受刑者
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日本では公職選挙法第11条第1項第1号・第2号により、受刑者には選挙権と被選挙権がない[1]。この規定について受刑者から憲法44条に違反するとして、数件の訴訟が起こされている。

2013年9月27日大阪高等裁判所は「一律に制限するやむを得ない理由があるとはいえない」として、規定が憲法違反であるとの判断を示した[2][3][4]。原告の69歳の男性は2010年3月から11月まで滋賀刑務所で服役し、同年7月11日実施の参院選で投票ができなかったことについて訴訟を起こしていた。国への賠償請求は棄却された。

2013年12月9日には東京地方裁判所が「有罪判決で禁錮以上の刑を科せられた者への制裁の一つで、合理的な理由がある」として、上記の大阪高裁の判断と異なり合憲との判断を示した[5]。東京都内の弁護士が原告となり、同年7月21日実施の参院選の無効を要求していた。

2016年7月20日広島地方裁判所は「刑罰に伴う制裁として合理的」として合憲との判断を下した[6]。原告の男性受刑者は2007年から広島刑務所で服役しており、2014年12月14日実施の衆院選で投票ができなかったことについて訴訟を起こしていた。

なお、憲法96条に定める日本国憲法の改正のための国民投票は受刑者にも投票権がある。国民投票は公職選挙法ではなく国民投票法に則って実施され、国民投票法では受刑者を欠格事由として定めていないためである。これらは上記の大阪高裁の違憲判断の際に指摘されている。
作業報奨金

作業に従事している受刑者には作業報奨金が支給される。1時間あたり数銭 - 数円単位で計算される額の低さから、釈放後の更生資金にもなりえないという批判があるようだが[誰によって?]、作業報奨金は恩恵的性格を持つものであり、サラリーマンにおける賃金のような労働対価と異なる。反則行為をした受刑者に対する懲罰として、刑事施設の長は報奨金計算額の3分の1以内を削減することができる。

日弁連では、最低賃金を下回る作業報奨金しか与えられない刑務作業によって、受刑者の製造した製品が民間企業の利潤に供されているという実態があることが明らかになれば、刑務所における労働は日本が批准している「ILO第29号条約」第1条によって禁止されている「強制労働」に該当することとなる旨の意見表明を繰り返し、刑務作業の実施にあたっては、作業報奨金は最低賃金を下回らないよう計算するとともに、慰問やカウンセリング等の機会を増やすべきであると主張している[要出典]。
諸外国との比較
生活水準

世界的には、日本の刑務所における生活水準は高い方である。

ロシアでは未決囚も既決囚も一緒に、何十人もが一房に詰め込まれている状況がある。タイの刑務所では、強盗で服役している受刑者が看守に賄賂をつかって、昼間だけ塀の外でアルバイトをしていたという不祥事があった。

中南米諸国においては、未決も既決も罪の種類もかまわず詰め込まれた仮監房では、受刑者同士での傷害事件や同性愛の強要、少ない糧食をめぐっての殺し合いにまで発展することさえある。

なお日本では刑務所に入れば衣食住が保証され、医療も提供されるため、結果的に自立して生きる術のない障害者(知的障害者、精神障害者、認知症の老人など)の「セーフティーネット」となっている(累犯障害者)という指摘があるが、アメリカ合衆国などでも刑務所が社会的弱者の「福祉施設」化しているのではないかという問題が議論されている。
外部交通権

開放処遇の進み具合や外部交通権という点では、日本は先進国中では制限が多い。ドイツにおいては服役態度の優良な受刑者が、通勤刑務所のような形での処遇に浴しており、アメリカの刑務所では外部との電話連絡が許されているところもある。

日本では最も態度優良な、それも出所前の受刑者だけが、刑務所の庭などの清掃作業、あるいは刑務所付属の農場や伐採場での作業を行っている。

刑事施設の長は、開放的施設において処遇を受けていることその他の法務省令で定める事由に該当する場合において、その者の改善更生又は円滑な社会復帰に資すると認めるときその他相当と認める時は、電話その他政令で定める電気通信の方法による通信を行うことを許すことができる(刑事収容施設被収容者処遇法146条)。

面会時間を制限する場合には30分を下回ってはならないが、面会の申出状況、面会場所その他の事情に照らしてやむを得ないと認める時は、5分を下回らない範囲内で30分を下回る時間に制限することができる。面会できる者は、受刑者の親族、受刑者の身分上、法律上または業務上の重大な利害に係る用務の処理のため面会することが必要な者及び受刑者の更生保護に関係のある者、受刑者の釈放後にこれを雇用しようとする者その他の面会により受刑者の改善更生に資すると認められる者である。たとえば、受刑者本人の事情によっては友人・ジャーナリストとは面会することができ、刑事施設の長の指名する職員は原則として面会に立ち会わないので、外部交通権が保障されていない、事件関係の会話などが許されないということはない(刑事収容施設被収容者処遇法より抜粋)。
脚注[脚注の使い方]^ 選挙権と被選挙権 - 総務省
^ 平成25年9月27日判決言渡 平成25年(行コ)第45号 選挙権剥奪違法確認等請求控訴事件 (PDF) - 大阪高等裁判所
^受刑者の選挙権制限は「違憲」大阪高裁 公選法巡り初判断 - 日本経済新聞、2013年9月27日
^受刑者の選挙権 一律制限の見直し急げ - 京都新聞、2013年9月30日
^受刑者の選挙制限「合憲」、東京高裁 大阪高裁と異なる判決 - 日本経済新聞、2013年12月10日
^受刑者選挙権訴訟 広島地裁は認めず - 毎日新聞、2016年7月21日


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