可逆
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ただし文献によって用語の混乱があり、可逆過程と準静的過程を同義に使う文献[3]もある。

熱力学第二法則によれば、任意のサイクルでクラウジウス積分 ∮ d Q T {\displaystyle \oint {dQ \over T}} は負の値となるが、可逆過程のみで構成されたサイクル(可逆サイクル)では 0 となる。これより、状態 A から状態 B へ変化する過程でのエントロピーの変化は、 S B − S A ≥ ∫ A B d Q T {\displaystyle S_{B}-S_{A}\geq \int _{A}^{B}{dQ \over T}}

となる(等号は可逆過程に対応)。
力学的な意味

時間を t {\displaystyle t} とする。 t → − t {\displaystyle t\to -t} という変換時間反転操作)に対し、元の方程式が形を変えない、あるいはその方程式が表す運動が実際に存在する時に、その方程式は可逆であると言われる。たとえば、ニュートン方程式はその変換に対し d 2 x → d t 2 = F → {\displaystyle {\frac {d^{2}{\vec {x}}}{dt^{2}}}={\vec {F}}} → d 2 x → d ( − t ) 2 = d − d t d x → − d t = d 2 x → d t 2 = F → {\displaystyle {\frac {d^{2}{\vec {x}}}{d(-t)^{2}}}={\frac {d}{-dt}}{\frac {d{\vec {x}}}{-dt}}={\frac {d^{2}{\vec {x}}}{dt^{2}}}={\vec {F}}}

であり方程式は形を変えないため、可逆であるとされる。このことはたとえばこの運動をビデオカメラで撮影し、それを逆回しにした場合の運動(逆運動)が存在すること、として解釈される。

ここで力 F → {\displaystyle {\vec {F}}} はこの変換に対して不変であるとした。たとえば、単純に F → = − ∇ U {\displaystyle {\vec {F}}=-\nabla U} であるようなポテンシャル U {\displaystyle U} が存在する、つまり保存系であればニュートン方程式は形を保つ。つまり可逆な方程式と見なされる。

ラグランジュ方程式についてはラグランジアン L {\displaystyle L} が時間反転に対し不変であれば、 q ˙ → − q ˙ {\displaystyle {\dot {q}}\to -{\dot {q}}} より、方程式は形を変えない。

時間に依存したシュレーディンガー方程式は、時間に関して1階の微分方程式であるので不可逆であるとも思えるが、ハミルトニアン H ^ {\displaystyle {\hat {H}}} さえ時間反転に対して不変であれば、 t → − t {\displaystyle t\to -t} とした方程式の解は元の式の解の複素共役に過ぎず、物理的にはそれほど違いはない。その意味で、シュレーディンガー方程式もまた可逆な方程式である。

それらに対して、ランジュバン方程式は速度に依存した抵抗力(ポテンシャルで表現できない、非保存力)を含む。 t → − t {\displaystyle t\to -t} に対し、速度 v → → − v → {\displaystyle {\vec {v}}\to -{\vec {v}}} であるから、その方程式の解は元の解と全く異なってしまう。このように、ランジュバン方程式は可逆ではない。このことはわれわれの経験(静水中で減衰して止まった物体はまた勝手に動き出すことはない)と一致する。
参考文献^ Sears, F.W. and Salinger, G.L. (1986), Thermodynamics, Kinetic Theory, and Statistical Thermodynamics, 3rd edition (Addison-Wesley.)
^ Giancoli, D.C. (2000), Physics for Scientists and Engineers (with Modern Physics), 3rd edition (Prentice-Hall.)
^ Lavenda, B.H. (1978), Thermodynamics of Irreversible Processes, Halsted

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