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取り付け騒ぎ(とりつけさわぎ、英語:bank run)、取付騒動(とりつけそうどう)とは、特定の金融機関や金融制度に対する信用不安などから、預金者が預金・貯金・掛け金等を取り戻そうとして(=取り付け)、急激に金融機関の店頭に殺到し、混乱をきたす現象のこと。 経営破綻するという噂や、不確実な情報、デマが引き金となることが多い。 取り付け騒ぎが起きると他の金融機関の預金者にも不安が強まり金融不安となることがあることから、金融システムの維持にあたる政府や報道機関は情報提供を通じて事態の沈静化につとめることになる。 取り付け騒ぎが起こった金融機関では、窓口での対応や多額の預金払戻しによって、業務が停滞する。加えて、いかなる金融機関でも保持する資産の流動性は低いため、全預金を払い戻すことのできる現金は保有しておらず、殺到する預金の解約に応じるのは困難である。そのため、預金高の減少で経営が立ちゆかなくなり、経営危機に陥ったり、最悪の場合、経営破綻に至る場合もある[1]。 銀行や信用金庫・信用組合など預金取扱金融機関が破綻した場合は、預金保険法の定めにより預金は保護される。しかし、保護額を超える預金についての支払い額減殺が行われることが想定される。金融危機を防ぐため政府が介入して預金保護を行うなど政治が関与することもある[2]。 日本では、預金保険と比べて保護制度が万全ではない生命保険会社・損害保険会社の貯蓄性保険商品(養老保険・積立型普通傷害保険・年金保険等)について、経営悪化の噂が流れると、解約が取り付け騒ぎのように殺到することで資産が目減りし、経営破綻の引き金となりうる状況が平成不況下で見られた。保険商品はもともと元本保証されていないものの、経営破綻しなければ(契約通りであれば)保険料をプールしている責任準備金の運用益(予定利率・配当金)で、一定の利回りが得られる設計となっている。 しかし経営破綻すると、解約返戻金(責任準備金)が削減され、将来受け取る満期保険金ないし死亡保険金が一律カットされることで、大幅な元本割れが発生するリスクが高いため、これを回避するために、解約が殺到する現象が起こる(銀行振込による解約者への送金手段があるため、必ずしも窓口に多額の現金を準備する必要が無い点が、銀行等預金取扱金融機関と異なる)。実際に1990年代以降に破綻したいずれの保険会社も、破綻時の既契約に対しては責任準備金の削減を行った上で受け皿の保険会社へ契約譲渡をしている。 また、金融商品ではないものの、ペーパー商法・マルチまがい商法・和牛オーナー制度で、それまで定期的に得ていた配当金の支払が滞ると解約が急増し、経営破綻の引き金になるパターンがある。 取り付け騒ぎの発生を予防し、また発生しても沈静化させるため、さまざまな方法が取られる。
概要
取り付け騒ぎの防止
金融規制によって銀行の貸しすぎを防ぎ、取り付け騒ぎの原因となる経営不安の発生を予防する。
預金保険制度により個々の預金者に一定額の預金を保障する。その場合預金者は取り付けの必要が無くなるため、他の人がそれを見て連鎖的に取り付けに参加して事態が悪化するようなことがなくなる。ただしこの場合、預金者が預金のリスクについて慎重に判断しようとはしなくなり、預金者のリスク回避行動を阻害する恐れがある(モラルハザードを参照)[2]。
取り付け騒ぎが発生した場合、一時的に預金払戻を停止する(預金封鎖)。
取り付け騒ぎが発生した場合、中央銀行が「最後の貸し手」となって短期資金を融資し、資金枯渇を防ぐ[2]。
取り付け騒ぎの例
日本の例
大阪金融恐慌
1901年、大阪の第七十九銀行と難波銀行が休業した。
北浜銀行
1914年4月18日、頭取の不祥事が原因で取り付け騒ぎが発生。同年8月20日には愛知県に飛び火して明治銀行、名古屋銀行、愛知銀行でも取り付け騒ぎが発生[3]。北浜銀行は事実上破綻したが、余波を受けた愛知県の3行は持ちこたえた。
第二銀行
1925年、横須賀市内の銀行が破綻する[4]中、第二銀行横須賀支店にも預金者が払い戻しに殺到。