取消
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同意権者とは、保佐人家庭裁判所による同意権付与の審判を受けた補助人など、制限行為能力者の保護監督者の中でも当然に代理権を有しない者のことを指す。

以上に挙げられていない者(保証人や抵当不動産の第三取得者など)は、取消権者ではない。例えば、保証人は被保証債務(主債務)を取り消せれば、付従性(附従性)により自己の債務も消滅させることができるが、取消権者ではないため保証人としての地位に基づいては取消権を行使できない。
制限行為能力者のした意思表示の場合
未成年者の場合
法定代理人の同意を得ずにした法律行為は、取り消すことができる(5条2項)。例外として、単に権利を得、又は義務を免れる行為は取り消すことができない(同条1項ただし書)。法定代理人が目的を定めて処分を許した財産、又は法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産(小遣いなど)の処分は取り消すことができない(同条3項)。一種又は数種の営業を許された未成年者の、その営業に関する行為は取り消すことができない(6条1項)。
成年被後見人の場合
原則として、法律行為全般を取り消すことができる(9条)。ただし、日用品の購入等、日常生活に関する行為は取り消すことができない(同条ただし書)。
被保佐人の場合
保佐人の同意又は家庭裁判所の許可を得ずにした、借財等の一定の重要な行為(13条1項各号に列挙されたもの)は取り消すことができる(13条4項)。ただし、日用品の購入等、日常生活に関する行為は取り消すことができない(同条1項ただし書)。
同意権付与の審判を受けた被補助人の場合
家庭裁判所の審判により補助人の同意を必要とされた行為を、補助人の同意又は家庭裁判所の許可を得ずにしたときは取り消すことができる(17条4項)。ただし、日用品の購入等、日常生活に関する行為は取り消すことができない(13条1項ただし書)。

以上は制限行為能力者の身分行為には適用がない。また、制限行為能力者が、相手方に対し、行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことはできない(21条)。
瑕疵ある意思表示の場合
錯誤
2017年の民法改正により錯誤の効果が無効から取消しに変更された[7](2020年4月施行)。
詐欺による意思表示
詐欺(故意に、違法な詐罔行為を行って本人を錯誤に陥らせること)によってした意思表示は取り消すことができる(96条1項)。相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる(96条2項)。詐欺による意思表示の取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗できない(96条3項)。
強迫による意思表示の場合
強迫(故意に、違法な強迫行為を行って本人を畏怖させること)によってした意思表示は取り消すことができる(96条1項)。なお、強迫による畏怖の程度が表意者の意思の自由を完全に喪失させるほどのものであった場合は、意思無能力により当然無効であって取消しの対象ではない(最高裁昭和33年7月1日判決の傍論)。
取消しの方法

取消しは、相手方のある単独行為である。そのため、取消権の行使は、取消権者から相手方に対する一方的意思表示によって行う(123条)。ただし、追認をすることができる時から5年間行使しないとき、行為の時から20年を経過したときは、取消権は時効によって消滅する(126条)。

また、取消権者は複数いる場合が多いが、その場合でも解除の場合とは異なり(544条1項、解除権の不可分性)、その意思表示が取消権者全員から、相手方全員に対してなされる必要はない。また、取り消しうべき行為によって相手方が取得した権利が第三者に移転したときでも、取り消しうべき法律行為を行なった最初の相手方に対して取消しの意思表示を行い、その後現在の権利者にその効果を主張するべきとされている。

なお、法律行為が可分であれば一部取消しが可能な場合もある(大判大12・6・7民集2巻383頁)[8]
取消しの効果
取消しの遡及効

取り消された行為は、初めから無効となる(遡及効。121条)。しかし、解釈上、法律関係の複雑化することを避けるため継続的契約については遡及効を否定すべきとされる(通説。620条・630条・652条・684条参照)。[9]。身分行為についても遡及効はない[10]
不当利得の返還

取消しの遡及効により、取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる(121条)。まだ履行されていない債務は初めから発生しなかったこととなり、既に履行された債務については不当利得の返還義務が生じる。

当該返還義務の範囲は2017年改正(2020年4月施行予定)で新設の121条の2で定められることとなった[11](取消しにより初めから無効になった場合を含め、無効・取消しの返還義務については121条の2の規定による[12])。

無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う(第1項)。

前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う(第2項)。

第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする(第3項)。制限行為能力者であることを理由とする取消しの場合には更に手厚い保護を与え、当該制度の実効性を高めるために、善悪を問わずに、返還義務の及ぶ範囲を703条に規定した範囲、つまり現存利益のみに限定している(121条の2第3項、旧121条但書)。判例によれば他人への債務の弁済や生活費に充てたときは現存利益は存在するが(大判昭7・10・26民集11巻1920頁)、賭博などで浪費されてしまった場合には現存利益は存在しないとする(最判昭50・6・27金判485号20頁)。なお、詐欺や強迫による意思表示の場合については、このような規定は設けられていない[13]。制限行為能力者が取り消す場合にも詐欺・強迫を理由とする場合には121条但書の適用はない(通説)[14]

なお、消費者契約法6条の2に特則がある[11]

通説によれば物権的請求権と不当利得返還請求権は競合して認められるとするが、給付利得の不当利得返還請求権が認められることになるとする説など見解は分かれ対立がある[15]。当事者間の返還義務は原則として同時履行の関係に立つが、詐欺者には同時履行の抗弁は認められないとされる[16]
追認
追認の意義

取り消し得る行為であっても、取消権者が追認(ついにん)すれば、行為は有効に確定し、以後取り消すことができない(122条)。


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