古英語
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他のゲルマン諸語と古ノルド語はまだ相互理解可能であった。古英語は均一の言語ではなく、方言があり、時期によっても異なる。ゲルマン人の一派であるアングル人サクソン人の言葉が、グレートブリテン島移住に伴い、イングランド(アングル人の地)へ持ち込まれたことに始まる。のちイングランドに来襲したデーン人の言語であるデーン語(古ノルド語の一種)などの要素も、入り込んだ。

古英語に対して、古英語以降15世紀後半頃までの英語を中英語、17世紀頃までを初期近代英語それ以降を現代英語と言う。古英語の使われた時期を確定することは困難である。おそらく4世紀半ばにはグレートブリテン島での古英語の使用は始まっていた。古英語と中英語の境として、ウィリアム1世によってノルマン・フランス語の語彙が大幅に流入した1066年ノルマン・コンクエストを採用することが多い。しかしこのことはこの時期以降、古英語が使われなくなったことを意味しない。
方言

ノーサンブリア(Northumbrian)、マーシア(Mercian)、ケント(Kentish)、ウェセックス(West Saxon)の4方言に大別される。これらは当時の王国の境界に対応するが、このうちノーサンブリアとケントは9世紀ヴァイキングの侵略により衰えた。マーシアも侵略を受けたが、一部は防衛に成功し、ウェセックス王国に編入された。ノーサンブリアとマーシアはアングル人の王国、ケントはジュート人の王国、ウェセックスはサクソン人の王国とされる。

ウェセックスでは878年デーンロー地方以外のアングロ・サクソン人のイングランドを統一したアルフレッド大王のもと、聖書の翻訳や過去の伝承や史実の蒐集が盛んに行われた。アルフレッド大王自らもラテン語を解し、翻訳に従事したと思われる。ウェセックス方言は9世紀末には古英語の標準語となり、また今日残る古英語資料の大半を占めている。このため現代の研究にとって、ウェセックス方言の占める割合は大きい。
発音

母音には、短母音・長母音・二重母音があり、長短を区別する。現在出版する書籍では、長母音字の上に長音記号(マクロン)を書いて、短母音と区別する。古英語においては y は母音字である。

子音は、現代英語の子音に加えて、d/t(文字の名称はエズ(eth)とソーン(thorn)。表す音は[d]と[θ])および ?(ウィン, wynn) [w]が用いられる。また、現在の出版では c, gと ?, ?を区別する場合がある。
アルファベットと発音

アルファベット発音
a[?] 舌が後ろよりのア、当時の表記ではaとoがときおり混同した。
?[??] 上記 a の長音
a[a]
?[a?] 上記 a の長音
b[b]
c[t?] あるいは [k] と発音する。現代の表記では [t?] の音を表すときに上にドットをつけて ? とすることもある。
cg[d?]
d[d]
d/t[θ] 有声音の間に挟まれたときは [d] と発音する。二者は別の字だが区別なく使われる。
e[e]
?[e?] 上記 e の長音
ea[a?] 後母音の前の c, g, sc が[t?], [j], [?]と発音されるのを表す e と混同しないように注意。
?a[a??] 上記 ea の長音
eo[eo] ea に同じ
?o[e?o] 上記 eo の長音
f[f] 有声音の間に挟まれたときは [v] と発音する。
g[g] 異音に[?], [j], [d?] がある。[j] と [d?] の音を表すときに上にドットをつけて ? とすることがある。またアイルランドに由来する ? の字体(yogh、音は同じ)が使われることがある。
h[h] [c, x]の異音がある。
i[i]
?[i?] 上記 i の長音
ie[ie]
?e[i?e] 上記 ie の長音
k[k] あまり使われない
l[l]
m[m]
n[n] 後ろに g が来て Template:-ng
となったときは [?g] と発音する。
o[o]
?[o?] 上記 o の長音
oe[o] 合字の ? も使われる
?e[o?] 同上
p[p]
q[k] 直後に来る u と一組で [kw] の音を表すがあまり使われない。 古英語では c? あるいは cw と書く。
r[r] 詳しい音価は確定していないが現代の英語と同じ [?] か、ふるえ音の [r] とされる。
s[s] 有声音に挟まれたときは [z] と発音する。
sc[?] 異音に [sk] がある。
t[t]
u[u]
?[u?] 上記 u の長音
?[w] 現代の表記では代わりに w を用いる。
x[ks] [xs ~ cs] と発音されたという説もある
y[y]
?[y?] 上記 y の長音
z[ts] まれに ts と音が並んだときに使われる(bezt と betst、ともに [betst] と発音する。意味は best)。

二重子音の dd/tt、ff、ss は有声音に挟まれても有声音にならない。
音韻
子音

両唇音唇歯音歯音歯茎音後部歯茎音硬口蓋音軟口蓋音声門音
閉鎖音[p  b]  [t  d] [k  g] 
破擦音[t?  (d?)]


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