取締役
[Wikipedia|▼Menu]
これは取締役が単なる株主の利益代表ではなく、社会的責任を帯びた存在であることを示している。しかし株主が取締役になることは差し支えなく、実際にも中小企業においては取締役のほとんどが株主である。取締役は取締役会の一員として業務意思決定を行うほか、割り当てられた業務の執行を行う。特に業務執行権を与えられた取締役を業務執行取締役といい、代表権を与えられた取締役を代表取締役という。これらは法定されたもので、後者については設置が義務づけられているが、業務担当取締役や執行役員といった制度を会社で独自に取り入れて権限を付与するという場合もある。
株主の権利の行使に関する利益供与の禁止株式会社が財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与をすることに関与した取締役は、当該株式会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う。ただし、当該利益の供与をした取締役を除いた者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、義務を免れる(120条4項)。
会社に対する義務取締役と会社との関係は委任であり、取締役が取締役会の構成員として、また代表取締役として職務を行うに際しては善管注意義務(330条により民法644条準用)及び忠実義務を負う(355条[4])。善管注意義務の内容は会社の規模や業界によって異なる。忠実義務の具体化として、競業避止義務(356条1項1号[5])、利益相反取引の制限(356条1項2号[6])が規定されている。株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を株主又は監査役に報告しなければならない(357条)。
会社に対する責任蛸配当(分配可能額(配当可能利益)がないにもかかわらず株主に利益配当をすること)や他の取締役に対する金銭の貸付、利益相反取引、および法令または定款に違反する行為によって会社に損害を生じさせた場合には会社に対して賠償する責任が生じる(462条、旧商法266条)。任務を怠ったときは、損害賠償責任を負う(423条)が総株主の同意があれば免除される(424条)。取締役又は執行役が競業の規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する(423条2項)。監査役設置会社又は委員会設置会社は、責任について、当該取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、法律より免除することができる額を限度として当該責任を負う取締役を除く取締役の過半数の同意によって免除することができる旨を定款で定めることができる(426条)。自己のためにした取引をした取締役の責任は無過失責任であり、任務を怠ったことが当該取締役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない(428条)。
第三者に対する責任会社の業務を執行する際に故意または重大なる過失(重過失)によって第三者に損害を与えた場合にもそれを賠償する責任が生じる(429条1項、旧商法266条ノ3第1項)。判例はこの責任を、第三者を保護するために認めたもので、一般不法責任よりも加重したものとしている(最判昭和44年11月26日民集23巻11号2150頁)。取締役には、他の取締役に対する監視義務が課せられている。この義務は、旧商法では、取締役会が業務執行の監督機関であり、取締役はその構成員であることから課せられていると考えられていた。しかし、会社法においては、原則として取締役会が設置されないことから、取締役の忠実義務など他の法的根拠が必要となっている。
株主による取締役の行為の差止め詳細は「株主の差止請求」を参照非公開会社の株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる(360条1項、2項)。公開会社で6箇月前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる(同条3項)。
区分と権限

取締役には区分とそれに紐づく権限が存在する。
取締役会無し

取締役会のない会社(取締役会非設置会社)が複数の取締役を有し代表取締役を選定する場合、次の区分と権限が設定される。

表. 区分と権限 (○: 有、×: 無、-: 問わず)代表権業務執行決定への参加業務執行権
代表取締役[7]--
取締役[注 2]×[8]--
社外取締役--×[9]

取締役会有り・指名委員会等無し

取締役会を設置する会社(取締役会設置会社)が指名委員会等を設置しない場合、次の区分と権限が設定される。

表. 区分と権限 (○: 有、×: 無、-: 問わず)代表権業務執行決定への参加業務執行権
代表取締役○-○[10]
取締役[注 2]×-×[11]
業務執行取締役--○[12]
社外取締役--×[9]

すなわち意思決定を取締役会あるいは委任された取締役がおこない、それに基づき業務を代表執行役および業務執行取締役が執行する。
指名委員会等有り

取締役会を設置する会社(取締役会設置会社)が指名委員会等を設置する場合、次の区分と権限が設定される。

表. 区分と権限 (○: 有、△: 限定的、×: 無、-: 問わず)代表権業務執行決定への参加業務執行権執行監督権
代表取締役(存在しない)
取締役×[13]-△[注 3][14]
社外取締役×[13][9][14]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:41 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef