抑うつの特徴と躁病の特徴が両方見られる状態を指す。行動は増えているのに気分はうっとうしいという場合が多いため、自殺の危険性が高い。DSM-IV診断基準では、混合状態が出現した場合、双極I型障害と診断される。近年、DSM-IVの混合性エピソードの診断基準を完全に満たさなくても、ある程度、躁病と抑うつが混在していれば混合状態と見なす立場もある。焦燥が強いうつ状態を抑うつ混合状態と呼ぶ場合がある。その場合は、双極II型障害でも混合状態が見られることになる。DSM-IV-TRによる混合状態の診断基準は、躁病エピソードの基準と抑うつエピソードの基準が1週間以上にわたり続き、社会活動や人間関係に著しい障害を生じることである[16]。 躁病と類似しているが、入院するほど重篤ではなく、精神病性の特徴(幻聴・妄想)もないなど、社会生活に大きな支障をきたさないことが特徴である。期間の面でも、躁病は7日以上とされているのに対し、軽躁病は4日間以上とされている。過去の軽躁病を的確に診断することは容易ではない。DSM-IV-TRによる 軽躁病の診断基準は、以下の症状がAを含む4つ以上みられる状態が4日間以上続くことである[16][17]。A. 持続的に高揚した、開放的な、またはいらだたしい気分が、少なくとも4日間続くはっきりとした期間があり、それは抑うつのない通常の気分とは明らかに異なっている。 本人にとって、この状態を自覚することは難しい。そのため、医師にそのことを伝えることができず、症状の把握が難しいといえる。また、周りから見ても、いつもより仕事ができる、意欲が高い、熱心に仕事をしているという風にしか見えず、異常な状態であると認識されることはまずない。患者のなかにはこのエピソードの時に仕事で成功することが多い。しかし、疲れを知らず、睡眠時間を十分にとらない為、気がつかないまま、精神的にも肉体的にも疲労し、やがて大きく落ち込むことになる。そして再び抑うつエピソードを迎える。そのとき、軽躁病の時の行為を後悔することが多い。それが原因で自殺するものもいる為、II型であっても安全であると言うことはないことに注意しなければならない。 生活記録をつけるなど、客観的に生活を把握することが大事である。さらにそれを医師と共有して、的確な指導を受けることが必要である。また、家族にも協力を仰いで軽躁病エピソードの把握や助言を得なければならない[19]。 躁病から病気が始まれば双極性障害と診断可能である。抑うつから始まった場合には、うつ病と診断されることになり、明確に躁病あるいは軽躁病が現れるまでは適切な治療は実施できないことになる。診断が難しい。肉親に双極性障害の人がいる場合や、発症年齢が若い(25歳未満)場合、幻聴・妄想などの精神病性の特徴を伴う場合、過眠・過食などの非定型症状を伴う場合などは、双極性障害の可能性が高まる。身体愁訴などの症状は少なく、精神運動制止が強いなどの特徴がある。自覚的にはうつ病であっても、親が双極性障害を持っている場合は、それを伝えることが望ましい。病前性格は社交的で気分が変わりやすい傾向(循環気質)が見られるとされ、うつ病に特徴的な執着性格やメランコリー親和型性格とは異なるとされてきた。しかし、前向き研究では確認されておらず[20]、最近ではこうした性格は、既に気分循環症を発症していたと考える方向にある。 正常な気分の変動では、悲しみや高揚はあるが著しい苦痛や機能障害はない[10]。特に35歳以上で初めて発症した場合には、身体疾患や抗うつ薬、薬物の影響の可能性が念頭に置かれる[10]。 躁病エピソードは素人でもわかるくらい分かりやすい[21]。軽躁病エピソードしかない場合には双極II型障害であり、また軽躁病の期間が短いとか治療薬や薬物の影響があるとか、長く抑うつを呈していた人が正常な気分であるときに高揚とか変な感じを訴えたりもするため鑑別が難しく、家族歴が参考となることもある[22]。
軽躁病エピソード
自尊心の肥大: 自分は何でもできるなどと気が大きくなる。
睡眠欲求の減少: 眠らなくてもいつも元気なまま過ごせる。
多弁: 一日中しゃべりまくったり、手当たり次第に色々な人に電話をかけまくる。
観念奔逸: 次から次へ、アイデア(思考)が浮かんでくる。具体的には、文章の途中で、次々と話が飛ぶことなども含まれる。
注意散漫: 気が散って一つのことに集中できず、落ち着きがなくなる。
活動の増加: 仕事などの活動が増加し、よく動く。これは破壊的な逸脱行動にも発展しうる。
快楽的活動に熱中: クレジットカードやお金を使いまくって買物をする、性的逸脱行動に出る。
うつ病との違い
他の障害の併存と鑑別
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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