台風
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台風の中心付近は、風向きが乱れているために暴風が互いに打ち消し合う[注 3]。台風の中心付近の下降気流となっている風や雲がほとんどない区域を台風の目と呼び、勢力が大きい台風ほど明瞭に表れるが、勢力が衰えると判然としなくなることがある。

発達した台風では背の高い積乱雲が中心部を取り巻いておりアイウォールと呼ばれている[16]。構造としては、台風の目の周囲付近は中心に向かって周囲から吹き込んだ風が強い上昇気流をつくっており積乱雲が壁のように取り囲んでいる(内側降雨帯)。壁の高さは地上1000mから上空1万mに達する。そして、その外周には外側降雨帯が取り囲んでいる。また、台風本体から数百キロ程度離れた場所に先駆降雨帯が形成されることがあり、さらに、この位置に前線が停滞していると前線の活動が活発になり大雨となる。

なお、台風は一般的にその中心よりも進行方向に対して右側(南東側)のほうが風雨が強くなる。これは、台風をめがけて吹き込む風と台風本体を押し流す気流の向きが同じであるために、より強く風が吹き荒れるためである。気象学上ではこの台風の進行方向右側半分を危険半円と呼ぶ。また、台風の左側半分は吹き込む風と気流の向きが逆になるために相対的に風は弱く可航半円と呼ぶ。しかし、可航半円という概念はかつて帆船が台風の中心から遠ざかる針路をとるとき台風の進行方向左側に入っていれば右舷船尾に追い風を受けながら避航できたこと(逆に、帆船が台風の進行方向右側に入っていると右舷前側に向かい風を受けながら中心に引き込まれないよう保針しなければならなくなる)の名残であり、あくまでも右側半分と比較して風雨が弱いだけであり、可航半円の範囲といえども風雨は強いため警戒を要する。
台風の階級

台風の勢力を分かりやすく表現する目的などから、台風は「強さ」と「大きさ」によって階級が定められ分類されている[17][18]

強さによる分類は、国際的にはWMOが規定する分類法が使用されているが、それに準じた多少差異のある分類法も熱帯低気圧の等級のようにいくつか使用されていて、同じ台風でも気象機関によって異なるレベルに分類される場合がある。具体的には、米軍の合同台風警報センター (JTWC) では1分間平均の最大風速、日本の気象庁では10分間平均の最大風速によって分類する。例えば同じ台風の同時刻の観測において、米軍の合同台風警報センターが台風の強度に達したと判断しても、日本では強い台風の強度に達せず並の強さと判断する場合も生じる(1分間平均風速は10分間平均風速よりも1.2 - 1.3倍ほど大きく出る傾向にある)。また、最大風速で強さを分類しているが過去には中心気圧が用いられており、その名残りから、日本で発表される台風情報には中心気圧も網羅される。

なお、日本でもマスメディアなどにおいて用いられる「スーパー台風」の呼称については、気象庁における明確な定義は無いが[19]、米国の合同台風警報センターでは最大強度階級130 knot(約67m/s・240 km/h)以上の台風のことを指して「スーパー台風」と呼んでいるほか[20][21]、中華人民共和国(香港マカオを含む)などでは風速100 ノット (185 km/h) 以上の台風を「スーパー台風」としている。

最大風速 (m/s)最大風速 (knot)国際分類日本の分類
(旧)(新)
<17.2≦33Tropical Depression /トロピカル・デプレッション (TD)弱い熱帯低気圧熱帯低気圧
17.2 - 24.534 - 47Tropical Storm /トロピカル・ストーム (TS)台風弱い台風(特になし)
24.6 - 32.648 - 63Severe Tropical Storm / シビア・トロピカル・ストーム (STS)並の強さ
32.7 - 43.764 - 84Typhoon / タイフーン (TまたはTY)強い強い
43.7 - 54.085 - 104非常に強い非常に強い
>54.0≧105猛烈な猛烈な

