日本には、平均して、毎年11個前後の台風が接近し、そのうち3個くらいが日本本土に上陸する[29]。2004年には10個の台風が上陸し、上陸数の記録を更新した(2004年の台風集中上陸参照)。その一方で1984年、1986年、2000年、2008年、2020年のように台風が全く上陸しなかった年もある。
台風が日本本土に上陸するのは多くが7月から9月であり、年間平均上陸数は8月が最も多く、9月がこれに次ぐ。8月は、太平洋高気圧が日本付近を覆い、台風が接近しにくい状況ではあるが、台風発生数も最も多く、また高気圧の勢力には強弱の周期があるため、弱まって退いた時に台風が日本に接近・上陸することが多い。無論、西に進んでフィリピン・台湾・中国に上陸したり朝鮮半島方面に進んだりするものも少なくない。6月や10月にも数年に1度程度上陸することがある。最も早い例では1956年4月25日に台風3号が鹿児島県に上陸したことがあり[30]、最も遅いものとしては、1990年11月30日に台風28号が紀伊半島に上陸した例がある[30]。 フィリピンでは毎年6月から12月にかけてに台風が襲来するリスクが高くなる[31]。フィリピンでは年平均で約20個の台風が領域内で発生するか領海内に進んできており、うち6?9個の台風が上陸している[31]。フィリピンでは2004年から2014年にかけての11年間に88の台風の影響を受け、合計死者数18,015人、合計負傷者43,840人、合計経済損害額13,700百万USドルの被害が発生した[31]。
フィリピン
台風の観測と進路予測
台風の観測NOAAの観測機から撮影されたハリケーン・カトリーナの中心部
日本の気象庁は緯度では赤道から北緯60度、経度では東経100度から180度までの範囲にある台風の位置決定と予報を担当する[3]。
現在、台風の観測では気象衛星ひまわりが重要な役割を果たしており、雲画像の連続的な解析により台風の中心や風速などの観測がなされる。日本付近に接近あるいは上陸した台風については気象レーダーやアメダスも利用される。
2017年からは名古屋大学や琉球大学などの研究グループが航空機からドロップゾンデを投下、観測ドローンなどで直接観測を実施している。同研究グループは2017年10月21日、日本人研究者として初めて台風の中心付近を飛行機で直接観測することに成功した[32][33]。得られたデータを衛星やレーダーからのデータと合わせることで予報精度の向上を目指している[34]。 台風の進路予報表示では、平均風速が15m/s以上の強風域を黄色の円、同じく25m/s以上の暴風域を赤色の円で表す。12、24、48、72、96および120時間後の到達予想範囲は点線の予報円で記す。台風の進路が予報円の中に入る確率はおおよそ70%である。また、台風の中心が予報円の中を通った場合、暴風域に入る恐れがある範囲を赤い線で囲む。これを暴風警戒域という。 台風の進路予報表示は1953年(昭和28年)6月から1982年(昭和57年)5月まで扇形方式、1986年(昭和61年)5月まで予報円方式が用いられ、1986年(昭和61年)6月以降は現行の予報円・暴風警戒域方式が用いられている。また、予報期間は2002年(平成14年)6月から[注 5]2009年(平成21年)3月は72時間先まで、2009年(平成21年)4月から120時間先まで発表されるようになっている[35]。さらに、2020年(令和2年)9月9日からは、24時間以内に台風に発達する見込みの熱帯低気圧についても120時間先までの予報が出されている[36]。 台風が上陸あるいは接近すると、暴風(強風)による人工物や樹木の倒壊、高潮・高波や大雨による水害(洪水や浸水のほか、土砂崩れ・地すべりなどの被害が発生する。
台風の進路予報表示
台風の影響
台風による被害伊勢湾台風による愛知県半田市における被害の様子2013年の台風30号通過後のタクロバン市街(フィリピン)
雨
渦性降雨 - 台風の中心付近では激しい雨となる。
地形性降雨 - 台風により山地に向かって気流を生じるような地形では大雨となりやすい。
前線の発達 - 台風の接近により時期によっては秋雨前線や梅雨前線を刺激して大雨をもたらし、これによる被害が発生することも多い(例:平成24年台風第4号)。なお、台風の中心付近は暖かい空気で覆われた構造であり、台風そのものが前線を伴うことはない[3]。しかし、冷たい空気の影響で台風の中心に前線が達した場合、台風は温帯低気圧に変化する[3]。