司法試験に合格した者は、司法修習を行い(最高裁判所により司法修習生に採用されることが必要)、さらに司法修習の最後にある司法修習生考試(いわゆる二回試験)を通過することで法曹(裁判官(判事補)、検察官(検事)、弁護士)になることができる。
法務省では、実際の法務ではパソコンを使用する業務であり手書きは使われなくなった現代において、筆記量の多い試験が実務と乖離していることや受験者・採点者共に負担が大きいとして、2026年からCBT方式を導入を計画している[3]。先行して2025年から受験申し込みにおいてオンライン出願とキャッシュレス決済を導入するとしている[3]。 司法試験を受験するためには、法科大学院課程を修了するか(「在学中受験」を含む。[注釈 1])、司法試験予備試験に合格する必要がある。 法科大学院を修了した者は、その修了日後の5年度内に3回の範囲内で司法試験を受験することができた。 試験制度移行期間中は法科大学院を修了していなくても受験できる「旧司法試験」が併存していたが、現在は旧司法試験が廃止されたため、法科大学院を修了していない者は、予備試験に合格して司法試験の受験資格を得ることになる。この予備試験は、法科大学院の課程を修了した者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とする試験である。予備試験合格日後の5年度内に3回の範囲内で司法試験を受験することができた。受験資格が消滅した場合(俗に「三振」と呼ばれた[5])、法科大学院を再び修了するか、予備試験に合格すると再び受験することができる。 3回の受験制限規定においては、法科大学院修了前2年間の旧司法試験の受験についてもカウント対象とされた。 以上が2013年以前の規定であったが、2014年(平成26年)5月、改正司法試験法が成立し、法科大学院修了後5年以内あるいは予備試験合格後5年以内であれば、回数の制限なく受験できるようになった。すなわち、司法試験が実施されるのは実際には年一回なので、受験資格を得てから5年の内に最高5回の受験機会が認められるということである。 司法試験は、短答式による筆記試験(短答式試験)及び論文式による筆記試験(論文式試験)から構成される。旧司法試験とは異なり口述試験はない。 毎年、中日を含めて5日間にかけて行われる。1日目が論文式試験の選択科目及び公法系科目、2日目が論文式試験の民事系科目、3日目が中日(試験なし)、4日目が論文式試験の刑事系科目、5日目が短答式試験である。 短答式試験は、法曹となろうとする者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうかを判定するために行われる試験である。2011(平成23)年度以降は、予備試験の実施に伴い、5月下旬の試験の最終日に行われ、2022年(令和4年)まで5月中旬に実施されてきたが、2023年(令和5年)から7月中旬に実施されることとなった[6][7][8][注釈 1]。 旧司法試験とは異なり、絶対的評価(各科目とも満点の40%以上が必要で、総合で満点の約65.7%以上が必要(2008年))により短答式試験の合否が決定される。 司法試験の受験者は全員論文式試験を受験できるが、短答式試験に不合格の者については論文式試験の答案は採点されない。 マークシートを用いて行われ、試験中の参照物は認められない。平成27年より下記のように変更される。 なお、平成26年までは、現在よりも科目数が多く、以下のような出題形式であった。 論文式試験は、法曹となろうとする者に必要な専門的学識並びに法的な分析、構成及び論述の能力を有するかどうかを判定するために行われる試験である。日程は、7月中旬の3日間[7]。 以上の問題数及び点数で、文章で解答する形式で行われる。 選択科目は、 の8科目から1科目を選択する[注釈 3]。 法律上の論点を含む比較的長めの事例(何ページかにわたる資料が付いている場合もある。)が与えられ、それに対する法的判断を問われるものが中心である。 参照物として、「司法試験用法文」とよばれる最小限の条文のみが記載された六法が試験中貸与される。この六法は、不正防止のために書き込み行為が禁止され、試験期間中、受験生の間で交換されて使用される。