台湾人
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この訓令で中華民国国籍を回復した男性とその子孫が本省人となり、この訓令によらず中華民国国籍を所有しており、その後台湾に居住するようになった男性とその子孫を「外省人」と呼ぶようになった[9][10]日本統治下の「本島人」は中華民国統治下の「本省人」となった[9]。この外省人は、国共内戦の結果「中華民国」中央政府とともに一種の政治難民として台湾に渡り、結果的にほとんどが台湾に定住した人々である[5]

ちなみに1949年当時の総人口は約740万人であった[5]

光復」後まもない1947年に戦後の経済混乱や日本資産接収の不正や失敗などを背景として、国民党政権と台湾住民との激しい衝突事件すなわち二・二八事件が発生した[11]。この事件で?介石によって中国大陸から秩序回復に派遣された軍隊によって、1万8000人から2万8000人が殺されたとされる[11]。この事件により、台湾の人口の少なからぬ部分が国民党政権による上からの国民統合政策に対して疎外感を持ってしまった[11]。さらには、政治的にも1949年以降自由が厳しく制限される権威主義的政治体制の下で、中央の政治権力は外省人エリートに独占されるなど、本省人と外省人との間の権力分配の不平等が固定化されていた[11]

1986年秋には一党独裁を通してきた国民党政権が野党民進党の結成を余儀なくされたことから、台湾政治の民主化が始まる[12]。1949年以降敷かれたままになっていた長期戒厳令が解除され、国共内戦期に中国大陸で選ばれた非改選の議員が大多数を占めていた国会が正常化し、1996年には総統の直接選挙が実施され、2000年には遂に総統選挙の結果により国民党から民進党への政権交代が実現した[12]。こうした民主化は、本省人の側から見れば、国民党独裁下で顧みられなかった土着言語や土着文化への回帰すなわちエスニック・リバイバルといえる[12]

台湾最大の群族集団である福?人の話す福?語が「台湾語」と呼ばれるようになり、さらに選挙などでも盛んに使用されるようになり、国会でも使用されるなど急速に地位を高めている[12]

1980年代中ごろから先住民族の復権運動が行われ、「台湾原住民族」という自称が憲法修正に際して採用されたり、個人名に関しても、それまで法的には中国式名前しか認められなかったが、伝統的な方式によるものでも戸籍登録ができるようになった[12]。そうなると客家人も危機感をもって客家語の復権などの文化運動を展開することになった[13]。このように近年では、台湾人各群族の要求が多元主義的な文化政策ないし国民統合政策として次第に定着しつつある社会を迎えている[13]
近年の調査にみる台湾人の民族帰属意識

大陸委員会による、自らを台湾人、中国人、台湾人かつ中国人だと考える台湾人の割合[14]調査台湾人中国人台湾人かつ中国人
大陸委員会(2000年)42.5%13.6%38.5%

海峡交流基金会による、自らを台湾人、中国人、台湾人かつ中国人だと考える台湾人の割合[15]調査台湾人中国人台湾人かつ中国人
海峡交流基金会(2007年)約63%約14%約18%

『天下雑誌(中国語版)』による、自らを台湾人、中国人、台湾人かつ中国人だと考える台湾人の割合[16]調査台湾人中国人台湾人かつ中国人
『天下雑誌(中国語版)』(20歳から29歳の若年層、2020年)82.4%12.4%

聯合報』による、自らを台湾人、中国人、台湾人かつ中国人だと考える台湾人の割合[17]調査台湾人中国人台湾人かつ中国人台湾人とは中国人のこと意見なし
聯合報』(2016年)73%11%10%1%6%
聯合報』(20歳から29歳の若年層、2016年)85%

TVBSによる、自らを台湾人、中国人、台湾人かつ中国人だと考える台湾人の割合[18]調査台湾人中国人
TVBS(「台湾人」「中国人」の二者択一の場合、2013年)78%13%
調査台湾人中国人台湾人かつ中国人
TVBS(「台湾人」「中国人」「台湾人かつ中国人」の選択の場合、2013年)55%3%38%

台湾民意基金会による、自らを台湾人、中国人、台湾人かつ中国人だと考える台湾人の割合[19]調査台湾人中国人台湾人かつ中国人無回答
台湾民意基金会(2020年)83.2%5.3%6.7%4.8%

台湾制憲基金会(中国語版)による、自らを台湾人、中国人、台湾人かつ中国人だと考える台湾人の割合[20]調査台湾人中国人台湾人かつ中国人
台湾制憲基金会(中国語版)(2021年)67.9%1.8%27.8%
台湾制憲基金会(中国語版)(「台湾人」「中国人」の二者択一の場合、2021年)89.9%4.6%

国立政治大学による、自らを台湾人、中国人、台湾人かつ中国人だと考える台湾人の割合[21]調査台湾人中国人台湾人かつ中国人
国立政治大学(1992年)17.6%25.5%46.4%
国立政治大学(1996年)24.1%17.6%49.3%
国立政治大学(2000年)36.9%12.5%44.1%
国立政治大学(2008年)48.4%4%43.1%
国立政治大学(2016年)59.3%3%33.6%
国立政治大学(2020年)67%[22]2.4%27.5%
国立政治大学(2021年)63.3%[20]2.7%[20]31.4%[20]

中華民国総統であった李登輝は、台湾人のルーツをたどれば中国大陸からの移民が多いとしつつも、「私がはっきりさせておきたいのは、『台湾は中国の一部』とする中国の論法は成り立たないということだ。四百年の歴史のなかで、台湾は六つの異なる政府によって統治された。もし台湾が清国によって統治されていた時代があることを理由に『中国(中華人民共和国)の一部』とされるならば、かつて台湾を領有したオランダスペイン日本にもそういう言い方が許されることになる。いかに中国の論法が暴論であるかがわかるだろう。もっといおう。たしかに台湾には中国からの移民者が多いが、アメリカ国民の多くも最初のころはイギリスから渡ってきた。しかし今日、『アメリカはイギリスの一部』などと言い出す人はいない。台湾と中国の関係もこれと同じである」と述べている[23]。また李登輝は、日本統治時代に台湾人が学んで純粋培養されたのは、「勇気」「誠実」「勤勉」「奉公」「自己犠牲」「責任感」「遵法」「清潔」といった「日本精神」であり、国共内戦後に中国大陸から来た中国国民党たちは、自分たちが持ち合わせていない価値観だったので、これらの「日本精神」を台湾人の持ち合わせている気質だと定義したと述べている[24]

周婉窈(中国語版)(国立台湾大学)は、「中国と日本との対立、日本と韓国、そして中国と台湾、また中国と韓国との間にも問題があります。中国は、『反日でない』(侮蔑的な言い方は『親日』)台湾人を敵視していますが、このような民族的な感情というのは東アジアの国々が近代国家に転換してから生まれたものです。(中略)近代国家型のナショナリズムというのは人類の歴史の新参者であります。それは私たちの過去に対する認識をいつも覆い隠したり、ゆがめたりしています。この点は特に中国が目立っております。中国のナショナリズムは、歴史ではない主張の上につくられたことが多いということです。例えば、中国は台湾は古くから中国の領土だと宣言しています。チベットも、新疆もそうです。


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