古典派経済学
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そしてアダム・スミスは、国富は労働者、地主、資本家の間で、賃金、地代、利潤という形でそれぞれに分配されると考え、「価値というものが賃金、地代、利潤の3つに分解できる」という考え方に至った[17]
見えざる手

1776年アダム・スミスが国富論において「見えざる手[18]という概念を考案した。個人が自由な市場において、個々の利益を最大化するように利己的に経済活動を行えば、まるで見えざる手がバランスを取るかのように、最終的には全体として最適な資源の配分が達成されるというものである。この「見えざる手」は、現在では「価格メカニズム」と呼ばれる。
自然価格

物の市場価格は常に変動するものであるが、自然な状態にあるとき、見えざる手により、適切な価格に至ると考え、この価格を「自然価格」とした。また、価値は賃金、地代、利潤の3つに分解できるという考えから、自然価格も賃金の自然率、地代の自然率、利潤の自然率の3つによって構成されると考える。
社会背景

古典派経済学の誕生は、18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命が時代的な背景もある。産業革命が、社会に広範な影響を与えはじめ、従来の重商主義から、この時代に合った新しい経済学が求められた。例えば、大工場を所有する産業資本家が労働者を雇い、利潤の目的を目指して労働者が商品を生産する資本主義が産声を上げた時代でもあった。そのため古典派経済学では、価値を賃金、地代、利潤の3つに分解したのも、経済主体を「労働者階級」「地主階級」「資本階級」の3つの階級に分けて分析を行ったからである[7]。また労働価値説や自由放任の考えの背景として、アダム・スミスに先立って起こった重農主義の影響も受けている。

一方古典経済学は、その後問題となった10年周期の恐慌やフランスの大規模な失業労働者に対する有効な処方箋を作成することができなかった。
古典派経済学の現代的展開

リカードの理論は、新古典派の創始者の一人ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズによっても厳しく批判された[19]。これに対し、アルフレッド・マーシャルはリカード・ミルの体系に対しより融和的な立場を維持したが、古典派経済学はマーシャル経済学によって乗り越えられたと一般に評価されている。

これに対し、20世紀に入り、ピエロ・スラッファが出た。スラッファは、マーシャル経済学の基礎に疑問を出すとともに[20]、『リカード全集』[21]の編集を進めてリカード再評価の機運を作り、『商品による商品の生産』においてリカードを20世紀に復活させる契機をもたらした。

スラッファの『商品による商品の生産』(原著1960年)は、限界原理に基づく新古典派の経済学とは異なる価格理論が可能であることを示し、後にスラッフィアンとか、ネオ・リカーディアンと呼ばれる潮流を作りだした。日本では現代古典派と自称する場合もある。スラツフィアンの代表的存在は、イアン・スティードマンである。スティードマンは、マルクス経済学の価値論を批判するとともに[22]、HOS型貿易理論の批判を展開した[23]

スティードマン以外にも、スラッファに示唆を受けた一群の経済学者がおり、ポスト・ケインジアンの3大潮流の一つを形成している。ルイジ・パシネッティ、ビエランジェロ・ガレニャーニ、ハインツ・クルツ(Heiz Kurz)、スタンレー・メトカーフ(Stanley Metcalfe)、ネリ・サルバドーリ(Neri Salvadori)などがいる。

日本では、菱山泉が早くからスラッファを紹介した。菱山にとって、スラッファはむしろフランソワ・ケネーの経済学を発展させるものであった[24]塩沢由典は、スラッファの価格理論に、オクスフォード経済調査(1930年代後半)のフルコスト原理を接続することにより、古典派価値論を21世紀の理論として展開することを提唱している[25]。塩沢は、またリカード貿易理論を発展させることにより、新しい国際価値論が構成できたと主張している[26]。国際価値論の不在は、古典派価値論の弱点のひとつであった。塩沢の達成は古典派価値論が新古典派価値論に対抗しうる理論として再生したことを意味する[27]
主要な理論家

先駆者たち

ウィリアム・ペティ - 「政治算術」を確立し国力の基礎として生産活動を重視。

ジョン・ロック - 労働価値説の創始者。

リチャード・カンティロン - 重農主義理論に立ち古典派の先駆となった。

バーナード・マンデヴィル

デイヴィッド・ヒューム

ジェームズ・ステュアート - 『経済学原理』を著した「最後の重商主義者」。

ジェームズ・ミル


古典派経済学者

アダム・スミス

トマス・ロバート・マルサス

デヴィッド・リカード

ジャン=バティスト・セイ

ジェレミ・ベンサム

ジョン・ステュアート・ミル


脚注^ a b 喜多見 & 水田 2012, p. 37.


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