等々、我々が少し考えてもわかるように、この大陸合理主義には多分に怪しさが孕まれているし、自然科学が発達した現代においては、経験主義・実証主義の方が信頼に足るということは自明だと言える。とりわけこういった問題は、形而上学分野において、深刻かつ顕著に現れる。実際当時も独断論が乱立し、収拾がつかない状態になっていた。そこでイマヌエル・カントは、大陸合理主義から「理性」に対する「信仰」を継承し、「理性」が実在することを前提としつつ、その性質の批判(吟味)から出発する一方、あらゆる認識は経験から始まることを認め、しかしながら「理性」の働き自体は感性界(物理世界・因果律)のみに留まらず、そこを超えた叡智界の自己完結的「道徳法則」を生み出すにまで及ぶ、といった具合に、合理主義と経験主義のある種の「折衷案」を考え、大陸合理主義的な「形式性」「自己完結性」、そして「理性への信頼・信仰」を、保全しようとした。そういった現実度外視の規範的・自己完結的な社会思想家・哲学者、あるいは神学者などを除けば、大陸合理主義の継承と言えるものは、元々それと相性がいい分野、すなわち「論理学」「数学」分野にしか事実上ない。とりわけ19世紀から20世紀にかけて、ジョージ・ブール、ゴットロープ・フレーゲ、バートランド・ラッセル、ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン、ダフィット・ヒルベルト等々の人々による成果として、「論理と数学の統合」(数理論理学、数学の論理主義)や、その「形式化」(形式主義)が進むと、もはや論理や数学は、現実の物理世界との一致性や、実用性、意味、直観などを一切度外視した、形式的な「公理と推論規則」のみから成り、ブツ切れのまま情報空間に漂う自己完結的な「系」「ゲーム」群としての容貌を整えていくことになり、ある面で大陸合理主義、ひいてはアリストテレスやユークリッドの「正統な後継者」としての様相を呈するようになっている。(とはいえ、その「ゲーム」の遂行者たる人間なりコンピュータなりが、「経験」や「実装」を通じて、そのルールを身に付けなくてはならない、そして、同じようにそれを身に付けたプレイヤー達との「共通前提」「共通プロトコル」を通じてのみ、「言語ゲーム」としてそれをやりとりできるようになるという点では、相も変わらず経験主義的批判の範疇内にいることに変わりは無い。)
主な論者
ルネ・デカルト
バールーフ・デ・スピノザ
ゴットフリート・ライプニッツ
ニコラ・ド・マルブランシュ
脚注[脚注の使い方]^ 後掲の坂井の記事を参照。
参考文献
サイモン・クリッチリー『 ⇒ヨーロッパ大陸の哲学』佐藤透訳、野家啓一解説、岩波書店〈1冊でわかる〉、2004年6月。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-00-026872-4。