吉行淳之介
[Wikipedia|▼Menu]
長年にわたって週刊誌に対談コーナーを連載し「座談の名手」としても知られ、それらは『軽薄対談』『恐怖対談』などにまとめられている。またヘンリー・ミラー『愛と笑いの夜』の翻訳、井原西鶴好色一代男』の現代語訳なども手がけている。阪神タイガースのファンで、『Number』誌上で山藤章二上岡龍太郎と鼎談を行ったこともある。
人物・エピソード
女性関係

文学のテーマ同様にその人生は常に女性に彩られていた。若い頃に結婚した妻の吉行文枝との間に女児が一人いた。後に別居し、結婚後約10年後に知り合った女優の宮城まり子は生涯に渡り同居した事実上の伴侶[注釈 2][注釈 3]となったが、妻は終生離婚に応じなかった。その他にも愛人がおり、死去後に大塚英子と高山勝美が名乗り出ている。大塚が『暗室のなかで 吉行淳之介と私が隠れた深い穴』[注釈 4]で、高山が『特別な他人』[注釈 5]で、宮城が『淳之介さんのこと』[注釈 6]で、そして本妻の文枝が『淳之介の背中』[注釈 7]で、それぞれの体験を公表している。

大層女性にモテたことで知られているが、奥本大三郎は吉行を「まぎれもなく女性嫌悪思想の系譜に連なる作家である」と指摘しており、また、「女性嫌悪思想の持ち主というのは、どうしても女に無関心でいられない」のが「弱点」であるとも記している[8][9]。奥本はまた、吉行に女性読者が増加していることを称して「猟師の鉄砲に小鳥が止まったような具合」と形容している[8]フェミニスト上野千鶴子は、ミソジニー(女性嫌悪、女性蔑視)傾向の強い作家として吉行以外に永井荷風を挙げており、ミソジニーの男性には「女好き」が多いと指摘している[9]。友人の遠藤周作は時おり随筆で「吉行世之介」と書いてからかっている(「世之介」は、井原西鶴著『好色一代男』の主人公)。
家族・親族

作家・詩人の吉行エイスケは父。美容師の吉行あぐりは母。女優の吉行和子、詩人の吉行理恵は妹。生家の土建会社「株式会社吉行組」(岡山市)は、祖父の死去後、叔父が後を継いだ。淳之介自身も吉行組の無報酬重役を務めていた[10]

前述の通り本妻との間に女児が1人いるが、妹・和子及び理恵には子女がなかったため、この女児が吉行エイスケ・あぐり夫妻の唯一の孫となる。
吉行淳之介文学館吉行淳之介文学館

1999年静岡県掛川市にある、社会福祉施設ねむの木学園の敷地内に吉行淳之介文学館が開館した。
文学賞選考委員

吉行が選考委員をつとめた文学賞は以下の通り[11]。吉行は基本的に自身の創作の本道を純文学に置き、多くの文学賞で言及した選評を自ら実現・実行していた。

文学界新人賞:1966年-1970年(第22-30回)

文藝賞:1966年-1967年(第4-5回)

太宰治賞:1970年-1977年(第6-13回)

芥川賞:1972年-1993年(第66-110回)

泉鏡花文学賞:1973年-1993年(第1-21回)

川端康成文学賞:1974年-1993年(第1-20回)

谷崎潤一郎賞:1977年-1993年(第13-29回、ただし第28回は病気欠席)

群像新人文学賞:1978年-1980年(第21-23回)

野間文芸賞:1980年-1993年(第33-46回)

著書
小説

『星の降る夜の物語』作品社 1954

驟雨』(『薔薇販売人』を含む)新潮社 1954、のち『薔薇販売人』は角川文庫

『漂う部屋』河出新書 1955

原色の街』新潮社 1956、のち『原色の街』『驟雨』は新潮文庫
向島 (墨田区)赤線地帯、鳩の街が舞台(新潮文庫に入っているものは芥川賞候補になった『原色の街』と『ある脱出』を組み合わせ、加筆訂正したもの)。

『焔の中』新潮社 1956、のち中公文庫、旺文社文庫、小学館P+D BOOKS

『悪い夏』角川書店 1956、のち角川小説新書

『美女哄笑』現代文芸社 1957、のち新鋭作家叢書、『がらんどう』は中公文庫

『男と女の子』講談社 1958、のち中公文庫、集英社文庫

『二人の女』平凡出版 1959

『すれすれ』講談社 1959-60、のち角川文庫、光文社文庫

『娼婦の部屋』文藝春秋新社 1959、のち角川文庫、新潮文庫、光文社文庫

『風景の中の関係』新潮社 1960、のち『鳥獣蟲魚』は旺文社文庫

『街の底で』中央公論社 1961、のち角川文庫

『闇の中の祝祭』講談社 1961、のち光文社文庫、角川文庫、光文社文庫
妻と恋人との間で振り回される男の姿を描いた作品。当時の宮城まり子との恋愛からディテールを構成したため「女優との交際の告白」として物議を醸した。のち『春夏秋冬女は怖い』で事実だと書いている。

