古鯨類
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バシロサウルス :約4,000万 - 3,400万年前に生息、体長約20mとされる。バシロサウルス科に属し、エジプトで発見された。クジラ目とされる前は魚竜目とされバシロサウルスと名付けられたが、分類の変更とともにゼウグロドンという名へと変更が試みられたことがある。四肢は前足がヒレになり、後足はほとんど退化し、3本の指が残るだけである。尾が非常に長いが、骨格からはヒレ状の部分があったかは分からない。ただし、学術的推論から復元想像図では、様々なヒレが尾に描かれている。頭部には鼻腔は2つあり、テレスコーピング現象は表れていない。また頭部は頑丈で細長く上下の顎には肉食に適した歯が多数あり、この事などから魚竜と分類された一つの要因とされる。

絶滅

しかし、これら古鯨類は始新世と漸新世を隔てる絶滅期を乗り越えることかなわず、おそらくはバシロサウルス科中のドルドン亜科を唯一の例外として他はことごとく姿を消している。バシロサウルス科も次の世で見ることはできず、絶滅を逃れ得なかったはずであるが、正鯨類という子孫を残したのちに姿を消した。古鯨類の絶滅は、高度に進化した正鯨類の出現による淘汰圧もあるが、始新世末に起きた気候変動による海水温の低下や海退(始新世終末事件)、それに伴う生物量の減衰が大きく影響したものと見られ、あるいは、その両方が関係しているともいわれている。

古鯨類が絶滅した漸新世の生態系では、浅海の中型海棲捕食動物のニッチ(生態的地位)が“空席”となったが、クマ科の祖先に近い水陸両棲傾向の強い陸棲食肉類であるヘミキオン科(en)の一部がこれを埋めるべく進化を始めて分岐し、続く中新世までには本格的適応を遂げて鰭脚類アザラシアシカの仲間)という動物群の地位を確固たるものとしている。彼等は特に原始的な古鯨類が得ていた水陸両棲の中型捕食動物としての地位を占めることになった。また、のちに外洋で進化したイルカ(小型のクジラ類)が分布を広げるなかで浅海や淡水域にまで進出したことにより、古鯨類の絶滅によってクジラ類の手からこぼれ落ちるかたちとなった「浅海の中型海棲捕食動物のニッチ」は、大幅に取り戻された。

古鯨類の鼻孔(噴気孔)はパキケトゥス科では頭部の前方に位置していたものが、次第に後方へ移動し、最末期の種の一つであるドルドン[5]では部の中間の位置に来ている。しかし、水面での呼吸を容易にする頭頂部への鼻孔の完全な移動は、正鯨類の登場以降に起こっている。さらなる海棲への適応進化である。
分類系統
分類パキケトゥスPakicetus inachus
(パキケトゥス科)アンブロケトゥス Ambulocetus natans (アンブロケトゥス科)ロドケトゥスRodhocetus kasrani
(プロトケトゥス科 )バシロサウルス Basilosaurus cetoides
(バシロサウルス科バシロサウルス亜科)ドルドン Dorudon atrox
(バシロサウルス科ドルドン亜科)

古鯨類とその子孫(ハクジラ類とヒゲクジラ類)の分類。

鯨偶蹄目 Cetartiodactyla

鯨類(階級なし。解体・整理されるべきクレード) Cetacea

古鯨類(解体・整理されるべきクレード) Archaeoceti

パキケトゥス科 Pakicetidae

パキケトゥス Pakicetus

イクチオレステス Ichthyolestes

ナラケトゥス Nalacetus


アンブロケトゥス科 Ambulocetidae

ヒマラヤケトゥス Himalayacetus

ガンダカシア Gandakasia

アンブロケトゥス Ambulocetus


レミングトノケトゥス科 Remingtonocetidae

アットクキケトゥス(アトッキケタス) Attockicetus

ダラニステス Dalanistes

クッチケトゥス Kutchicetus

レミングトノケトゥス Remingtonocetus

アンドレウシフィウス(アンドリューシフィウス) Andrewsiphius


プロトケトゥス科 Protocetidae

アルティオケトゥス Artiocetus

タクラケトゥス Takracetus

ナッチトキア Natchitochia

パッポケトゥス Pappocetus

クィスラケトゥス Quisracetus

エオケトゥス Eocetus

ガヴィアケトゥス Gaviacetus

ロドケトゥス Rodhocetus

バビアケトゥス Babiacetus

インドケトゥス亜科 Indocetinae

インドケトゥス Indocetus

プロトケトゥス Protocetus

ゲオルギアケトゥス(ジョージアケタス) Georgiacetus



バシロサウルス科 Basilosauridae

バシロサウルス亜科 Basilosaurinae

プロゼウグロドン Prozeuglodon

バシロテウス Basilosaurus

バシロサウルス Basiloterus


ドルドン亜科 Dorudontinae

ドルドン Dorudon

アンカレケトゥス Ancalecetus

ジゴリザ(ジゴリーザ) Zygorhiza

ポントゲネウス Pontogeneus

サガケトゥス Saghacetus

クリソケトゥス Chrysocetus




ヒゲクジラ類 Mysticeti

ハクジラ類 Odontoceti

スクアロドン上科(未分類上科) Squalodontoidea

スクアロドン Squalodon





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