反グローバリゼーション
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経済学者のジョセフ・E・スティグリッツは、グローバリゼーションの必要性は認めた上、反グローバリゼーションはむしろG8WTO合意などワシントン・コンセンサスに対する反対を示すものと見ている[7]

三橋貴明は一概に「自由」「保護」と区分できるわけではなく、ある国が置かれた環境も考慮すべきと述べている[8]
思想

経済学者の野口旭は「反グローバリズム派によるグローバリズム批判は、国内経済・地域経済の自律性を確保すべきという性質を持っている[9]」「世界中の根強い『反グローバリズム』の根底にあるのは、自国の経済が貿易という捉えどころの無いものによって変えられていく嫌悪感なのかもしれない[10]」「グローバル化それ自体への感情的な反発は、ある種の排外主義と言わざるを得ない[11]」と指摘している。

野口は「グローバル化の中で、比較劣位の産業が厳しい構造調整を強いられてきた。絶えざる構造調整のしわ寄せを受け続けてきた労働者・農業生産者がグローバリゼーションを制限することで苦痛から逃れたいと運動することは、当事者にとっては当然の行動である」と指摘している[12]

中野剛志リーマンショックによる世界同時不況でユーロバブルが崩壊すると、ギリシャデフォルト問題が生じたが、EUは財政的に統合されていないため、ドイツなどの財政上余裕がある国の判断でデフォルトの救済が決定した[13]。その際にドイツ国民がギリシャ救済に拒否感を示したことについて、グローバル化にナショナリズムや民主主義が抵抗している構図であったと述べている。また、ブリュッセルに集まるヨーロッパのエリートにはコスモポリタンの伝統があり、グローバル化を推進したが、民主主義主体である一般層にはその国の文化や伝統に密接に関っており、そう簡単に国境を越えられず、フランスの農家・ジョゼ・ボヴェの例を出し、民主主義の民主的な声というのはアンチグローバル化であるとしている[14]
反論

野口旭は「グローバリゼーションの波はいくつか残っている『閉じられた社会』にも、二十一世紀の早い段階に必ず及んでくる。マルクスはかつて、その過程を『資本の文明開化作用』と呼んだ。行うべきは、その作用を阻害するのではなく、むしろ推進することである」と指摘している[11]

経済学者の八代尚宏は「若者の雇用機会減少や賃金格差の拡大を改善するためには、政治的圧力のみならず、市場の活用を推進するべきである。世界的に貿易が拡大する中で、労働生産性・賃金の差の拡大が生じている。反グローバリズムを唱えても、世界の潮流から取り残されじり貧になるだけである」と指摘している[15]
脚注^ 中島厚志. “ ⇒第1章 反グローバリズムについて ―世界経済からの視点―”. 2020年9月21日閲覧。
^ 田中友義. “ ⇒反グローバリズム、反統合、高失業、難民・不法移民 EU 政治潮流の右傾化の要因を読み解く”. 季刊 国際貿易と投資 Autumn2002/No.49. 2020年9月21日閲覧。
^ 警察庁 2010年APECの成功に向けて ⇒反グローバリズムを掲げる過激な勢力の脅威 活動が列挙されている。活動の背景や動機は書かれていない。
^ 反グローバリズムを掲げる団体による過激な行動北海道洞爺湖サミット開催成功に向けて、警察庁、平成19年12月
^ 伊藤元重 『はじめての経済学〈上〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、27頁。
^伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論 TPP反対論に決定的に欠けている「マクロ」の視点ダイヤモンド・オンライン 2013年9月9日


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