JTWCによる分類階級最大風速 (1分間平均)
スーパー台風130 knot (240 km/h) 以上
台風63 - 129 knot (118 - 239 km/h)
熱帯性暴風雨34 - 62 knot (63 - 117 km/h)
熱帯低気圧22 - 33 knot (41 - 62 km/h)

フィリピン大気地球物理天文局 (PAGASA) による分類階級風速
スーパー台風221 km/h 以上
台風118 - 220 km/h
激しい熱帯性暴風雨89 - 117 km/h
熱帯性暴風雨61 - 88 km/h
熱帯低気圧30 - 60 km/h

香港天文台マカオ地球物理気象局による分類階級風速
スーパー台風100 knot (185 km/h) 以上
強い台風81 - 99 knot (150 - 184 km/h)
台風64 - 80 knot (118 - 149 km/h)
激しい熱帯性暴風雨48 - 63 knot (88 - 117 km/h)
熱帯性暴風雨34 - 47 knot (63 - 87 km/h)
熱帯低気圧22 - 33 knot (41 - 62 km/h)

国家気象センター(中国語版)による分類階級風速
スーパー台風51.4 m/s (185 km/h) 以上
強い台風41.7 - 51.3 m/s (150 - 184 km/h)
台風32.8 - 41.6 m/s (118 - 149 km/h)
激しい熱帯性暴風雨24.5 - 32.7 m/s (88 - 117 km/h)
熱帯性暴風雨17.5 - 24.4 m/s (63 - 87 km/h)
熱帯低気圧17.4 m/s (62 km/h) 以下

また日本の気象庁では、大きさによる分類も行っている[22]。風速15m/s以上の強風域の大きさによって分類する。15m/s以上の半径が非対称の場合は、その平均値をとる。なお、以前は1,000ミリバール(現在使用されている単位系ではヘクトパスカルに相当)等圧線の半径で判断していた。

大きさの階級風速15m/s以上の半径
(旧)(新)
超大型の台風≧ 800km
大型の台風500 - 800km
中型 (並みの大きさ) の台風(特になし)300 - 500km
小型の (小さい) 台風200 - 300km
ごく小さい台風< 200 km

これらを組み合わせて、かつては「大型で並の強さの台風」というような言い方をしていた。しかし、組み合わせによっては「ごく小さく弱い台風」となる場合もある。1999年(平成11年)8月14日玄倉川水難事故を契機に、このような表現では、危険性を過小評価した人が被害に遭うおそれがあるという防災の観点から、気象庁は2000年(平成12年)6月1日から、「弱い」や「並の」といった表現をやめ、上記表の(新)の欄のように表現を改めた。したがって、「小型で『中型で・ごく小さく』弱い『並の強さの』台風」と呼ばれていたものは、単に「台風」、「大型で並の強さの台風」は「大型の台風」と表現されるようになった。
台風の発生から消滅1980年から2005年までの北西太平洋上での熱帯低気圧の経路。

ほとんどの台風は北半球におけるからにかけて発生する。最盛期のコースを例にとると、発生当初は貿易風の影響で西寄りに北上しつつ、太平洋高気圧の縁に沿って移動し、転向した後は偏西風の影響で東寄りに北上し、ジェット気流の強い地域に入ると速度を速めて東進し、海水温や気温の低下に起因する中心部上昇気流勢力の低下、海上に比べ起伏が激しくまた昼夜の温度差が大きい陸への上陸によって勢力を弱めていく。ただこのような教科書的なコースを辿るものはそれほど多くなく、太平洋高気圧の影響により西進し続けたり、停滞したりと、複雑な経路をとるものもしばしば現れる。日本列島やフィリピン諸島、台湾、中国華南華中沿海部、朝鮮半島などに大きな被害を与える。コースによってはベトナムマレーシアマリアナ諸島ミクロネシアなどを通ることもある。


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