現存する本殿・拝殿は、室町時代の明徳元年(1390年)、後光厳天皇の命を受けた室町幕府3代将軍の足利義満が造営を開始し、応永32年(1425年)に遷座した[5]。比翼入母屋造の本殿の手前に切妻造、平入りの拝殿が接続する。比翼入母屋造とは、入母屋造の屋根を前後に2つ並べた屋根形式で、「吉備津造」ともいう。
本殿の大きさは、出雲大社本殿、八坂神社本殿に匹敵するもので、随所に仏教建築の影響がみられる。地面より一段高く、漆喰塗の土壇(亀腹)の上に建ち、平面は桁行正面五間、背面七間、梁間八間で、屋根は檜皮葺とする。内部は中央に閉鎖的な内々陣とその手前の内陣があり、その周囲を一段低い中陣とし、中陣の手前はさらに一段低い朱の壇(あけのだん)とし、これらの周囲にさらに低い外陣が一周する。このように、外側から内側へ向けて徐々に床高を高くする特異な構造である。壁面上半には神社には珍しい連子窓をめぐらす。挿肘木、皿斗、虹梁の形状など、神社本殿に大仏様(だいぶつよう)を応用した唯一の例とされる。
拝殿は本殿と同時に造営され、桁行(側面)三間、梁間(正面)一間妻入りで、正面は切妻造、背面は本殿に接続。正面と側面には裳階(もこし)を設ける。屋根は本殿と同じく檜皮葺だが、裳階は本瓦葺きとする。これら本殿・拝殿は、合わせて1棟として国宝に指定されている[6][7]。
その他の社殿
御釜殿江戸時代、慶長11年(1606年)の鉱山師・安原知種による再建。単層入母屋造の平入で、本瓦葺。南北に伸びた長方形で、北二間に釜を置く。金曜日を除く毎日、特殊神事の「鳴釜神事」が行われる。国の重要文化財に指定されている[8]。
回廊戦国時代、天正年間(1573年 - 1591年)の造営とされる。総延長398m。岡山県指定文化財に指定されている[9]。
北随神門室町時代、天文11年(1542年)の再建。単層入母屋造檜皮葺。神社正面からの参道途中に建てられている。国の重要文化財に指定されている[10]。
南随神門南北朝時代、延文2年(1357年)の再建。吉備津神社では最古。単層入母屋造本瓦葺。本宮社への回廊途中に建てられている。国の重要文化財に指定されている[11]。
御釜殿(国の重要文化財)
回廊
北随神門(国の重要文化財)
参道と二の鳥居
一の鳥居
摂末社本宮社
古くは5つの社殿と72の末社があったとされる。5つの社殿(本社正宮・本宮社・新宮社・内宮社・岩山宮)を「吉備津五所大明神」と総称した[12]。2023年(令和5年)現在、新宮社と内宮社は本宮社に合祀されている。
本宮社 - 五所大明神の1社。祭神:孝霊天皇(第7代。大吉備津彦命の父)。
新宮社 - 五所大明神の1社。祭神:吉備武彦命(若日子建吉備津日子命の子)。本宮社に合祀。明治末までは南方の東山に鎮座。
内宮社 - 五所大明神の1社。祭神:百田弓矢比売命(大吉備津彦命の妃)。本宮社に合祀。元は吉備の中山の南部山上に鎮座。
三社宮 - 次の3社を総称。
春日宮
大神宮
八幡宮
岩山宮 - 五所大明神の1社。祭神:建日方別命(吉備国の地主神)。
滝祭神社
えびす社
祖霊社
一童社
宇賀神社 - 神池の島に鎮座。
三社宮(左から春日宮、大神宮、八幡宮)
岩山宮
えびす社
祖霊社
一童社
宇賀神社
主な祭事年間祭事一覧
毎月
月旦祭 (1日)
月次祭 (13日)
1月
歳旦祭 (1月1日)
2月
節分の日祭 (2月3日)
建国記念の日の祭 (2月11日)
5月
春季大祭 (5月第2日曜)
木堂祭 (5月15日)
6月
大祓式 (6月30日)
7月
夏祭り (7月31日)
10月
秋季大祭 (10月第2日曜)
12月
大祓式・除夜祭 (12月31日)
文化財
国宝
本殿及び拝殿(附 棟札[明和6年]、棟札[弘化2年])(建造物)室町時代中期、応永32年(1425年)の造営。本殿・拝殿合わせて1棟として指定。1902年(明治35年)4月17日に当時の古社寺保存法に基づき特別保護建造物に指定、1952年(昭和27年)3月29日に文化財保護法に基づき国宝に指定[7]。
重要文化財(国指定)
南随神門(建造物)室町時代前期、延文2年(1357年)の造営。1911年(明治44年)4月17日指定[11]。
北随神門(建造物)室町時代後期、天文12年(1543年)の造営。1913年(大正2年)4月14日指定[10]。
御釜殿(建造物)江戸時代、慶長17年(1612年)の造営。1980年(昭和55年)1月26日指定[8]。
木造獅子狛犬 1対(彫刻)鎌倉時代後期から南北朝にかけての作。本殿内々陣の東西に安置される。2002年(平成14年)6月26日指定[13]。