古代ギリシアの音楽は彼らの神話と堅く結びついている。アムピーオーンはヘルメースから音楽を学び、そして黄金のリラを奏で、その音の力で岩を動かしてテーバイを建てたと伝えられている。音楽の師であり、リラの奏者であったオルペウスはその魔法のような音楽で野生動物たちをなだめることができたという。オルペウス教の創造神話では、レアーが真鍮(しんちゅう)の太鼓を叩いて、男を女神の神託に服従させたと言われ[4]、また次のような神話もある「(アポローンにリラを見せながら)ヘルメースが新しく発明した亀の甲羅でできたリラをこれまた彼が開発したピックで弾きながら、アポローンの気高さを称える魅力的な音楽を歌うと、彼はすぐさま許された」[5]。またアポローンが音楽でもってマルシュアースやパーンに打ち勝つという話もある[6]。
このような多くの言及が示すところ、どのように古代ギリシア民族が生まれ、またいかに彼らの運命が永らえ、それがどのように神によって見守れているかというギリシア人の世界観の受容にとって音楽は不可欠な部分であった。また音楽がピューティア大祭やディオニューシア祭や古代オリンピック、宗教的祭儀、余暇のたのしみ、演劇の開幕時に歌われるディオニューソスを称える歌(ディテュランボス)など古代ギリシア社会にあまねく及んでいたことは疑いない[7]。しかしペロポネソス戦争の終わろうとしていた前404年、アテネが凋落していくなかで実際に演奏されるギリシアの音楽は変化していったかもしれない。[要出典]
古代ギリシアの楽器後期ローマ時代の女性がキタラを弾いている様子
今日、楽器は音を生み出す方法によって大きく3つ、弦楽器、吹奏楽器、打楽器に分けることができる。[8](ここでは簡単のため電子楽器は除外する、詳細は楽器参照)。上の分類を踏まえ古代ギリシアで使われた楽器を以下に挙げる。
リラ (楽器)(リュラ): 弦をつまびいたり、弾いたりして演奏した。亀の甲羅のフレームで作られツィターのように手で持って弾いた。一般的に7本かそれ以上の弦を張り、他の楽器や奏者の朗唱に合わせて弾いた。
キタラ:これも弦をつまびいて音を出す。リラよりは複雑なつくりである。箱状の胴体と上部に付いている横棒との間に弦が張られている。縦にして、ピックでもって弾いた。横棒についたV字型の木のつまみを調整することで音を変えることができた。
アウロス: アウロスはダブル・リードでありオーボエに似た音を出していたと考えられる。しばしば壺などに2本をひとりの人物が演奏している描写が残っているが、1本でも用いられた。
パンパイプ
パンパイプ:指で押さえて吹く笛である。段階的に長さの異なる複数の笛から成り、切ることで音を調節した。音を出すときは笛の上から息を吹きつけた。
ヒュドラウリス
ヒュドラウリス(Hydraulis):鍵盤楽器であり、パイプオルガンの先駆けともみなせる。名前が示すように、一定の気圧を保つために水が使用される。英語ではwater organと呼ばれている。ウィトルウィウス[9]とアレクサンドリアのヘロン[10]がこの楽器について書いている。1885年にカルタゴの遺跡から保存状態のいい陶器製の模型が発見された。まず水を圧縮するために空気が送り込まれると筐体の中で水位が上がり、内部の空気を圧搾することで安定した空気を上部のパイプに供給することができた。[11]また、ハンガリー、ブダペスト近郊のローマ遺跡アクインクムからは実物が出土している(3世紀のものと推定)。これは明らかにパイプオルガンの原型だが、送風機構は出土していないので、厳密にはヒュドラウリスとはいえない。ただし、出土した銘板にはHYDRAMの語が記されている)。
以上の楽器すべてが古代ローマに伝わっている。 以下は上に挙げられていないが現在まで名が伝わっているギリシアの音楽家たちである。
その他の古代ギリシアの音楽家たち
アナクレオン:紀元前570年 - 紀元前488年
サッポー:紀元前7世紀末-紀元前6世紀初
シモーニデース:紀元前556年頃 - 紀元前468年
バッキュリデース:紀元前520年頃 - 450年
ヒッパソス:紀元前500 - ?
ピンダロス:紀元前520年頃 - 紀元前440年頃
脚注[脚注の使い方]^ Henderson, p. 327.
^ Ulrich, p. 16.
^ Plato, Laws.(邦題: プラトン「ミノス」)
^ Graves, p. 30.
^ Graves, p. 64.