合計特殊出生率
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その後、死亡率の減少による人口置換水準の低下により1967年(昭和42年)から1973年(昭和48年)まで人口置換水準を上回っていたが、それ以降はまた下回るようになった[14]日本の人口ピラミッド(2019年10月時点)

団塊の世代が出産適齢期から完全に抜けた1989年(昭和64年・平成元年)には1966年(昭和41年)の丙午の数値1.58をも下回る1.57であることが明らかになり、社会的関心が高まったため1.57ショックと呼ばれ、少子化問題が深刻化した[14]。その後も徐々に数値は減少していき、2005年(平成17年)には1.26にまで減少した。

しかし、2006年(平成18年)以降はやや上昇方向へ転じ[15]2015年(平成27年)の合計特殊出生率は1994年(平成6年)以来の最高値となる1.45であった[16]

2007年(平成19年)以降は、合計特殊出生率の上昇にもかかわらず、出生数は減少傾向にあり、2016年(平成28年)からは100万人を下回り2018年の出生数は91.8万人であった[17][18]。これは、出産が可能な女性の総人口が減少していることによるものである[19]

2019年(令和元年)には、出生数が86万5234人で初の90万人割れとなった。また、合計特殊出生率も4年連続で低下して1.36となった。2020年版の少子化社会対策白書では、現状を「86万ショック」と呼ぶべき状況であると危機感が表現された[20]
EU圏内世界の大陸別のTFR推移。欧州は下位グループである。

欧州連合(EU)の合計特殊出生率は、2020年の時点で1.50である。域内においては、フランス北欧諸国、英国(2020年離脱)などが比較的高く、ドイツオーストリアポーランド南欧諸国などが比較的低い傾向がある。EUの合計特殊出生率は1990年代以降、1.4?1.6程度で推移しており、同じ高所得国グループである米国と比較すると低い。さらに非移民系ヨーロッパ人に限れば1.3?1.4程度と、日本とほぼ同じ数値である。
白人夫婦・世俗主義夫婦の低出生率問題

フランスの合計特殊出生率は「婚姻多様化政策などフランス政府の出産支援政策」によって回復したと言われているが、実際には移民同士の夫婦や海外領土出身者の出生率が高いことに理由がある。フランスは21世紀以降、先進国の中では高出生率ではあるものの、両者がフランス国籍の白人夫婦の合計特殊出生率は1.6?1.7であり、日本よりも0.3ほど高い程度に過ぎない。

1995年-2000年にかけてフランス国籍夫婦の子、移民夫婦の子の両方が増加していた。しかし、2000年以降はフランス国籍夫婦の子の数は横ばいで、フランス国籍と移民による子が増加し、比率も2000年には8.6%だったのが、2010年には13.3%まで伸びて国内の出生の一割を超えた。フランスにおける出生数の増加は「フランス国籍と移民の間の子」「移民夫婦の子」の増加によるものである。フランス国籍と移民の間の子の内訳で、移民出身国はヨーロッパが15%、フランス語圏のアフリカが65%、トルコを中心にアジアからが15%程度である。フランス国籍と移民の間の子のうち、片親が仏以外の白人が多い欧州連合(EU)圏内の国籍なのは15%に過ぎず、フランス国籍の妻とEU外の夫の子供が44%、フランス国籍の夫とEU外の妻が41%となっている。更にこの数字は、出産時にフランス国籍の場合と移民である場合を分類する。フランス語圏のアフリカやトルコなどイスラム圏からフランス国籍取得後に同郷の男性や女性を呼びよせが含まれておらず、白人フランス人夫婦の出生率は減少に歯止めがかかっていない。「フランス国籍と移民の間の子」が自由恋愛によりも国籍取得前や先祖地縁血縁による結婚に由来する可能性が高いことが、実質国境がなく行き来が楽なEU圏内の夫婦の子供が15%しかいないことから示唆されている。

EU圏外の相手との結婚が多いという事実は、イギリス国内と同様に国籍取得したイスラム教徒は親が決めた配偶者候補を呼び寄せて結婚していることが多い。特に女性の結婚は親が決めることが多く、ムスリム男性であってもイギリス国内では白人との結婚はイスラム・コミュニティーからの追放を意味するため、国籍問わずイスラム教徒と結婚して沢山出産するためにイスラム・コミュニティーが拡大して昔からの現地人と軋轢が生じている。これはイギリスでEU離脱を支持する者が増える理由になった。

スウェーデンやドイツでも、非白人夫婦の出生した子供で占める割合が増加し、白人人口の割合は減少の一途を辿っている。イギリスの政治学者エリック・カウフマンはイスラム教徒でも世俗主義無神論の思想に近づくほど出生率が落ちていることを統計から示し、逆に原理主義者の人口によるヨーロッパでの増加とその後の圧倒は止められないと指摘している。日本が好景気であった1980年代後半に出生率が大きく低下していたように、フランスやイギリスでも同様に所得が増加しても産児数は増加しないことが判明している。

世俗夫婦の出生率減少の背景には、かつては職場の紹介やお見合いで誰もが結婚していた皆婚時代から都市部で既婚者が低かった江戸時代のように都市化で婚姻率自体が低下していることがある。これは景気の良かったバブル時代でも「結婚しているのが普通」との価値観が減退して婚姻率と共に出生率が下がっていたように、お見合い文化や知人からの異性紹介など復活させて婚姻率自体を高めたり、移民受け入れよりも「三人以上出産後でもきちんと育児している家庭」への税制優遇すべきとの主張の根拠になっている。カウフマンは移民希望者への世俗義務化、受け入れ国の言語習得しない者・母国民族主義者や宗教原理主義者・受け入れ国のルールを守らない者などは国外追放など厳格な制度にしないと軋轢が増すだけとしている。

内海夏子によるとイギリスやドイツ、スウェーデンなど北欧欧州各国でもイスラム教を中心に原理主義による名誉殺人や移民が持ち込む犯罪が発生しており、その多くの犠牲者は女性である。スウェーデンは出生率維持のために移民政策を、採用している。移民の文化的慣習を抑制や禁ずるような政策を実行しようとすれば、「人種差別だ」という批判の声があがるため、対策ができないでいる。逆にイラクからの移民である人権活動家サラ・モハメッドやクルド系ジャーナリストのディルシャ・テミルバグスタンなどは「名誉を口実にした暴力は移民文化に根ざすもの。解決の糸口をつかむには、その文化的背景に目を向けなければならない」として受け入れ国の文化やルールを守らない非世俗移民を受け入れる移民政策の問題を指摘している[21]
極低出生率

国別の極低出生率初記録年(TFR≦1.3)[注 2]国名初記録年
香港1989年
ドイツ1992年
イタリア スペイン1993年
 ブルガリア  ラトビア  チェコ
ギリシャ スロベニア マカオ1995年
ロシア1996年
 ウクライナ  ベラルーシ1997年
 エストニア1998年
 ハンガリー1999年
スロバキア2000年
 ルーマニア  リトアニア アルメニア2001年
韓国 ポーランド
 ボスニア・ヘルツェゴビナ2002年
台湾 日本 シンガポール2003年
 モルドバ2005年
ポルトガル2012年
 アンドラ2013年
 プエルトリコ2016年
 マルタ2017年
タイ2019年
中国  チリ2020年


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