また、受験生は、論文式試験最終日に使った六法を、論文式試験終了後、持ち帰ることができる。 論文式試験においても最低必要点が設定されており、1科目でも満点の25%に満たない場合には不合格となる。 筆記量はA4紙で最大64枚、文字数は4万字に達する[3]。 短答式試験の合格者の中から論文式試験のみで不合格となった者を除外した上で、短答式試験の成績と論文式試験の成績を総合評価して合格者を決定する。 2009年(平成21年)から実施短答式試験と論文式試験の比重は1:8(2006年(平成18年)から2008年(平成20年)は1:4)とし、判定に当たっては論文式の点を調整し1.75倍したものに短答式の素点の2分の1を加算して判定する。 2015年(平成27年)より下記のように変更される。 短答式試験の得点と論文式試験の得点を合算した総合点をもって総合評価を行うことについては変更は加えない。 合算の際の配点については,短答式試験と論文式試験の比重を1:8とし,総合点は以下の算式により計算する[9]。 算式 = 短答式試験の得点 + ( 論文式試験の得点 × 1400/800) 合格発表は、2022年時点で9月第1火曜日に行われていた[6]が、2023年以降は11月第1または第2水曜日に実施されている[7][8])。合格者は、司法修習生に採用された後、まず、1か月程度の導入研修(実務修習前集合修習)が行われ、その後、8か月間の分野別実務修習が行われる[10]。この間は、民事裁判修習、刑事裁判修習、検察修習、弁護修習にあてられる。次の2か月間は、選択型実務修習として、司法修習生各人の希望を踏まえ、総合的な法曹実務を修習することとなる。その後、実務修習の体験を補完して2か月間、最高裁判所付属の司法研修所(埼玉県和光市)で集合研修を受ける(修習生によっては選択修習と集合修習の順序が逆になる)。そして、裁判所法67条1項の国家試験(司法修習生考試)を受け、これに合格すれば法曹となる資格を得る。 司法試験(新司法試験)の結果年度受験者[注 1]合格者合格率[注 2]修習期[注 3]
司法試験の受験資格
司法試験の内容
短答式試験
憲法 20問ないし25問程度とし,50点満点とする。
民法 30問ないし38問程度とし,75点満点とする。
刑法 20問ないし25問程度とし,50点満点とする。
※ 問題数については,現状の短答式試験における憲法,民法及び刑法に関する分野の出題数程度とすることを基本とするが,各問の配点次第で増減し得ることを考慮し,一定の幅を設けることとする。
短答式試験については,科目ごとに試験時間を設定し,憲法は50分,民法は75分,刑法は50分とする。
科目 合計350点
公法系科目(憲法及び行政法)1時間30分 100点 40問程度
民事系科目(民法、商法[注釈 2]及び民事訴訟法)2時間30分 150点 75問程度
刑事系科目(刑法及び刑事訴訟法)1時間30分 100点 40問ないし50問程度
論文式試験
公法系科目 1問2時間 問題数2問 問題1問につき100点配点の計200点満点
民事系科目 1問2時間 問題数3問 問題1問につき100点配点の計300点満点
刑事系科目 1問2時間 問題数2問 問題1問につき100点配点の計200点満点
選択科目 問題数2問3時間 計100点満点
倒産法
租税法
経済法
知的財産法
労働法
環境法
国際関係法(公法系)(国際法(国際公法))
国際関係法(私法系)(国際私法、国際取引法
合格判定
短答式試験と論文式試験の総合評価
合格発表とその後
試験結果
平成18年(2006年)度2,0911,00948.25%新60期
平成19年(2007年)度4,6071,85140.18%新61期
平成20年(2008年)度6,2612,06532.98%新62期
平成21年(2009年)度7,3922,04327.64%新63期
平成22年(2010年)度8,1632,07425.41%新64期[注 4]
平成23年(2011年)度[注 5]8,7652,06323.54%新65期[注 6]
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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