の為にやはり補強用に鉄骨の設置が必要な為、却下となった。2018年5月6日に竹中工務店は内部に4人乗りの小型エレベーターを設置する案を考えた。その案は柱と柱の四角い隙間の空間にエレベーターを設置し3階まで上がる取り外し可能なもので、エレベーターを取り外し天井部分に梁を嵌め込むと元の構造に戻ると言う。しかしその案は奥行100cm×間口80cmと狭く、一般的な車椅子がエレベーターに乗りきれない事が判明した[49]。そのため市が用意した専用の小型車椅子に乗り換える事になるが、障害者団体は乗り換えが大変だと反発しこの案は断念となった。障害者団体側は大型のエレベーターの設置を求めているが、河村たかし市長は前出の理由でエレベーター不設置の方針である。

2017年12月27日に、名古屋市は現天守への入場を2018年5月7日から2022年末の復元完成まで禁止すると正式発表した。天守以外はこれまで通り見学できる[50]。鉄筋コンクリート製復元天守公開終了間際の2018年のゴールデンウィークには、過去10年間で最多となる17万人の来場者があり、5月6日をもって予告通り一般公開は終了した[51]

木造復元に当たり、1932年から行われた天守閣と本丸御殿の大規模調査による昭和実測図の図面、戦前のガラス乾板による多数の写真資料、江戸時代1755年(宝暦5年)の地震時の修理断面図や立面図、など多くの修理図面や、江戸時代後期の名古屋城のあらゆる事を書き残した『金城温古録』など歴史文書史料も充実しており、江戸時代当時の名古屋城の姿をほぼ正確に復元する事が可能だとしている。

木造復元化工事に際し、鉄筋コンクリートの天守閣で展示、収蔵する重要文化財の旧本丸御殿障壁画、ガラス乾板写真などは西之丸に米蔵の外観の展示収蔵施設を2018年1月から1年の工事をかけ建設・整備し、展示収蔵施設の完成後は移設する[52]。その他の展示・収蔵物は名古屋城の近接地に新たな施設の建設などを検討して対応する。バリアフリー対策は障害者団体や高齢者団体の意見を聴いて決定し、手すりやスロープの設置、昇降円滑の手段、介助スタッフの配置など、ハード・ソフトの両面からの対応を検討する。2018年2月現在は、2019年9月から天守閣本体の取り壊しを開始して2019年6月頃に工事囲いを天守閣まわりに建て始める予定である。木造天守閣も、耐震性は現行の耐震基準と同等を確保し、万一火災が発生した場合も安全な避難を確保するため、防火設備や避難経路を検討する[53]

2018年5月22日、障害者らが木造復元の名古屋城天守閣にエレベーター設置をしない名古屋市の方針に対し市役所前でデモ。新技術拒否、エレベーター絶対必要を宣言した[54]。2018年6月19日にも障害者ら抗議デモ。主催者によると愛知、東京、大阪、沖縄など16都府県から500人が参加。名古屋栄の久屋大通公園から名古屋城近くの名城公園までデモ行進し「名古屋市は差別をやめろ」とシュプレヒコールを上げた。河村たかし市長はあらためて(具体化されていない)新技術導入に意欲を見せ「はるかに、いいじゃないですか。」と話した[55]

当初は2018年10月の文化庁の文化審議会で現天守の解体と木造再建の許可を得る予定だったが、市の有識者会議で承認が下りなかったため文化庁への申請ができず、河村は10月15日に2018年中の許可取得を断念することを表明した[56]。2019年の新年挨拶における記者との質疑応答で河村は、「文化庁さんとも、今なかなか行き来しとれぇへんもんで」と文化庁と十分な整合が取れていないことを認めながらも、「市民の熱い期待があるということを、私は強く文化庁には申し上げております」と理解を求めて予定通りの完成を目指すことを改めて表明した[57]。市は1月17日より合計6箇所の会場で市民への説明会を開催したが[58]、最初の会場(熱田区)では出席者から反対意見が続出した[59]


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