受容体
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リガンドと結合が存在しなくても生物学的反応を起こすことができる受容体は、「構成的活性」(constitutive activity)を示すと言われている[12]。受容体の構成的活性は、逆アゴニストによって阻害されることがある。抗肥満薬のリモナバントとタラナバント(英語版)は、カンナビノイドCB1受容体(英語版)の逆アゴニストであり、有意な体重減少をもたらしたにもかかわらず、カンナビノイド受容体の構成的活性の阻害に関連すると考えられるうつ病や不安症が好発するために、両方とも中止された。

GABAA受容体は構成的活性を持ち、アゴニストの非存在下で、ある程度の基底電流を伝導する。このため、β-カルボリンは逆アゴニストとして作用し、電流を基底レベル以下に減らすことができる。

思春期早発症(黄体形成ホルモン受容体の変異による)や甲状腺機能亢進症(甲状腺刺激ホルモン受容体の変異による)など、遺伝性疾患の背景には、構成的活性の増加をもたらす受容体の変異がある。
薬物-受容体相互作用の理論
占拠

薬理学における受容体理論(英語版)の初期形成では、薬物の効果は占拠された受容体の数に正比例するとされていた[13]。そのうえ、薬物の効果は薬物-受容体複合体が解離すると消失するというものであった。

Ariens (英語版)  と Stephenson は、受容体に結合したリガンドの作用を説明するために、「親和性」と「効力」という用語を導入した[14][15]

親和性(affinity): 薬物が受容体と結合して薬物-受容体複合体を形成する能力。

効力 (英語版) (efficacy): 薬物-受容体複合体が反応を開始する能力。固有活性(intrinsic activity)とも。

速度

一般に受け入れられた占拠理論(occupation theory)とは対照的に、速度理論(rate theory)では、受容体の活性化は単位時間あたりにおける薬物と受容体との遭遇の総数に正比例すると提案する。薬理活性は、占拠された受容体の数ではなく、解離と会合の速度に正比例する[16]

アゴニスト: 速い結合と速い解離を持つ薬物。

部分アゴニスト: 中間的会合と中間的解離を持つ薬物。

アンタゴニスト: 結合が速く解離が遅い薬物。

誘導適合詳細は「誘導適合」を参照

薬物が受容体に近づくと、受容体はその結合部位のコンホメーションを変化させて、薬物-受容体複合体を形成する。
スペア受容体

ある種の受容体系(たとえば、平滑筋の神経筋接合部におけるアセチルコリン)では、アゴニストは、非常に低いレベルの受容体占拠率(1%未満)で最大の反応を引き出すことができる。このように、その系には予備の受容体、または受容体予備軍が存在する。このような配置により、神経伝達物質の生産と放出の経済性が生み出される[11]
受容体調節

細胞は、異なる分子に対する感受性を変化させるために、特定のホルモン神経伝達物質に対する受容体の数を増やす(アップレギュレーション)または減らす(ダウンレギュレーション)ことができる。これは局所的に作用するフィードバック機構である。

アゴニストの結合が、受容体を活性化しないような、受容体のコンホメーション変化。これはイオンチャネル受容体で見られる。

受容体エフェクター分子解放は、Gタンパク質共役受容体で見られる。

受容体の隔離(内在化)[17]。たとえば、ホルモン受容体の場合。

事例とリガンド

受容体のリガンドは、その受容体と同様に多様である。Gタンパク質共役受容体(GPCR、7TM)は特に広大なファミリーであり、少なくとも810個のメンバーが存在する。また、少なくとも10数種類の内因性リガンドに対するリガンド依存性イオンチャネル(LGIC)も存在し、さまざまなサブユニットによってさらに多くの受容体も構成可能である。リガンドと受容体の一般的な例としては、次のものが挙げられる[18]
イオンチャネルおよびGタンパク質共役受容体詳細は「リガンド依存性イオンチャネル」および「Gタンパク質共役受容体」を参照

イオンチャネル内蔵型(LGIC)および代謝型(具体的にはGPCR)の受容体の例を以下の表に示す。主な神経伝達物質はグルタミン酸およびGABAであり、その他の神経伝達物質は神経調節性(英語版)である。このリストは決して網羅的なものではない。

内因性リガンドリガンド依存性イオンチャネル (LGIC)Gタンパク質共役受容体 (GPCR)
受容体イオン電流(英語版)[nb 2]外因性リガンド受容体Gタンパク質外因性リガンド
グルタミン酸イオンチャネル型グルタミン酸受容体(英語版) (iGluR): NMDA, AMPA, カイニン酸受容体Na+, K+, Ca2+ [18]ケタミングルタミン酸受容体: mGluRsGq or Gi/o-
GABAGABAA受容体

(GABAA-rho(英語版)を含む)Cl− > HCO−3 [18]ベンゾジアゼピンGABAB受容体(英語版)Gi/oバクロフェン
アセチルコリンニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR)Na+, K+, Ca2+[18]ニコチンムスカリン性アセチルコリン受容体 (mAChR)Gq or Giムスカリン
グリシングリシン受容体(英語版)(GlyR)Cl− > HCO−3 [18]ストリキニーネ---
セロトニン5-HT3受容体Na+, K+ [18]セレウリド5-HT1-2 or 4-7Gs, Gi/o or Gq-
ATPP2X受容体Ca2+, Na+, Mg2+ [18]BzATP[要出典]P2Y受容体Gs, Gi/o or Gq-
ドーパミンNo ion channels[要出典]--ドーパミン受容体Gs or Gi/o-

酵素結合型受容体詳細は「酵素結合型受容体(英語版)」を参照

酵素結合型受容体には、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)、骨形成タンパク質のようなセリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼ、心房性ナトリウム利尿因子受容体のようなグアニル酸シクラーゼがある。RTKのうち、20のクラスが特定されており、58種類のRTKがメンバーとなっている。次にいくつかの例を示す。

RTKクラス/

受容体ファミリーメンバー内因性リガンド外因性リガンド
I上皮成長因子受容体 (EGFR)上皮成長因子 (EGF)ゲフィチニブ
IIインスリン受容体インスリンケトクロミン(英語版)
IV血管内皮細胞増殖因子受容体 (VEGFR)血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)レンバチニブ


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