『コールガール』角川書店 1962、のち角川文庫

『札幌夫人』集英社 1963、のち集英社文庫

『雨か日和か』講談社 1963

『花束』中央公論社 1963、のち中公文庫

『女の決闘』桃源社 1964

『ずべ公天使』集英社 1964、のち『にせドン・ファン』は角川文庫

砂の上の植物群』文藝春秋新社 1964、のち新潮文庫

『夜の噂』朝日新聞社 1964、のち新潮文庫

『痴・香水瓶』学習研究社・芥川賞作家シリーズ 1964

『吉行淳之介短篇全集』全5巻 講談社・ロマンブックス 1965

『不意の出来事』新潮社 1965、のち『娼婦の部屋』『不意の出来事』は新潮文庫
新潮社文学賞受賞。

『技巧的生活』河出書房新社 1965、のち新潮文庫

『怪盗ねずみ小僧』講談社 1965、のち『鼠小僧次郎吉』は角川文庫

『唇と歯』東方社 1966、のち角川文庫

『星と月は天の穴』講談社 1966、のち講談社文庫、文芸文庫
芸術選奨文部大臣賞受賞。

『赤い歳月』講談社 1967

『美少女』文藝春秋 1967、のち新潮文庫

『女の動物園』毎日新聞 1968

暗室』講談社 1970、のち講談社文庫、文芸文庫
谷崎潤一郎賞受賞。

『浅い夢』毎日新聞社 1970、のち角川文庫

『小野小町』読売新聞社 1970、小説選書

『吉行淳之介全集』全8巻 講談社 1971?72

『裸の匂い』ベストセラーズ 1971、のち集英社文庫

『湿った空乾いた空』新潮社 1972、のち新潮文庫

『一見猥本風』番町書房 1973、のち角川文庫

『猫踏んじゃった』番町書房 1973、のち角川文庫

『出口・廃墟の眺め』講談社文庫 1973

『鞄の中身』講談社 1974、のち講談社文庫、文芸文庫
読売文学賞受賞。

『赤と紫』角川文庫 1974

『吉行淳之介自選作品』全5巻 潮出版社 1975

『子供の領分』番町書房 1975、のち角川文庫、集英社文庫

『童謡』出帆社 1975、のち集英社文庫

『怖ろしい場所』新潮社 1976、のち新潮文庫

『牝ライオンと豹』角川文庫 1976

『吉行淳之介エンタテインメント全集』全11巻 角川書店 1976?77

『寝台の舟』旺文社文庫 1977

『鬱の一年』角川文庫 1978

夕暮まで』新潮社 1978、のち新潮文庫
夕ぐれ族」の語源。社会現象となった。野間文芸賞受賞

『菓子祭』潮出版社、1979年、のち角川文庫、講談社文芸文庫『菓子祭|夢の車輪』

『堀部安兵衛 黒鉄ヒロシえ』集英社文庫、1980年

『百の唇』掌篇小説選、講談社、1982年

『夢の車輪 パウル・クレーと十二の幻想』掌篇小説集、文藝春秋、1983年、のち講談社文芸文庫『菓子祭|夢の車輪』

『吉行淳之介全集』全17巻 別巻3巻 講談社、1983?85年

『目玉』新潮社 1989、のち新潮文庫

『吉行淳之介全集』全15巻 新潮社 1997?98

『悩ましき土地』講談社文芸文庫 1999

『吉行淳之介娼婦小説集成』中公文庫 2014

随筆

『恋愛作法』文藝春秋新社 1958

『青春の手帖』講談社 1959

『浮気のすすめ』新潮社 1960

『すれすれ探訪』東都書房 1960

『不作法紳士』集英社 1962、のち集英社文庫

『わたくし論』白凰社 1962

『紳士放浪記』集英社 1963、のち集英社文庫

『変った種族研究』講談社 1965、のち角川文庫

『私の文学放浪』講談社 1965、のち角川文庫、講談社文庫、講談社文芸文庫、同ワイド版

『痴語のすすめ』実業之日本社 1965(ホリデー新書)

『軽薄派の発想』芳賀書店 1966

『快楽の秘薬 神経疲労回復の書』青春出版社プレイブックス 1966、のち光文社文庫

『なんのせいか』随想集、大光社 1968

『秘蔵の本、禁話のコレクション』河出ベストセラーズ 1968、のち光文社文庫

『私の恋愛論』大和書房 1970、のち角川文庫


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:141 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef